費用対効果議論の中間報告:“アプレイザル(総合的評価)”について意見続く

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現在、厚労省で中医協費用対効果評価専門部会が行われているが、具体的には、費用対効果評価専門組織(仮称)を新設し、試行的導入するなどが行われている。その中で、特に、“アプレイザル”という言葉の概念・捉え方について懸念する意見が出されている。一般的には、総合的評価と捉えられている言葉だが、議論は始まったところであり、今後の課題と指摘された。「“アプレイザル”は総合的評価と理解されるようですが、総合的とは何を指して言うのか、不透明な点がある。今までの評価と何が違うのか、整理しないと混乱するのではないか」「費用対効果評価専門組織(仮称)を新設するようだが、構成員はどのような基準で選任すろか。これも重要なこと」などと指摘があったが、今回は、中間報告ということで、論議のやりとりは一部に止まった。ポイントを以下に整理して報告する。 ○個別の医薬品・医療機器についてアプレイザルを実施するため、費用対効果評価専門組織(仮称)を新設する。アプレイザルは、分析結果の妥当性を科学的な観点から検証することに加え、分析結果に基づき倫理的、社会的影響等に関する観点から総合的な評価を行うこと等を役割とする。○費用対効果評価専門組織(仮称)の構成員については、医療関係者だけでなく、保険者、患者関係者及び医療経済学者等が考えられるが、今後、さらに検討を進めていくこととする。○アプレイザルの結果、対象患者や使用方法をより詳細にするなど、さらに別の観点からの分析についても検討を行う必要があると判断された場合は、その理由とともに再度分析を実施する。○アプレイザルの際に、生産性損失等を含めた分析結果が必要とされた場合等には、費用の範囲を見直した分析を追加的に求めることとする。 なお、生産性損失については、以下のような意見があった。「生産性損失はその範囲の定め方の幅が広く、定め方により分析結果が大きく変わり得ることから、生産性損失によって全体の評価がゆがまないよう、生産性損失の範囲等をあらかじめガイドラインで明確化しておくことなどが考えられる」「生産性損失を減らすことが有用性の主たる部分である場合など、生産性損失を費用に含めた分析をあわせて実施することで、より適切な評価を行える場合がある」。 分析結果に基づき倫理的、社会的影響等に関する観点から総合的な評価を行うに当たって考慮すべき要素については、「イギリスやスウェーデン、オーストラリアといった諸外国における取組を参考にしながら、本邦における在り方についてさらに検討することとする」としている。 その試行的導入の在り方についても、「試行的導入に当たって考慮すべき事項」として、現行の医薬品・医療機器の保険収載の方法を踏まえながら、以下のような事項に留意して検討する必要があることを確認している。 1.データ提出には企業側の準備期間が必要であり、加えて、提出されたデータを公的な専門体制により再分析する期間及びアプレイザルを実施する期間も確保が必要である。特に、新規保険収載時においては、現行の保険収載の方法を踏まえると、時間的制約があること。2.保険収載された後、長期間を経た医薬品・医療機器について費用対効果評価を行う場合、例えば医療機器の種類によっては改善・改良のサイクルが早いという指摘もあり、既に臨床現場で主として使用されていない製品が対象になってしまう可能性が考えられること。 「試行的導入の在り方について」は、○収載後一定期間後(例えば、保険収載後1回目から数回目の改定時)においては、費用対効果の評価結果に基づく再算定を行うこととする。再算定の具体的な方法については、さらに検討を深めることとする。○新規収載時においては、薬事承認申請時に提出するデータ等に基づき、できるだけガイドラインに沿った分析を実施するなど、可能な範囲での取組を求めることとする。その際にどのような取組が可能か、さらに具体的に検討を深めることとする。○分析結果を解釈するに当たって、費用対効果が良い又は悪いと判断する目安(増分費用効果比に関する閾値)については、これまでの議論を踏まえ、本邦での運用方法を検討する必要性が確認されたことから、引き続き検討することとする。  以上のような主な中間報告を受けて、費用対効果評価専門部会においてさらに議論を進め、平成28年度における試行的導入に向けて、今後、年内を目途に議論を進めていくこととしている。
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