予防という言葉を知った瞬間

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私は卒業してから2年が経とうと言う歯科医師です。卒業してから、東京都小平市にある予防歯科を実践している河野歯科医院に勤務しています。 学生時代には、保存修復学、補綴学、口腔外科学など様々な分野の講義や実習を6年間にわたり学びました。今まで、歯科医院には通院した事しか無かった私 にとっては、もちろん初めて教わる事ばかりで色々な事に興味を持ち講義などを受けていたのを覚えています。各科の講義や実習を受け、未熟なりにも知識や技 術を得た私が、なぜ予防歯科という言葉に魅力を感じ、予防を実践している診療所に勤めようと考えたのかをお話ししたいと思います。 私が予防歯科を学び、実践していきたい!と考えるようになったのは学生時代の臨床実習が始まってからだと思います。それまでの模型を使った各科での実習で は、齲蝕の除去法や充填法、支台歯形成や義歯の制作法などを学び、自身の歯での治療経験の少ない私は「虫歯ができたらこうやって治療するのか。」、「銀歯 を被せるには歯のまわりを削るのか。」など、歯科治療の実際を少しずつ理解していきました。元々、手先が器用ではない私は必ずと言っていいほど補講を受 け、間に合わなかった分の実習をこなしていました。この時の私の頭の中は、削ったり詰めたりが下手で遅く、友人には置いて行かれてばかりだったので、「ど うすればせめて補講にならずに帰れるだろうか?」、「どうすれば少しでも上手くできるだろうか?」を考えていたように思います。補講を受けながら指導の先 生方と、昼食をとりながら友人と話しをし、同じ充填処置でも窩洞がより小さい方がその後の処置も容易で、短時間で済むのだなということを未熟ながらにも学 び、自分なりにも考えながら一つ一つの作業をしてはいましたが、その後も補講を受け続けたのを覚えています。 無事に進級し、臨床実習が始まると患者さんを担当したり、指導の先生方の診療介助などをしたり、と実際に患者さんと接する機会が増えてきました。最初 は、話しをする事さえ緊張して上手くできずに冷や汗をかいていたのを覚えています。模型実習で学んだ事を生かし、担当患者さんの治療を上手くやるぞ!と意 気込んではいたものの、先生方のようにはいかずに臨床での難しさ、特に、齲蝕と言っても同じ齲蝕は一つとして無い事や患者さんによって口の開け方や口腔内 の見え方が違うことを実感しました。好きな方向から好きなように自由に見えていた模型実習でさえ苦しんでいた私は、「この先歯科医師としてやっていけるの か。」と不安に思った事さえもありました。 汗をかきながら診療を続けていたあるとき、自分の中で疑問が生まれました。それは、担当患者さんの治療というのが二次カリエスやダツリなどの再治療がほ とんどであったからです。予防歯科と言うことに対して知識などをほとんど持っていなかった私でしたが、何か矛盾を感じていたのだと思います。また、模型実 習などで苦労した私は、せっかく苦労して治療しても再治療になってしまうなんて、あの流した汗は何だったんだ~という思いもあったのだと思います。今から 約4年前の事なので、調べれば日本ヘルスケア歯科研究会など予防歯科に関する事はたくさんあったとは思いますが、正直言いますと、その存在すら知らず、予 防歯科と言うと大学の先生方の講義での疫学研究などを思い浮かべる程度でした。そんな矛盾を感じていた私の気持ちも、知り合いの歯科医師の方に卒業後の進 路について相談に行った時にスッキリしたのを覚えています。その先生から、日本ヘルスケア歯科研究会の存在を教えていただき、会報を読み、自身の健康な歯 を維持していく事の大切さ、定期的なケアの大切さを感じ、生意気にも、「これだ!」と思いました。これが私が、予防歯科と言う言葉を理解し、実践していき たい、と感じた瞬間です。 そして、現在、幸運にも縁あって河野歯科医院に勤めさせてもらっています。学生時代から変わらず、汗をかきながらも、来院している患者さんが健康な状態を 維持できるように、楽しく、美味しい食事がとれるように、という思いを持ちながら日々を過ごしています。
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