第9回 実験的歯科医院奮闘記(9) 無断キャンセル

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 慌しい診療によるトラブルへの反省を踏まえて,平成20年1月を記して30分1人体制から,また1時間1人にした.やはり「急いてはことを仕損じる」に間違いはなかった.1時間といっても中身は30分〜40分程度の治療であるから,残りの時間はゆっくりと患者さんと話をした.インフォームド・コンセントである診療の話はもちろん,お互いの趣味だとか,私の読売新聞に連載中のエッセーなどが話題となった.実際の診療に役に立ったかどうかは分らないが,自分ではものすごく豊かな気分になり,また患者さんもこちらを十分に信頼してくれている様子で実に楽しかった.仕事をするなら楽しくしなくてはね,と改めて思った次第である.

 1時間体制に戻すと,収入が減少するのではと言う危惧は,不思議なことにすっ飛んでいた.前述のようにたっぷりとした,穏やかな時間と,豊かな空間を提供すると,患者さんはこぞって保険外診療を選択してくれた.そして,時間に追われて治療をしている時より,効率的に診療が進むこともわかった.その結果,なんと時間に追われて多くの患者さんを見ていたときより,収入もかなり上がってきた.

 順調に推移し始めてきたが,1時間体制で困るのは無断キャンセルである(図1).こちらはやる気満々で器材と心の準備などをしていると,何の連絡もなくいらっしゃらないのである.まあ,言うところの無断キャンセルである.ポカッと空いてしまった穴は,自分としては原稿を書いたりメールの整理をしたりでよいのだが,何しろ直ちに減収に繋がってしまうので,クリニックの経営としてはよくない.とくにインプラント手術などは大学から先生にお出で願っているので,まさに調子悪い.

 はて,どうしたらよいものだろうか? よいアイデアがあったら教えていただきたいものである.ホテルの予約などは,こういうキャンセルに備えて幾分多めに予約を受け,当日の客室使用率が限りなく100%に近い状態にするのが予約係の腕の見せ所らしい.もっとも,オーバーブッキングで他のホテルにまわされたなんて話も聞くが.もちろん歯科の場合,そういう訳にはいかない.一流のホテル,レストランでは前日までに再確認(reconfirmation)を義務付けるところもあるし,先方から電話がかかってくることもある.「う〜ん,そこまで出来れば苦労はない」なんて思っている.スタッフミーティングでも話し合うが妙案は出てこない.

 それでも何だかんだいって得た結論が次である.

 1.当日15分過ぎてもいらっしゃらない場合には念のためこちらから電話を入れる.  本当に忘れてしまっていることもあるので,これで次回の予約をする.患者さんもこの方が便利だろうし,何しろ患者さんを失う恐れはなくなる.

 2.初診の患者さんには領収書と一緒に,約束時間を変更するようならば早めに電話を入れていただくようなお願いの紙を差し上げえるようにした(図2).

 果たして効果はいかばかりか? まあ取り合えずこれでスタートすることにした.

図1 キャンセルのアポイント帳を見て浮かぬ顔の受付

図2 患者さんに渡すお願いの文書

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