第2回 米国歯学部教育内容と歯科医師免許
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さて、今回はペンシルべニア大学での日本とは異なる歯科医学教育内容と米国歯科医師免許について書かせていただきます。
授業
【図1】ペンシルベニア大学歯学部(The Robert Schattner Center)
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システム
それぞれの科において必須終了症例項目が設定されていて、各自の進展具合は全てコンピュータで管理され、大学内サイトにオンラインでアクセスすると随時見れるようになっています。またこれらのデータをもとにカルテの管理、症例進展度、必須症例の過不足などを3ヶ月ごとにチェックされるチャートレビューというものを受けなくてはなりません。自分の持ち患者(1学生約30〜60人を担当しています)の全てのカルテを持って診療管理担当者からそれらを審査されるのです。 さらに各教科の症例の進展度は量だけでなく、質も評価の対象になっていて、両者の評価が点数化されたプログレスレポートとよばれるものが3ヶ月毎に各学生に送られてきます。各教科の評価は講義と実習に分かれていて、講義の点数は筆記試験をもとに評価されますが、実習はこれらのプログレスレポート、担当教官が評価する日常の診療内容、頻繁に行われる患者とマネキンを使った臨床能力試験などを総合して評価されます。 また、生徒が講義から実習、試験にいたるまで先生に評価されるのは当前ですが、ペンシルベニア大学では全ての教官も生徒によって詳細に評価されるシステムがあります。つまり、学生教育を重要視していない講義・実習教官は生徒から低評価を受けることになり、あまりに酷いと担当から外されることもあります。成績優秀な学生が表彰されるのと同じように、教育において評価の高い教官も表彰されます。これらの生徒からのフィードバックは双方のモチベーションを高めることのできるとても良いシステムの一つだと思いましたし、日本ではほとんど考えた事もなかった教師と生徒との一体感のようなものを強く感じました。
【図2】ペンシルベニア大学歯学部(The Fonseca Gardens)
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【図2】ペンシルベニア大学歯学部(学生診療メインクリニック玄関)※クリックで拡大
卒業
私個人の感想としては、授業、実習、技工、試験、レポート、口頭試問、めまぐるしい毎日とそれらをこなし続けなくてはいけないというもの凄いプレッシャーとともに過ごした2年間は本当にあっという間でした。私は日本での卒後7年の臨床経験があるにも関わらず(英語という大きなハンディキャップを差し引いても)、米国での歯科教育の方が格段に大変であると感じずにはいられませんでした。これらの臨床能力試験などの全ての必須科目・単位を取得すると卒業でき、DMD (Doctor of Dental Medicine) もしくはDDS (Doctor of Dental Surgery) という学位と歯科医師免許試験の受験資格が得られます。
日本の歯科医学教育全般と比較した総括
【図4】ペンシルベニア大学歯学部(学生診療メインクリニック内)※クリックで拡大
米国歯科医師免許
米国での歯科医師免許は州単位で発行されていて、それぞれの州独自もしくは州が属しているRegional Boardという試験(例えばNorth East Regional Boardには北東米を中心とした25州が参加している)に合格すると、これに属している州免許が申請できます。現在では、ほとんどの州において北米(カナダを含む)の歯学部卒業をこれらの試験受験資格にしているため、外国の歯学部卒業者は、米国の歯学部に入りなおさなくてはなりません。また、米国にも記述のみの国家試験も存在しますが、これは日本のような直接的な免許取得試験ではなく、歯学生が2年終了時(Part Ⅰ:基礎科目)と4年生時(Part Ⅱ:臨床科目)に受ける全国歯科学生の統一能力試験のようなもので、卒業前までにはPart ⅠとPart Ⅱの合格を義務付けられています。 North East Regional Boardという免許試験は、コンピュータ上記述問題、マネキン顎歯模型の前歯根管治療・下顎④5⑥と上顎①の支台歯形成、実際の患者さんのⅡ級アマルガム修復・Ⅲ級コンポジットレジン修復、スケーリング・ルートプレーニングの4つの分野から構成されています。これらの全ての分野に合格すると、希望の州免許申請・取得ができます(この試験を免許試験と認めている全ての州免許取得可能)。歯科教育・保険医療制度、国民認識など様々な相違により一言で語ることはできませんが、少なくとも免許システムに関しては米国式の方が好ましいという気がしてなりません。
次回は歯学部卒業後の進路と卒後研修プログラムについて書かせていただきます。
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