第1回 レーザーの歯科への応用

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 今から約30年前の私が大学を卒業した1975年頃は、レーザーを日常の臨床に取り入れるという考えは、一部の研究者以外にはほとんどなかった。研究はされていたものの、一般にレーザーと聞いてイメージをするのは「鉄板を切る」ための高エネルギーであり、兵器との関わり合いもあって「臨床に役立てることなどできるのだろうか」と思っている人も多かった。 ところが論文などを調べると、1970年代初頭にはMasterやPlogらが低エネルギーのレーザー照射が創傷治癒や、血行改善・疼痛緩和に非常に効果があるとする論文を発表している。中には毛髪促進効果に関するものもあり、この時期から多くのレーザー研究が行なわれるようになったことがうかがえる。 「口腔内にも上手く使えば鎮痛ができる」ということで、低出力のレーザー機器(主に半導体)が販売されるようになり、多くの開業医が購入し治療に役立てていたようである。中でも先見的といえるのが、知覚過敏症の治療であった。

 また、1985年にはTerry Myersらが、レーザーを用いることで歯髄に炎症反応を起こさず歯が削れることをアメリカの補綴学会誌“Journal of Prosthetic Dentistry”に発表した。これはNd:YAGというレーザーを使ったものであり、臨床家の手による発表という点も手伝い大きな反響を呼んだ。 眼科医であるTerryの兄は眼科治療にレーザーを使っており、これを上手く利用しようとして得た研究結果だったようである。これが、日常の臨床における新たな第一歩だったといえよう。その後、ドイツのKaVo社など多くのメーカーが製品を開発・発表しているが、最も早く日常臨床にとりいれられるレーザーを開発したのはこのTerry Myersの発表だったと思われるからである。

 私は17年以上前にハードレーザーによる治療を始めたが、当初は分からないことも多く、パサディナにあるThomas Chess先生のご自宅やオフィスに何度も足を運ぶ他、色々な先生方にお会いしてヒントをいただいたものである。また、当時ようやく書籍も出てきたので、森岡俊夫先生「レーザー歯学」を何度も読んで臨床へのヒントをつかんだのだった。他にも、松本光吉先生のところで勉強するなどして治療に役立てた。

 当初、私が使用したレーザーはNd: YAGだった。Nd: YAGというと古い時代のCW(いわゆる連続波)をイメージすることが昔は多かったが、今はパルスNd: YAGやパワーパルスなど使用しやすいレーザー機器も数多く販売されるようになり、使用されている。 今後さらなる臨床応用や基礎研究が行なわれ、その効果も実証されるようになり、再現性のある治療が出来るようにしなくてはならないであろうと考える。次回からはう蝕予防から窩洞形成、歯周疾患、審美領域、外科までにいたる広範囲な各種レーザーの応用について述べたい。

レーザー治療の流れ 治療[1] (写真を拡大する) 治療[2] (写真を拡大する) 治療[3] (写真を拡大する) 治療[4] (写真を拡大する) 治療[5] (写真を拡大する)  

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