第3回 生活者も歯科界も、地域のアンテナとして見ている。

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 平成13年12月に“歯ぶらし屋さん”を開店した頃は、珍しいこともあり、地域の雑誌社や地元の新聞社、放送局等取材がたくさんありました。お陰さまで、県内約500人の歯科医の先生には、正しい情報が確実に伝わったようです。意外なことに、励ましの言葉を掛けて下さったのが、当時の富山県歯科医師会の会長先生でした。

 「歯ぶらし屋さんだけでは、食べていけないぞ」とか、時々会合等でお逢いすると「どうだ、うまくやっているか」とお声を掛けていただいたほどです。正直最初は、全くお客さんが来店されず、収入のない日もありました。当時は、主人が会社員だったことから赤字は主人の給料から補う月もありました。

 その頃、会長先生から、障害児の歯科治療をしている、歯科医師会が運営する歯科保健医療総合センターに私のお店の商品を陳列して販売したらどうかと提案していただき、何にも変えがたいご支援をいただいたのです。6年目の今もそのセンターで障害児の方々に、私のお店のオーラルケア商品を展示・販売させていただいております。

 また、平成15年8月に歯とお口のエステサロンを富山市内に開店してからは、歯医者さんに通院したいが、今一歩足を運べないお客さんが来店されるようになりました。多くのお客さんは、歯に対する悩みや不安を抱えている人達です。カウンセリングに時間を要する一方、自分に合った歯医者さんを紹介して欲しいことが、お客さんの最終ゴールです。現役の頃に勤務していた保健所では、名指しでの歯医者さんの紹介はできませんでした。お店としての歯医者さん紹介であれば、法的にも問題がないことから、私のお客さんにはキチンとした形で歯医者さんを紹介することができます。このことが、結構評判も良く、大勢のお客さんに喜ばれたものです。

 歯とお口のエステサロンは、地域住民にとって、自分に合う歯医者さんを専門家の人が紹介してくれるということで、地域の信頼を得たと同時にアンテナショップの役割も果たすという市民権を得たと思っています。お客さんからは喜びの感激の声を聞き、紹介した歯医者さんからはお礼の手紙や電話が届くようになりました。お客さんには、診療や治療のアプローチもできるのです。こんな仕事は、やはり歯科衛生士しかできないと・・・・。どこの公的機関も団体もできないことだと・・・・。ドラックストアもスーパーも百貨店もできないことだと・・・・。こんな歯科衛生士が経営するサロン風で気軽な場所が全国にあれば、歯科医療のアンテナショップとして、国民のために直接貢献できるものと思います。

 開店当初、全国から歯科医の先生や歯科衛生士さんが多数、お店の見学に来店されました。皆さん口を揃えて「地元の歯科医師会からの圧力はないのですか」と聞かれるのですが、「全然ありません。むしろ応援してもらっています」と答えると、不思議な顔と言うより信じられない素振りでしたが、本当のことなのです。

 まず、歯とお口をキレイにするエステサロンの役割と位置づけがしっかりしていることです。併せて、知ってもらうことも重要です。一体何をしているところなのか?ですね。次に、生活者にとってメリットがないと、サロンは継続していきません。また、経営していけるスタンスも重要です。経営については、私も全く素人でした。経営塾や県の商工会議所の研修には、頻繁に参加したものです。雑貨であるオーラルケアグッズを売るという販売業とエステをするというサービス業を同時に兼ね備えたビジネスですから、保健所時代とは天と地の世界です。かつての仕事仲間からは、“成功できるはずがない”と笑われているようです。

 このコラムを読まれた全国の歯科医の先生、歯科衛生士さんに申し上げます。地域のアンテナショップを経営・運営してみたい人が現れてきたときは、是非応援してあげて下さい。必ず、地域の歯科保健医療の向上にお役に立てることになると思います。何故なら、私は、地域のアンテナショップとしてこの3年間、約200人の方に歯のことで悩みを打ち明けられ、歯医者さんの治療や相談に結びついた実績があるからです。歯科治療に行きたいが行けない人、行こうか迷っている人、行くことを決心してもどこに行ったらよいか分からない人が、まだまだ大勢いらっしゃることを知ったのです。

 今まで「歯科健診」という行政や専門団体の器(うつわ)に生活者を呼び込み、次に「歯科保健指導」と言う言葉で歯科医療に誘導していた事までが、生活者に対して歯科のイメージを悪くしていたのではないかと思った程です。

 地域に密着した気軽な専門店やサロンが存在すれば、もっともっと国民の歯とお口への関心が高まるはずです。保健所や保健センターでもなく、歯科医院でもないスタイルで生活者との架け橋となる新しい存在を富山では少しづつ浸透し、生活者から市民権を得つつある今日この頃です。

 次回につづく

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