第5回 ドイツ歯科技工士マイスターとして想う事 第5章

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1、ドイツにおける歯科技工所の構造設備基準:

前章では厚生労働省医政局長からの通知のあった「歯科技工所における歯科補綴物等の作成等及び品質管理指針」についてドイツにおける現状と小社自身の見解に触れましたが、本章ではもう1つの喫緊の課題である「歯科技工所の構造設備基準」について焦点を当ててみようと思っています。 日本でも一昨年に構造設備基準が示され、ようやく歯科技工士の働く環境づくりが本格化してきた感がありますが、ドイツでは早くから、日本に先行した取り組みがなされてきました。次に、その詳細について解説します。

(図01)

図01に示しましたとおり、ドイツの構造設備基準についての遵守すべき規定、法律は多々あります。その中でも重要なものは職場管理路線:職場環境規格規定法(ASR)であり図02の書籍に詳細が規定されております。

図02

そこには人間工学に対応した職場環境の在り方が示されるとともに、歯科技工士が健康、かつ快適に就業できる設備の確立規定が下記のとおり記載されています。

◎作業動作に必要な面積:

(図03)

(図04)

・ 仕事場には8m2敷地があること ・ 仕事場の天井の高さは床面積50m2以下では少なくとも 2.50m 、100m2以下で少なくとも2.75m、100m2以上の時は3mを取らなければならない ・ 仕事場では各社員にすくなくても12m3の空間がある ・ 仕事場内の空気が健康に良く、外の空気と同じではならない ・ 快適な室温、主に座って仕事をしている時は(例えばラボ内では)19〜26 ℃ が最適である

◎作業環境規格規定法(ASR)に基づく窓: ・仕事場は中から外を見渡せる ようにすること ・窓面積は壁面積の1/10とする

(図05) ◎粉塵と蒸気: 蒸気あるいは粉塵が人体に害を及ぼす量もしくは濃度が出た場合、発生元をきれいに清掃する

 

(図06)

(図07) 粉塵と蒸気への対策:より良いサクションの導入

◎騒音:

・ 職場の騒音計は室内以外の音を足して85dBを超えてはならない。

(図08a)

(図08b)

 ドイツにおける騒音に対する規定は厳しく、人間への身体的悪影響として自 律神経障害、聴力障害等が挙げられ、環境における騒音量(dB)によって人 間工学上、その病的度合いは変化して行きます。したがってこれらを打開する ため、ルームセパレーション、ノイズの吸収システムの考案、またはプロテク ション・ヘッドの使用等を図る。もしくは騒音の少ない器機(ドライトリマー、 サイレント・サクション等)の導入を考慮することも必要でしょう。

◎照明(デンタルラボ):

(図09) ・天然光の特性も考慮し、次の様に定めている。                    

メインデスク 1500〜 3000 lux 研磨用ユニット 1500 lux 石膏・埋没用ユニット 750 lux デンチャー用ユニット 750 lux 鋳造・埋没 300 lux

 ・人間工学上、後述する重要性と、技工作業上の優位性を有する(図07&08)

(図08b)

その他の規定

休憩室: ・10人以上仕事をしている場合は、歯科技工士に休憩室を自由に使わせる ・休憩時間以外に休憩室を使うことができるようにする  (コース、イベントなど) ・床面積は少なくとも6m2、天井の高さは少なくとも2.30mなければならない ・複数の歯科技工士が休憩室に存在する場合一人あたりに少なくとも1m2スペースを確保する

更衣室: ・ もし特別な仕事着が必要とされる場合に、更衣室以外で着がえることを要求できない場合、歯科技工士に更衣室を自由に使わせる ・男性と女性の更衣室を別にすること、入口も別に容易されていなければならない ・更衣室の床面積は少なくとも6m2 、天井の高さは少なくとも2.30mを確保する ・歯科技工士に鍵の付いたロッカーを自由に使わせる。大きさは少なくとも600×500×1800mm

洗面所: ・健康上の理由あるいは仕事の内容によって洗面が必要な場合、歯科技工士に洗面所を自由に使わせる ・女性と男性に個々の洗面所を設け、洗面所と更衣室は直結されていること ・洗面所には少なくとも6m2床面積があること ・5人に1つの割合で洗面台があり、洗面台の周りには少なくとも0.7×0.7mのスペースがある

トイレ: ・5人以上の歯科技工士がいる場合、女性と男性に個々のトイレを自由に使えるようにしなければならない

女性10人以下 トイレ 1つ 女性20人以下 トイレ 2つ 男性10人以下 トイレ 1つ 便器 1つ 男性20人以下 トイレ 2つ 便器 2つ

・トイレ が1つ以上ある場合は、必ず別室の洗面所を設ける。 ・トイレに洗面台がある場合は、別室に洗面所は必要ない。

 統一化されたラボのシステムは最善の仕事場と組織化に準じ、かつ、人間的な仕事環境が標準的な人間性と安全性を産むと考えます。また、作業場の配列と器具の正しい配置は生産性の効率アップと経費節約に繋がり、小社(デンタル・ラボア・グロース)は既述の事項を考慮し、ヨーロッパに負けないラボとして構造設計したものです。

 実際、上記の事項をカバーするためには不動産コストを無視する事は出来ないでしょう。本国における不動産コストには地域差が存在し、その中で、都市圏の低コストパファーマンスを実現するには不動産を考慮すれば非常に厳しい状況であることは言うまでもないでしょう。しかし逆説的に、自費診療による臨床の割合も大きくなることも考えられます。ただし、最も重要な要求は歯科技工士が法的に「その他の医療機関」の1つとして快適、健康に就業できる環境が問われていることを忘れてはならないではないでしょうか!? *次章ではいよいよ「臨床編」に焦点を変えて考察を行って行きます。

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