第3回 ドイツ歯科技工士マイスターとして想う事 第3章

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EU統合後のドイツにおけるマイスター制度の行方:

11世紀後半からの徒弟制度以来、中世以後、絶大な威厳と伝統を有し、1953年からは職能制度として法制化され、ドイツの産業発展に大きな役割を果たしてきたとされるマイスター制度はEU統合とともに大きな転機期を迎えています。2003年12月19日、ドイツ経済構造改革を目指した「アジェンダ2010」の一連の改革法案の一環として改正手工業法が施行されました。

 この改正手工業法では、当初マイスター資格取得義務であった94業種のうち、53業種がマイスター資格取得義務を免除されることとなりました。これら53業種は技術の習得が比較的容易な業種であり、営業活動によって第三者の健康や生命に危険を及ぼす恐れがない業種と判断され、手工業法の付表Aから外されたのです。したがって、これら業種については今後、マイスター資格なしに手工業企業を設立したり、手工業企業を買収したりすることが可能になることになります。ただしこれら業種についても、自由意志でマイスター資格を取得することは可能ですが、3年間の就業、あるいは臨床経験義務が不要になります。

 また、その他の41業種は、技術の習得が困難とされ、第三者の健康や生命に危険を及ぼす恐れがある等の理由から、「許可が必要な手工業」に分類されました。したがってこれら業種については、企業の設立や買収に当たっては引き続きマイスター資格の取得が必要となります。

 歯科技工士はこの41業種に含まれ、マイスター資格取得義務が必要ですが、前章で触れたように、EU内の住居・就業の自由のため、ドイツ人以外でマイスターでなくとも、ドイツ内にて歯科技工所を経営できるようになりましたので、オランダ・フランス国境には外国人経営の歯科技工所が開設されている事実は否めないのです。

 手工業企業設立(または買収)に当たって引き続きマイスター資格が必要な業種とマイスター資格が不要となった業種については下図で示したとおりです。

手工業企業設立(または買収)に当たって引き続きマイスター資格が必要な業種とマイスター資格が不要となった業種:

筆者の卒業した「マイスタースクール デュッセルドルフ」全景

ドイツの歯科医療保険構造と診療の流れ:

 次に、ドイツにおける歯科医療保険構造と診療の流れと題し、「ドイツで前歯が痛くなって歯医者さんに行き、保険で人工の前歯(セラミックス)を入れた」と仮定して、簡単にその流れを解説しましょう(ドイツで前歯部セラモメタル前装は国保適応内です)。

上図のとおり『保険組合からの承認』を得るためには『歯科技工所の技工料金見積書』を添えて保険組合へ提出しなければなりません。言い換えれば、「貴方の歯はどこの誰がいくらで作るのか?」これが明確でない限り、保険組合からの承認は下りません。しかし、自分の歯を誰が作るのくらいは患者として知っておきたいものでしょう。

次章では、上記した『チェックリスト』の実際に焦点を当てて紹介しましょう。 続く

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