第5回 コミュニケーション=毎日がトレーニング(2)

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日常生活のチョッとした出来事から学ぶことって沢山ありますよね。そこから感じ、臨床で活かしている歯科衛生士長岐祐子のコミュニケーション(2)をご紹介いたします。    連休中、東京の実家で過ご した時の話です。少し遅めの朝食。久しぶりに母の作る味噌汁に目を細めながら味わう私の横で、春から祖母宅に居候を始めた息子が最大限に見開いた目で、ご飯も食べずに新聞に折り込まれ入ってくる莫大な広告に食いついていました。 大学までの交通費と学食代はバイトで稼ぐ!これが我が家の教え(家計事情)です。心の中で「そんなに親も世の中も甘くないからね」と、そして思わず微笑みながら「何年ぶりだろう」と高級佃煮に箸を伸ばそうとした私にメスを入れるかのように息子が鋭い声で、   「5月345日!三日間限りの学割サービス!フレーム&レンズ、セットで7,500円!」   入学前から眼鏡を欲しがっていた彼は、その一枚の広告から、まるですごいチャンスを掴んだかのように私の懐を掴んだのです。朝食後、私たちは早速メガネを買いに出かけたのですから。イタタタ・・・予期せぬ痛い出費。今朝の優雅さは一瞬して消え去りました。    さて本題はここから、今回の主役はメガネ屋の店長です。一応看板名は大手チェーン店名になっていますが、東京といえども下町の商店街にあるメガネ屋です。   ★ポスター一枚の張り方からだって、メッセージは伝えられるし伝わるのに、この店の外観からすでに「無愛想な対応をしています」と言わんばかりの印象を受けます。店内に入ると、やはりあの明るく爽やかな人を受け入れる「いらっしゃいませ!」の声はなく、「あなたメガネ買う気あるの?冷やかし?」と疑わしい視線を一瞬にして感じたのです。  

まあ店員二人に対し、店内の客はすでに三組。さらに私たち親子が来店した訳ですから、日ごろから客にサービスの気配りを訓練してない人には難しいことかもしれません。私たちの目的は7,500円のセット商品を買うことですから、店内の商品をじっくり見まわす必要もなく、店員にすぐさま声をかけ目的を伝えました。 長男は早速視力検査をはじめスムーズに会計カウンターへ私たちは事が運びました。後は料金を支払えば良いだけだと思っていた私の予想を大きく反し、  

★店長はサービス商品に使うレンズの説明を長々とし始めたのです。  

「レンズには○○タイプと○○タイプがありまして・・・」横で私は「はあ〜この話最後まで聞かなきゃダメ〜早く帰ろうよ。他にやること私もあるんだからさ〜」と思うのですが、素直な私の息子は真剣に店長の説明を聞いています。得意げに商品説明をする店長の目はこの仕事は遣り甲斐がある!みたいな熱い眼差しでた。 力注ぐポイント違うでしょう!店長の不必要に長い説明からやっと開放された祖母宅に帰る途中、「母さんは何で真剣にあの店長さんの説明を聞こうとしなかったの?」「それはさ、私たちは広告から事前情報を持って7,500円の商品を買いにいったわけで、その商品説明を聞きに言った訳じゃないもの。店長があそこで7,500円の商品が如何に素晴らしいか説明してもあまり意味がないし、時間の無駄だと思う。 限定商品で安くメガネが買え得した気分とかお客に満足感を味わいさせるのが彼の本当の役割だと思うよ。それなのにあの店長は自分の説明力に自己陶酔しすぎだよ」  

★「そうかもね。でも安く買えて良かった!」と満足する息子。  

さてさて以上の事柄から日ごろの患者対応を思い出し「はっ!」とはしませんか?  

★ポスター一枚の張り方からだって、〜疑わしい視線を一瞬にして感じたのです。  

を 考えてみてください。『メラビアンの数字』(*メラビアンとはアメリカの心理学者)=言葉7%、耳38%、目55% つまり私たちは言葉だけではなく、相手の態度や表情から第一印象を持つのです。外観や店内の整備・装飾から55%客を引き付けるインパクトが作れることになります。この数字を知っていれば、例え忙しく手が話せないときでも態度と表情で相手に対応できるのです。  

★店長はサービス商品に使うレンズの説明を長々とし始めたのです。  

これはどうでしょう。説明とは相手を理解させるという目的があります。今回私たちの目的は7,500円のセット商品を買うことでしたから、店長の説明はお客の私には不要でした。もちろん必要最小限の商品説明をする必要はりますが。現に息子は店長の説から得た情報などすっかり忘れ、  

安く買えて良かった!  

ことに満足しているのですから。  私たちは日ごろ診療室の中で患者さんに言葉をかけることだけがコミュニケーションだと思いがちではありませんか。そして、自分の知っている情報や知識を全部伝えようと頑張りすぎていませんか。日常生活のホンの些細な出来事から学ぶことって沢山あります。でも、それを感じて考えるかは本人次第ですけれど。  

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