第5回 歯科衛生士が勧める食育…口に入れる物はソフト面
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歯科衛生士コラム 第5回
歯科衛生士が勧める食育…口に入れる物はソフト面
宮坂乙美 歯科衛生士
<現代の食が抱える問題>
第1回のコラムでも少し触れましたが現代の“食”について考えてみましょう。昔は“食べ物を手に入れる苦労”がありました。が、現代は“食べ物がある苦労”があります。コンビニや夜遅くまで開いているスーパー・飲食店などがあるので、いつでもどこでも簡便に食べ物を手に入れる事ができます。子どもでもおこづかいを持って出かければ塾帰りの遅い時間でもお菓子やファストフードを手に入れる事は簡単です。(=飽食・豊食)しかし、この便利さが逆に不規則な食生活をまねき、健康を害する結果にまでつながっている場面が少なくありません。(=崩食・呆食)
今の食の特徴を栄養面から見ると、
1)大栄養素=カロリー源であるたんぱく質、糖質、脂質のうち砂糖と肉は過剰摂取であるのに対し、豆類や米の摂取は不足しています。
2)副栄養素=代謝栄養素であるビタミン、ミネラルなどのうち塩分は過剰摂取であるのに対し、食物繊維などは不足しています。
食べ物は豊富にあるはずで、栄養をきちんと摂ろうと思えばいくらでも可能であると思われるのに、偏った食べ方をしているのです。よく言われる、食生活の乱れからくる「現代型栄養失調」になっているようです。さらに食の現状をみると、
1) 食を摂らない
生活習慣の乱れから時間がない、朝から食欲がわかない
2) やわらかい食べ物ばかり食べている
子どもから若い世代までが好きな「お・か・あ・さん・は・や・す・め」のゴロ合わせで知られている、オムライス・カレーライス・アイスクリーム・サンドイッチ・ハンバーグ・ヤキソバ・スパゲティ・めだま焼きのような、あまり咀嚼しなくても食べられてしまうメニューがよく食卓にのぼる
3) 食べ物の選択権を子どもが握っている
養育者が、子どもが好んで食べないからといって、子どもが欲しがるものを食べさせる。
このような状態にある中で、歯科衛生士は何をすべきなのでしょう。現在、保険治療を行っている歯科医院では、初診の際、「歯と口の治療管理」の説明書を患者様に出すと思いますが、その中に食生活習慣を問診する項目があります。その記入事項に引っ掛かってくる内容のものがあれば、食生活のポイントを指導説明します。
<食生活のポイント>
(1) 飲み物=お茶・お水
(2) 朝ごはんをしっかり食べよう
(3) おやつ=4回目の食事
(4) カタカナ食事は日曜日に
この4つの事項を中心にお話しをします。
(1) 飲み物=お茶・お水
飲み物は水分補給を目的に摂取するので、特に味の付いたものでなくてもよいわけです。特に、甘い飲料を飲むとさらにのどが乾いてしまって、また甘い飲み物が飲みたくなり、悪循環です。飲料でカロリーを摂ってしまうときちんとした食事が摂れなくなってしまうのもよくありません。また、食事中に飲み物を用意するのもやめるように促しています。よく噛んでいれば唾液の分泌も良いはずですので、水分に頼らなくても十分嚥下できます。流し込みの食事にならないためにも、お茶は最後にする方が良いのではないでしょうか。
(2) 朝ごはんをしっかり食べよう
朝ごはんに関しても、生活習慣問診をもとに、摂っていないようであればごはんとみそ汁だけで良いので食べるようにすすめ、朝にごはんを炊くのを面倒がる養育者の方には、まとめて炊いて一食分ずつラップして冷凍保存すると便利ですよ、と伝えています。パン食も否定はしませんが、パンは食パンでも砂糖が入っているため、主食におやつをたべさせるようなものである事を説明します。
(3) おやつ=4回目の食事
おやつは子どもにとって4回目の食事です。どうしても「おやつ=甘いもの」と考えがちですが、おにぎり・うどん・さつまいも・とうもろこし・せんべい(焼き)などの穀類・いも類を中心にすることを勧めています。さつまいも・とうもろこしはレンジでチンすれば食べられますので、手間もかかりません。夏場に冷たいものを欲しがる時も、果物を凍らせた物を勧めます。おやつについては次回もう少し詳しくお話ししますね。
(4) カタカナ食事は日曜日に
そして、最後に先ほども述べた「お・か・あ・さん・は・や・す・め」のようなカタカナ食は、咀嚼回数が減るのみならず、油を使うことの多い食事になりがちですので、日曜日だけ、あるいはお誕生日やお友だちが来る日のイベント食にするよう、アドバイスをしています。他にもラーメン・シリアル・パスタ・ピザ・ハンバーガーなども同じです。かわりに「ま・ご・は・や・さ・し・い」の食材を選ぶように指導します。これもゴロ合わせになっていて食育の現場ではよく指導に使われる言葉です。
●ま・ご・は・や・さ・し・い
まめ・ごま・は(わ)かめ・やさい・さかな・しいたけ・いも類
口腔機能はハード面の咀嚼のところででてきた“にちゃがじっ”にもリンクしていますが、昔からの日本食=ひらがな食を選ぶことは、よく噛む食材を選ぶことにもなり、バランスのとれた食生活の基本になると思います。
これらの事は言われるまでもなくよく分かっているはずのことです。本来「これって歯科医院で指導する事?こんなことまで言わなきゃならないの?」と思われる歯科衛生士の方もおられるかもしれません。しかし歯科医院また歯科の公衆衛生の場で聞くと「歯科でもこんな話をされるのか・・・」と自らの食生活や生活習慣を顧みる良いきっかけになるのではないでしょうか。
次はいよいよ最終回。“キレない子どもは歯科が育てる!”カリエス予防におけるシュガーコントールだけではない、全身のシュガーコントロールのお話しをします。お楽しみに。。。
参考文献:粗食のすすめ 幕内秀夫著
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