第6回 あわや!クモ膜下出血…(その1 オペを決心するの巻)

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H17 8月9日朝からどこといってではなくしんどいなあ〜でも、午後から高齢者いきいき教室。 いつものように講師をやり出すと テンション上げて無事好評のうちに終了。 やれやれ、疲れは寝れば治るもの、疲れを怖がっていたら何も出来ない、それよりやりたいことを先に延ばしていたらばあさんになってしまい、やりたいことができなくなる方が情けないと特に中年からの私は自己実現欲にとらわれていた。 人並みには更年期といわれる時期に来ていたが自己実現欲はそれなりに捨てないで持っていた。来年50歳を迎えるにあたり こうありたいと夢だけは膨らませていた。そんなときにはじめて人生の途中でこけた。年に一回ぐらいは過労と思われるグロッキー状態で起きる事が出来なくなるが この3日ほどはいよいよ体が思うようにならない。朝、目が覚めても前日からの頭痛が直っていない。元々緊張性頭痛のためしょっちゅう悩んでいるが頭にわっかをはめたような痛みと首筋や肩のこりがひどくて吐き気もする。その上、視線を向けた部分の景色が揺れている。「めまいが起こっているな。。。でも子供の弁当を作らないと」我慢して動きかけるが冷や汗が出てトイレに走り吐いてしまう。3日経ってもすっきりせずかかりつけ医にいって状態を伝えるとMRI撮影検査を勧められる。念のためと。大阪日赤病院での予約は2週間以上先。「そのうち疲れが取れれば治るだろうし盆には旅行の予定があるし、バレエのレッスンにも行こう。」と懲りもせず 考えていた。(実はこの約一ヶ月前にバレエの発表会を終えたところで、まだ この年でも、もう少しレベルアップできそうと過信していたのが間違いだったか?) そのうち検査結果が出て「異常あり 来て下さい」との主治医の弁。「えっ?脳に異常あり!?」 あんまり気持ちよくない話だ。脳に異常って私はいよいよアルツハイマーかな?まさか、なんかの間違いじゃ・・・。行ってみると主治医のいつもと違う真剣なまなざしで話す様子にどきっとする。脳のX線写真を指差して「ここに脳動脈瘤があります。放置され破裂するとクモ膜下出血になり5割がなくなりますね」そんな滅相もないこと良く淡々と話せるなあ・・・感心している場合ではない。要するに手術をするかどうか専門医とよく相談しろと言うわけだ。晴天の霹靂ではあったけど 疲れが取れにくくなってきてると言う自覚もあり無理をしていたことは否めず いよいよ私も使いすぎのボロになってきていたんだろうか・・・と少し自分に起こったことに一部納得するような気持ちも発生していた。 で、でも、困る!大きな劇団の仕事がこれから2本迫ってる。(その後5本になった)東京と山形の講演には出たい!やっと新作のセリフも8割は入ったところだというのに。 しかし、しかし・・・もしクモ膜下出血になればたとえ生き残ってもどういう状態になるか!は想像がついていた。10年以上前から 在宅寝たきり者の訪問ケア・老人病院・現在も訪問している老人介護施設でそういう方をたくさん看てケアしてきたのだ。特に四肢麻痺状態で寝たきりの某女性の姿が思い出された。52歳で好きなダンス教室に行っている時にクモ膜下出血を起こして倒れた。 手術はしたが現在も胃に穴を開けて栄養を摂取する寝たきりの状態である。性格も年齢も状況が似ている。私はたまたま破裂前に4ミリほどの内頚動脈溜(右)が見つかったという幸運をもらっただけかもしれない。この女医の宣告を聞いて固まり、数秒言葉につまった。「先生・・・・でもでも 破裂するとは限りませんよね。気がつかないで一生を終えることもあるんでしょう?」 「そうではありますが、一端破裂したら予後は・・・ もう少し精密検査を受けて 専門医に見てもらいましょう。」 早速『MRIとMRAというレントゲン写真』を持って知り合いの脳外科医の家を直接訪ねた。MRA写真を見るなりはっきりと仰る。 「ああ、よかった!右だから(手術) しやすいところや。 ここは好発部位で安全に処置できる。若いし体力もあるし 爆弾抱えてるより 処置した方が良いと思う。」 本当にあっさりしたものだった。 患者として大事なのは本当に 安全に処置してもらえるか・・・だった。その前には、インターネットでもできるだけ情報を掴んだ。こちらは 脳という人間の体で最も大切な部分の外科手術をオーダーするわけで、八百屋の店先で大根買ったりユニクロで服を買ったりするのとちょっと違う・・・返品が効かない。失敗は許されないはず。どうなんだろう?その時は疲れも取れて、たしかに血圧が高いめ(140〜150ぐらい)だが どこもなんともない。脳動脈瘤自体 自覚症状はないのだ。 知り合いの内科医から手術自体が大きな危険をはらんでいるので十分考えるようにというご意見も頂いた。しかし脳動脈瘤という爆弾抱えて生きるより、破裂しないようにクモ膜下出血の予防処置として開頭手術をしてもらうことを選ぼうとしている。そのほっておくと危険な爆弾処理という「予防処置」なんだ。 とはいえ、そのオペがどのくらい危険かは しろうとでも想像がつく。丁度右目の後ろ側で脳ミソのど真ん中が術野である。太い血管の分岐部分に瘤が出来ていてその大きさはたった4ミリ。頭の骨をくりぬいて脳の中に進入し患部にクリップをかけるという。この手術の方法を聞かされたのは治療すると決めた後、精密な立体的画像が見られる脳のCT撮影をしてからだったが、なんと緻密な作業なんだろう。先生は50代半ば過ぎ。 数100例みているとのこと。よほどの高齢での合併症は4例有ると教えてくださった。現にインターネットでもこの先生がその方面では超専門分野であることは理解できた。私の場合、条件的に心配は少ないと見て ほっておいて破裂する時の予後の悪さ・・・この怖さの方を思い決心する。文章にしたら 「決心する」と4字だが 「仕事から手をひいてできるだけ早くオペをしてもらう決心」に本当は3日3晩かかった。 最も悩んだのが劇団のことだった。 10月の東京公演や山形講演など劇団の仕事をなんとか 血圧を上げないようにしてやり過ごす方法はないかとオペの先延ばしが可能か医者に詰め寄った。しかし、先に延ばして大丈夫という保障はない。舞台でテンションをあげずにというのは土台無理な話で 踊っている最中に脳がピチィ〜! と いったらとんでもないことになってしまう。 結果からいうと 泣き泣きあきらめて劇団のメンバーに 代役を立ててもらう方向で話をしたら 私の演じる「カメ子」の代わりを違うキャラを作って演じてくれることになった。残る3人で色々と工夫してこの時期を乗り切って続けてくれたのだ。本当に感謝であった。 劇団でも他の仕事でも、仕事の穴をあけるなんてとんでもないし、期待をうらぎらせないという気持ちでずっとやってきたのに迷惑をかけてしまうことがとても辛かった。でも、ひょっとしたら 爆走を続けていた私にこの辺でちょっと休憩しないとつぶれるよ!と神様がくれた特別の有休であったかもと思う。こうして生きながらえている今、自分のカラダも限りある資源なんだ大事に使ってあげようという気持ちになっている。 病気しらずであまり人の痛みがわからなかったけれど告知された後の不安の大きさ・術後の痛み・吐き気との戦い・・・その他沢山の人に支えられて生きていることを知ることになり予想外の大きな経験となっている。前半はこのあたりで筆をおき、続きは 初めてのオペ体験などに入ります。お楽しみに。。。

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