第5回 人間媒体になる…歯科啓発劇団への挑戦

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「寸劇?! へぇ〜っ面白そう・・・ちょっとやってみよか。」それが、ちょっとで済まなくなった。その手ごたえにしっかり自分自身がはまってしまった。これはもっとやらなくては!と感じたのは「一般高齢者」にとって、『分りやすく楽しい寸劇』が保健指導の手法として適しているのが分ったからだった。   高齢者の口腔ケアにかかわっていると保健センターなどから歯や口の健康教室の依頼が来るようになる。歯科の保健指導というと歯を磨きましょうということや甘いものを控えるように、あるいは高齢者に関して言えば入れ歯の手入れと中身の相場が決まっている。 高齢者は今更、失った歯の話など聞きたくないと感じていたり他人に入れ歯を使っていることを知られたくない心理もあったりして触れたくない話である。 今でこそ講話も10年ほど続けているので慣れたものの、少し退屈な話になると5分後には斜め45度に視線が落ち10分ほど経過すると舟をこぐ人が現われる。 これではいけないと講話をできるだけ楽しいものにしたり、さあ、『試してガッテンお口健康クイズ!!』などとクイズ形式にしたり音楽にあわせて口を動かす体操をしたり、そこそこ時間を保っても今ひとつ盛り上がっているのは私だけ?感が否めない。高齢者の心を掴んでモチベーションアップに繋げる方法は無いものか?そこへ現われたのが歯科啓発劇への挑戦だった。  健口教室を始めて間もない頃、同じ訪問歯科衛生指導で4年先輩格のDH仲間Tさんが高齢者向けに寸劇をやってみないかと声をかけてくれた。仲間Tさんは自分が爺さんの役をするから私に元気なばあさんの役をしてくれないかと言って京都で既に試みている劇団の寸劇VTRを見せてくれた。 一回見て即OKをした。こういう世界があったんだ。躊躇どころか是非やってみたいと真髄から沸き起こる感覚があり、これで自分が活かせるような予感がそのまま当たることになる。  媒体や衣装を作り、かつらを購入。高齢者20名ほどのお客様の前で行うお座敷での披露に間に合わせセリフを頭に叩き込んだ。ドキドキしながらも懸命に3名がその役に徹し笑いをとりながらも歯科保健指導として伝えていく。高齢者の笑顔・笑顔に自分達が逆に感激させられる。 「ねえちゃんら 面白かったわ。もっと、はよう(早く)聞いてたら歯を大事にして入れ歯にならんで済んだのになあ。 又、来てや。」 お座敷での寸劇公演といっても衛生士の出務費 1人分を劇団員4人で割って弁当と交通費を引いたら手元にほとんど残らなかったこともあった。でも、高齢者の喜んで下さるその笑顔を見られる事が病み付きになり、もっと いいモノにしたいという思いが募っていった。高齢者から私達が逆に元気をもらっていたのかも知れない。  徐々に口コミで広がり大きな会場や公衆歯科衛生研究会などで発表することになり、大きな舞台では大きな媒体が必要となってくる。 見せる事は魅せる事が持論で舞台では華奢な自分を元気に見せるためのコスチュームがいると確信しデパートのお色直し用衣装の売り場に出向き中古をゲット!ショッキングピンクで煌くスパンコールを貼り付けたドレスはイヤでも目を引いた。 そこまで衣装に凝るのなら派手さに負けない役作りやメッセージが必要である。類まれなる元気なばあさんの存在感を作るために35歳の年からレッスンしていたクラシックバレエが役に立った。舞台に立つのが快感なのは私自身バレエによって舞台経験があったこともさることながら、表現する事が楽しくてしょうがないからである。 でも、新作発表で頭が真っ白になったこともある。知り合いのお客様と目が合ったとたんセリフがきれいに飛んでしまった。この苦しさ悔しさは以後トラウマになり更に磨きをかけるきっかけになったから失敗も大事だと思っている。  劇団活動をしていて何が良かったと言うと山ほどあるが、元々人前でしゃべることは苦手と感じていた自分にとって台詞にしてしまうと話す事がぐんと楽になること。公演中にセリフを間違えると相方が困るので寝言でいえるぐらいセリフを練習してしまえばもう大丈夫。教室でも講演でも同じようにシナリオを作って練習して話すという癖をつけてしまえば話す事が楽になる。その上、人前に出ることに慣れれば勝手にアドリブが効くようにもなる。  遠方からの依頼も多い。地方巡業、つまり俗に言うドサ回りができると言うこと。劇団をしていたからこそ出会えた人々との一期一会。初めて行く土地での歓迎ぶりには心から感謝。主婦業と仕事の掛け持ちでレジャーどころではなかったけど地方ゆかりの観光地を訪れたり、その土地ならではのご馳走を頂いたりと福利厚生まで一緒についてくることも大きな楽しみである。 ちなみに北は山形(2回)から 栃木(自治医科大学) 山梨 東京(2回)静岡(2回) 南は 長崎県壱岐 高知 島根(3回) 兵庫(複数回)奈良(複数回)愛知 和歌山 滋賀など。大阪は数えると大変なので省略させて頂く。公演回数は H18年6月現在で126回数える。 「寸劇」を手法とすることでこんなに伝えやすくなる (1)キャラクターや展開が分り易く、笑いを取り入れることの効用がある 8020を達成し多趣味で元気印ばあさんと 義歯不適合で食べられないとぼやくしょぼくれじいさん。尋常小学校の同級生と言うくだりで対比が分り易い。 笑いを効果的に使うことによって見る人を楽しませ、すんなりと開いた心に保健指導のメッセージが入ってゆく。 (2)言葉が分り易い 登場人物は巷にいる地元大阪人を表現:高齢者の(つる吉&カメ子)2人。カメ子のかかりつけ歯科衛生士でタイガースファンというユニークなDH(えびす)。コテコテの大阪弁をしゃべり、ひょっとしたらいてそうな地域住民をモデリングすることで共感得られやすい。  例えば、汚れた義歯(模型)を平気で見せるつる吉「このくらいの方がエエダシが出るんやんか!」など、本当に耳にしたナマの声を反映したセリフ。多数の高齢者の心を代弁し共感できるのだと思う。専門用語はできるだけ使わない。 (3)媒体が大きいので分り易い 義歯や植立歯の模型は発砲スチロール製で約50センチ有る。視覚にたやすく訴える事ができ、ブラッシング方法など大きな舞台でもよく見えるようにした。 さて、こんな劇団一度呼んでみたい・観て見たいと思われる心の元気な方は是非 お問い合わせを。  HPアドレス なにわ歯っぴい劇団   http://www.milky.st/happy8020/

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