第4回 DIAGNOdent その2

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 DIAGNOdentの有効性を示す論文はいくつもありますが、そのひとつにLussiらが発表した「Clinical performance of a laser fluorescence device for detection of occlusal caries lesions」(EurJ Oral Sci 2001) があります。カットオフ値を30とした場合、この意味は測定値30以上はう蝕と診断して充填処置をしたとすると、ということですが、感度92%、特異度82%と結論しています。 感度は実際にう蝕のある歯がDIAGNOdentで30以上と測定される確率ですから、感度92%は精度が高いように思われます。特異度は実際にう蝕のない歯がDIAGNOdentで30以下と測定される確率ですから、特異度82%はこれも精度が高いように思われます。

 ちょっと、小難しい話になって、嫌になってきているでしょうが、もう少し我慢してくださいね。私もこういう話はあまり得意ではないのですが、DIAGNOdentの不思議を解明するのに必要な話なんです。

(図1)クリックで拡大します

しかし、その一方で、論文の記述から2X2表を作成してみると図1のようになります。これを基に計算してみると、陽性的中率、検査が陽性(30以上)の時に本当に疾患(う蝕)を有する割合、は44%でした。陰性的中率、検査が陰性(29以下)の時に本当に疾患(う蝕)でない割合、は99%でした。 陰性的中率99%であれば、陰性時の信頼性はかなり高いと言えるでしょう。しかし、陽性的中率44%ということは、DIAGNOdentで30以上と測定されても、本当にう蝕の歯はわずかに44%、残りの56%(半分以上)の歯は、実際にはう蝕ではない、ということになります。え〜え〜、本当なの〜、じゃないですか?。

(図2)クリックで拡大します

さらに、DIAGNOdentの不思議に迫っていきます。この論文の有病率は計算すると13%でした。そこで、感度92%、特異度82%はそのままにして、有病率を5%、1%の場合を計算上設定して、シュミレーションしてみた結果が図2です。

 有病率5%では陽性的中率21%、有病率1%では陽性的中率5%、という結果が出ています。有病率1%では、DIAGNOdentで30以上と測定された時に充填処置したとすると、その95%は健全歯を充填処置してしまう可能性があるということです。ちょ〜、びっくりしませんか?。

 DIAGNOdentは、有病率が高い集団に対して今この瞬間で診断をする時には有効な診断器械になる可能性が高いと言えるでしょう。しかし、逆に有病率が低くて長い時間経過の中で診断出来る場合には、極めて危険(健全歯を充填処置してしまう)な可能性が高い、と言えるでしょう。

 予防的診療システムを構築して、定期的メンテナンスによりう蝕の発生を起こさないようにして、長期にわたり歯を守っていく、というスタイルは、有病率は高いのでしょうか?、低いのでしょうか?。メンテナンス中の有病率はおそらく1%以下でしょう。そんな環境下においてDIAGNOdent測定値のみを診断基準にしてしまうと、極めて危険だ、ということです。 DIAGNOdentを使用してDIAGNOdent測定値をモニタリングしながらメンテナンスしていくことそのものが危険とか、いけないとかではありません。道具を使用するときには、その道具のことをきちんと理解して使ってください、ということです。

 最後に、DIAGNOdentのことについては、ザ・クインテッセンスの5月号の誌上シンポジウム「日常臨床における初期う蝕のマネジメント」にさらに詳しく掲載されていますので、興味の湧いた方、もっと詳しく知りたい方は、そちらをご覧ください。

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