第33回 3rd TERMIS World CongressがViennaにて開催

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3年に一度、Tissue Engineering and Regenerative Medicine International Societyのワールドコングレスが開かれる。それ以外の年は,アジア,欧州,米国の各地区にて,地区学会が開催されている。今回のワールドコングレスは,平成24年9月5日から8日までの期間において,オーストリアの首都ウイーンの王宮で開催するとの事前の予告があり,「王宮での開催とはどんなんだろう」という興味もあり,ぜひとも参加したいと考えていた。開催が決まってから,あっという間にこの日はやってきた。歳をとると月日の流れが早く感じますよね。その時期が来ると「あっというまだった」と感じますので,いつも,先を見据えていろいろと準備することが大切だなと思います。フランスの科学者のパスツールの言葉は,「幸運の神様は常に用意された人のみに訪れる。」である。

会場となったウイーンの王宮

写真1: 会場となったウイーンの王宮

私も海外旅行に慣れてきて,羽田発便を選ぶと,羽田の出発が夜中になるので,出張の準備は出発の当日に行った。それが災いしたのか,私のスーツケースは見事にウイーンに届かなかった。それも,ホテルに届いたのがウイーンのホテルに滞在して3日目である。滞在が6日の予定であるにもかかわらず,とてつもなく悲惨です。過去に2度,スーツケースが届かなかったことを経験していているが,どちらも翌日にホテルに届いた。今回のように3日間も日常生活品が無いと困りますよね。 したがって,ウイーンの毎日の日課は,スーツケースが届かないことがわかると,翌日の午前中にシャツ,パンツ,靴下を買うことです。ワールドコングレスでは,パーティも開催されますが,スーツもネクタイもない。さらに,ご存知のようにウイーンは音楽の都。クラシックのコンサートを連日予約していたが,初回のコンサートはスーツもネクタイも無しのオペラ鑑賞になった。服装のTPOは分かっているつもりですが,どうしようもなく,改めて服装の大切さを感じた旅であった。

ウイーン国立歌劇場にての開演前

写真2:ウイーン国立歌劇場にての開演前。筆者(右)と秋田君(中央)と佐藤さん(左)

一方で,学会が開かれた王宮の周りには,美術館も多く,フェルメールの作品を見ることができ,昔好きだったエゴンシーレの作品を多く所有する美術館もあり,楽しい毎日を過ごすことができたのは良かった。

今回のワールドコングレスには,私のグループから3つの演題を出している。大学院生が二人自費で参加した。大学院生に国際学会の発表の機会を与えることが大切だと考えている。私は,折につけ,若い学生に国際学会の発表を進める。海外に出向いて発表することは,上質な授業だと信じているからだ。とは言え,それも本人の気持ちが大切で,遊んでばかりでは,進歩しないかもしれないが。 日本からの歯科関係の発表者は,鶴見大学歯学部の3演題を含めて,東京女子医大他,数大学のみであった。筆者は,歯髄の幹細胞を用いた象牙質再生に有効な担体について発表し,大学院生は,以前紹介した過剰歯の歯髄幹細胞の特性と脂肪組織に含まれている間葉系幹細胞を用いた歯周組織の再生について報告した。どれも,まだ,論文は採択されていない状況であるので,詳細の説明は論文が採択された後にする。

今回のコラムでは,TERMISにおいて「Dental Field and Maxillofacial Area」という口演発表のセクションがあり,その発表の中から,私が興味を持った二つの演題を紹介する。両演題とも,「炎症と再生」がテーマとなっている。 炎症とは,「細胞傷害を引き起こした元々の原因と共に,これにより壊死した細胞や組織を排除しようとする防御反応である。」と教科書に書かれている。また,炎症において,微生物や毒素などの有害因子を希釈,破壊,中和することにより,防衛任務を果たしたのちに,組織修復が開始し,障害部位が最終的に治癒する。したがって,炎症は再生に移行する重要な過程であり,逆に,炎症が起こらないと,感染は拡大し続けて,創傷は決して治癒しないことになる。したがって,組織再生の開始には,炎症が起きることが必須であり,炎症の早期終息が,再生の早期開始を誘導することになる。一般的には,炎症から再生への切り替わりとして,危険因子が取り除かれると修復の過程が作動し始めることになる。

組織の修復過程の説明として,再生と治癒という二つの言葉が使われます。その二種類の機構の違いは,損傷した部分を元に戻し,本質的に正常な状態へ復帰することができたときを再生と呼ぶ。一方で,障害された組織に完全な回復を行う能力が無く,組織の支持構造が重度に損傷された場合は,結合組織(線維性組織)への置換により修復されることになり,この過程を治癒と呼んでいる。その治癒の結果として瘢痕形成が起きることは良く知られている。これらのことをインプラントの埋入にあてはめて,考察した研究が,私の興味を持った二演題である。

インプラント埋入時の炎症程度は,インプラントの表面形状で変わることを明らかにした研究が最初の演題である。Peter Thomsenらは,インプラントの表面形状において,machined表面とoxidized表面を比較すると,骨形成因子(Runx2, ALP, osteocalcin)の発現が,oxodizedがMachinedより高いことを見出し,さらに,興味ある知見として,骨吸収のマーカーとなる,Tartrate resistant acid phosphatase (TRAP)とCathepsinKの発現も高いことを明らかにしました。これらの結果は,骨のリモデリングが早期に開始されている証拠になる。一方で,炎症性サイトカインの発現をみると,machined表面におけるtumor necrosis factor-α(TNF-α)とinterleukin-1β(IL-1β)の発現はoxidized表面よりも高く,これらのことから,インプラン体の表面構造によって,炎症を早期に抑制することが可能であり,もしくは,炎症の程度を抑制し,骨の再生を早期に誘導することが可能になる。つまり,インプラント埋入後のOsseointegrationを早期に誘導できることになる(Biomaterials 32. 2011: 374-386)。 二つ目の演題のGhanaati先生の発表は,細胞の足場となる担体の中の骨再生実験から,細胞を担体に播種せずに移植した場合と細胞を播種した担体を移植した場合の血管新生を比較していた。血管新生に必要となるvascular endothelial growth factor (VEGF)は,炎症細胞が発現し,血管新生を誘導していることを明らかにした。この論文における炎症細胞とはmacrophageと多核の巨細胞(破骨細胞)を指している。もちろん,播種した細胞から分化した骨芽細胞にもVEGFの発現を確認している。したがって,担体の中で形成される骨再生には,血管の新生が必須であり,その血管誘導は,播種した細胞のみではなくて,炎症細胞も関与していることが明らかになった。ますます,炎症と再生が強く結びつく結果であり,大変興味ある発表が聞けた(Biomaterials 32. 2011:8150-8160)。  

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