第21回 歯の上皮細胞の話 

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歯学部の2年生に組織学講義の一枠として「歯の再生研究とは」について50分講義した。その内容は、私が今までに行ってきた研究と他施設の研究を交えて最新の歯の再生研究の話である。興味を持ってくれたかどうかは定かではないが、その学生に「君たちが考える歯の再生方法」ということで質問した。半数近くの学生が私の講義を聞いていたようで、講義中に話したことを参考して「歯の再生方法」について答えた。中には、ES細胞やiPS細胞を用いた方法などを回答した学生もいた。iPSのiがどうして小文字なのかを知っている学生もいて、多くの情報を得ているのだなと安堵した。このような研究の講義も学生の考える力を養うための良い効果となることを期待している。

さて、歯の上皮細胞の話である。歯の発生中に出てくる上皮細胞はいろいろとある。歯の発生の本当の初めの口腔上皮細胞。帽状期には口腔上皮細胞が各種の歯胚上皮細胞に分化する。外エナメル上皮細胞、内エナメル上皮細胞、星状網細胞、エネメルノットに存在する上皮細胞である。次に、鐘状期になるとエナメル芽細胞と中間層細胞がそれに加わる。さらに、歯間の形成が終わり、歯根形成期になるとサービカルループの上皮細胞層はヘルトビッヒの上皮鞘と呼ばれ、歯根膜中にマラッセの上皮遺残細胞として生涯われわれの成体に残存する。エナメル質の形成が完成すると、エナメル質を形成する能力を持つ上皮細胞(エナメル芽細胞)を失うことからエナメル質は再生しないと教えられている。したがって、歯髄や歯根膜細胞などの間葉系細胞と比べると、上皮細胞は歯科医療では重視されていないといえる。歯髄細胞は象牙質を再生し、歯根膜細胞は歯周組織を再生することが明らかとなっているからである。しかし、成体で唯一、歯由来の上皮細胞が歯根膜組織中に残存していることは歯学部の講義で習う。しかし、このマラッセの上皮遺残細胞のことを考えながら歯周治療を行うことが必要であるかは確かではない。

しかし、歯の再生、特にエナメル質の再生を考える上では、上皮細胞は必須な細胞となる。歯の発生・再生は上皮ー間葉相互作用から派生することは今までに何度も述べていることである。では、どの歯胚上皮細胞がエナメル質を再生するのに必要な細胞であろうか。もちろん、エナメル質を形成する細胞はエナメル芽細胞であるが、エナメル芽細胞は歯胚上皮細胞が最終分化した形質であることからこのエナメル芽細胞を増やしたりすることはできない。最終分化した細胞は増殖する能力を失っているからである。したがって、未分化な歯胚上皮細胞を採ってきて増やすことでエナメル質の再生が可能となるのではないかと想像できる。今までに歯胚上皮細胞の培養方法について報告されている論文は20本にも満たない。たったこれぐらいしかないのかと思われた方も多いと思う。歯髄細胞の培養については、数え切れないほどあるのに。その歯胚上皮細胞の培養方法の論文をすべてではないが、代表的な論文を下記に示した。日本人の活躍が目に留まる。次回はわれわれの歯胚上皮細胞培養方法について紹介する。

表1.歯胚上皮細胞に関連する論文を年代の古い順に並べた。 著者・論文のタイトル・論文が掲載された雑誌名・発表された年・雑誌の巻数・号・ページ数の順に記載した。日本人の著者には下線を加えた。

1. Limeback H. Enamel protein and collagen production by cells subcultured from porcine tooth bud explants. Biochem Cell Biol. 1987,65(8):698-709 2. L. S. Chen , R. I. Couwenhoven , D. Hsu , W. Luo and M. L. Snead. Maintenance of amelogenin gene expression by transformed epithelial cells of mouse enamel organ. Arch Oral Biol. 1992,37(10):771-8 3. Ishizeki K. In vitro characterization of enamel epithelium and pulp cells in mouse tooth germs. Kaibogaku Zasshi. 1996,71(4):294-307. 4. Tabata MJ, Matsumura T, Liu JG, Wakisaka S, Kurisu K. Expression of cytokeratin 14 in ameloblast-lineage cells of the developing tooth of rat, both in vivo and in vitro. Arch Oral Biol. 1996, 41(11):1019-27. 5. Matsumura T, Tabata MJ, Wakisaka S, Sakuda M, Kurisu K Ameloblast-lineage cells of rat tooth germs proliferate and scatter in response to hepatocyte growth factor in culture. Int J Dev Biol. 1998, 42(8):1137-42. 6. Den Besten PK, Mathews CH, Gao C, Li W. Primary culture and characterization of enamel organ epithelial cells. Connect Tissue Res. 1998;38(1-4):3-8; 7. DenBesten PK, Gao C, Li W, Mathews CH, Gruenert DC Development and characterization of an SV40 immortalized porcine ameloblast-like cell line. Eur J Oral Sci. 1999.107(4):276-81 8. Nakata A, Kameda T, Nagai H, Ikegami K, Duan Y, Terada K, Sugiyama T. Establishment and characterization of a spontaneously immortalized mouse ameloblast-lineage cell line. Biochem Biophys Res Commun. 2003,5;308(4):834-9. 9. DenBesten PK, Machule D, Zhang Y, Yan Q, Li W. Characterization of human primary enamel organ epithelial cells in vitro. Arch Oral Biol. 2005,50(8):689-94 10. Morotomi T, Kawano S, Toyono T, Kitamura C, Terashita M, Uchida T, Toyoshima K, Harada H. In vitro differentiation of dental epithelial progenitor cells through epithelial-mesenchymal interactions. Arch Oral Biol. 2005,50(8):695-705 11. Honda MJ, Shimodaira T, Ogaeri T, Shinohara Y, Hata K, Ueda M. A novel culture system for porcine odontogenic epithelial cells using a feeder layer. Arch Oral Biol. 2006, 51(4):282-90. 12. Shinmura Y, Tsuchiya S, Hata K, Honda MJ. Quiescent epithelial cell rests of Malassez can differentiate into ameloblast-like cells. J Cell Physiol. 2008. 217(3):728-38.    

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