第15回 歯の再生‐胎生期歯胚細胞を担体を組み合わせた歯の再生研究‐

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 今回は、われわれの研究室の岩附慎二君が中心となって行った実験を紹介します。この研究の目的は、胎生期歯胚を担体に播種して移植すると、生後の細胞と同じ結果が生まれるのか、それとも、前回紹介した胎生期の歯胚上皮組織を用いた時と(コラム第13回14回参照)同じ結果が生まれるのかを確かめることです。

(図1)

A. 妊娠14日(胎生期14日)の歯胚(天然)、顎骨の中の第1臼歯。 B. 胎生期14日の歯胚を取り出して酵素処理を行い細胞を単離、一つ一つの細胞が観察できる。 C.この実験で用いたPGAのメッシュで作った細胞の担体。 D.単離した細胞を担体に播種した後にSEM(電顕)で観察した。

 実験の方法は妊娠後(胎生期)14日目のマウスの顎から第1臼歯(図1-A)を10個から20個を取り出します。歯胚の大きさは約1mm以下ととても小さいです。この歯胚を酵素にて組織を分解し歯胚細胞を獲得します(図1-B) 。細胞外マトリックスをフィルターに通して除外し、歯胚細胞が入った懸濁液を担体に播種します(図1-C)。細胞が担体に接着した後に(図1-D)、同系マウスの腎臓の被膜下に移植します。この腎被膜下は、昔から歯胚の移植などで頻繁に用いられる部位です。腎臓の被膜下で歯は成長するということです。

(図2)

A. 移植後3日の再生組織。上皮細胞の凝集が観察できる。 B. 移植後5日の再生組織、天然歯で観察できる帽状期歯胚と類似している。 C. 再生歯の発生学的にみた組織学的構造は鐘状期の天然歯と一致するものの、咬頭の形態は平坦であり、天然歯胚の咬頭とは異なる。 D. 移植後7日の再生組織、鐘状期の天然歯胚と類似している。

 移植後3,5,7,10,14日で移植した担体を取り出し、ヘマトキシリンーエオジン染色を行い、どのような組織が再生したかを確認しました。移植後3日では、ひとつの担体の中に数個の上皮集合塊が観察されたのみで、周囲に明らかな間葉系細胞(歯乳頭細胞)の凝集は見られませんでした(図2-A)。移植後5日になると、天然の歯の発生で見られる(コラム第4回を参照)帽状期に類似する再生歯が観察され、歯胚上皮組織には星状網細胞も観察されます(図2−B)。移植後7日になると、鐘状期前期に類似する2種類の再生歯が担体の中で観察されました。この鐘状期の再生歯では咬頭が明らかなものとそうでないものの2種類の再生歯が観察されました。歯胚上皮の幅径は帽状期の歯胚と比べて増加しています(図2-C, D)。移植後10日では、鐘状期後期と発生学的に天然歯胚と類似する再生歯が観察され、エナメル芽細胞や象牙細管を形成する象牙芽細胞が配列していました(図3A)。咬頭形態は7日目と同様に明らかな咬頭を持つものと持たないものが観察され、正常歯胚の咬頭形態とは異なっていました。移植後14日では、歯冠形成期と発生学的に類似している再生歯が認められ、再生歯のエナメル質と象牙質の幅は厚くなり、象牙細管が明瞭に観察されます(図3-B, C)。しかし、咬頭の形態は天然歯と異なっていました。移植後28日まで再生歯を確認しましたが、歯根は観察されませんでした。

(図3)

A. 移植後10日の再生組織、鐘状期後期の天然歯と形態と類似している。歯胚上皮の発生は左右対称。再生歯の一部に硬組織が再生している。 B. 移植後14日の再生組織、エナメル質・象牙質の再生が明瞭に確認できるものの、咬頭の形態は平坦。エナメル芽細胞は明瞭に確認できる。 C. 移植後14日の再生組織、エナメル質および象牙質が著名に観察できる。咬頭の形態は2咬頭であり、正常歯とは一致しない形態である。

 これらの結果から、胎生期の歯胚細胞を担体に播種して移植しても歯が再生することがわかり、この再生歯は、天然歯とほとんど同じ形態と同じ大きさを持つことがわかりました。この再生歯の細胞の増殖について、詳しく調べていますので、この結果については次回ご紹介します。

参考文献

(1) Iwatsuki S, Honda MJ, Harada H, Ueda M. Cell proliferation in teeth reconstructed from dispersed cells of embryonic tooth germs in a three-dimensional scaffold. Eur J Oral Sci l2006;114: 310-7.

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