第11回 組織工学的手法による歯の再生 -細胞の足場となる担体の話 第2話-

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 今回は歯胚細胞の担体にコラーゲンスポンジと今までの研究で用いていたポリグリコール酸メッシュとを比較した実験結果のお話です。最初の実験として、歯胚細胞が硬組織を形成する方向に誘導されるのは、どちらが有利かということを調べました。 ブタの歯胚から単離した歯胚細胞を二つの担体に蒔いて、細胞のアルカリフォスファターゼの活性を1週間後に測定しました。アルカリフォスファターゼというのは、細胞が硬組織に誘導したときに活性が高くなります(1)。この実験からコラーゲンスポンジに蒔いた場合に細胞が早く分化することがわかりました。その理由を考える上で、どちらの担体に細胞が接着しやすいかを調べました。 この実験でも、コラーゲンスポンジに蒔いたときに多くの細胞が接着することがわかりました(1)。歯は上皮細胞と間葉細胞の相互作用によって発生・発達します。歯の再生も同様に上皮細胞と間葉細胞が相互に作用することで発生し、再生します。 したがって、多くの細胞が接着することは、上皮細胞と間葉細胞が担体の中で出会う機会が多くなり、結果的に歯胚細胞の分化が進んだと考えられます。したがって、ポリグリコール酸メッシュよりコラーゲンスポンジを用いたほうが、歯胚細胞にとっては効果的であることがわかりました。

写真1A、B

 上記に述べた実験結果から、歯の組織を再生する過程においても、なんらかの違いが出ることが予想されますので、コラーゲンスポンジとポリグリコール酸に歯胚細胞を蒔いてヌードラットの大網に移植しました。8週、12週、20週、25週経過した後に、移植した担体を取り出して、組織学的に観察しましたが、残念なことに、再生した組織に大きな違いは認めませんでした (写真1A,B)(1)。 しかし、驚くことに、歯が再生する成功率に大きな違いがあることがわかりました。細胞を蒔いた26個のコラーゲンスポンジを移植すると19個において、歯が再生しました。成功率は約73%です。一方で、細胞を蒔いた15個のポリグリコール酸を移植すると、7個において歯が再生していました。成功率は53.3%です(表1)。つまり、歯が再生する確立がコラーゲンスポンジを用いたときに、かなり高くなることがわかりました(1)。 これも、細胞が接着しやすいことと関連していると思われます。成功率が高いということは臨床において有利となりますから、今後の研究では、コラーゲンスポンジを用いることにしました。さらに、面白いことに、移植25週にて取り出した、組織から天然の歯とよく似た形をした歯が再生しました。上方にエナメル質が観察し、その下方には、歯根と類似した形態が観察されます。高倍率で観察するとヘルトビッヒの上皮鞘も観察できます(写真2)(1)。

写真2

しかし、残念なことに、この天然の歯と類似した形態となる歯が再生する頻度は全体の5%未満でした。この歯を見たときが、新しい研究課題が見つかった瞬間でした。どうしてこのような形態が再生できたかを突き止めることです。この形態を制御することが可能となれば、歯の再生の臨床への応用がかなり近いものとなります。来月は、再生歯の形態についてお話させていただきます。

引用文献

(1) Sumita Y, Honda MJ, Ohara T, et al. Performance of collagen sponge as a 3-D scaffold for tooth-tissue engineering. Biomaterials 27:3238-3248,2006

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