第10回 組織工学的手法による歯の再生 -細胞の足場となる担体の話-

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 今回は歯の再生研究で用いている担体のお話しです。組織工学的に組織の再生を成功に導くには、細胞と増殖因子と細胞の足場が鍵を握っています。細胞の足場は、細胞に生体と同じ3次元的な空間を細胞に生体外で与えることができます。 骨や軟骨を作る細胞の足場の研究は、読みきれないほどの数多くの論文が発表されていますが、歯の細胞に関する足場の研究はほとんどありません。広く言えば、器官や臓器における足場の最適な条件は、まだわかっていないと言えます。そこで、私の研究室に来た大学院生の住田吉慶先生が、この担体に興味をもち研究を始めました。

 担体の役割とはなんでしょうか。組織が損傷されると、細胞がいなくなりますが、細胞外マトリックス(基質)もなくなります。つまり、組織を再生させるということは、細胞だけでなく、細胞外マトリックスも再生させるということです。 この細胞外マトリックスを移植した細胞から産生されますが、ある期間が必要です。それまでのつなぎの役割を担体がします。いいかえると、細胞が3次元的に分化・増殖するための空間と時間を担体が補うわけです。この空間を利用した歯科の一つの再生が歯周疾患で広く用いられているGTR法です。 組織が再生するまでには、期間が必要ですね。もし、細胞だけ移植した場合には、宿主側からの細胞の侵入が起きます。したがって、担体は一定期間生体内に形状を維持する必要がありますが、担体が体内に永久に残っても、感染などの問題を引き起こす原因となります。 したがって、細胞から細胞外マトリックスが分泌されると共に、この担体が吸収されることが望まれます。なんとなく担体の役割をわかってもらえたでしょうか。

 今までに、私が歯の再生に応用していた担体は、マサチューセッツ州にあるアルバニー社からポリグリコール酸で作られた繊維状のメッシュタイプ(PGA)です。電顕写真からその形状がよくわかると思います。これは、合成高分子で作られています。 一方で、組織工学では天然高分子も良く使われています。目的とする組織によって、適切な担体が考えられています。そのなかで、コラーゲンで作られたスポンジの形状をもつ担体が皮膚や角膜にて良好な成果が報告されています。 住田先生はこのコラーゲンスポンジが歯の細胞にどのような影響を与えるかを検討しました(1)。われわれの用いたコラーゲンスポンジはニプロ社製で、ブタから抽出したI型コラーゲンとIII型コラーゲンを混ぜたものです。このコラーゲンスポンジの電顕写真とPGAの写真を比較するとその違いがよくわかります。 次回は、この二つの担体を比較した結果についてお話します。

画像クリックで拡大表示 (1) ポリグリコール酸で作られた担体の電顕写真 (Sumita et al. : Biomaterials 27;2006より引用)

画像クリックで拡大表示 (2) ブタコラーゲンから作られた担体の電顕写真 (Sumita et al. : Biomaterials 27;2006より引用)

引用文献

(1) Sumita Y, Honda MJ, Ohara T, et al. Performance of collagen sponge as a 3-D scaffold for tooth-tissue engineering. Biomaterials 27:3238-3248,2006

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