第6回 組織工学的手法による歯の再生-その2-

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前回までに細胞を担体に蒔いて移植するところまでお話しました。今回は、結果です。

歯胚細胞を蒔いた担体をヌードラットの腹部大網に包んだ後、20週にて移植した担体をラットのお腹から取り出しました。担体を包んだ大網をほどくようにしてはがすと、白く丸い形をした物体を見つけることができました。 大きさは約6−8mぐらいです(写真1)。移植する前の担体の大きさが約10mmでしたから(写真2)、少しだけ、大きさが小さくなっていました。とりだした組織を触ると硬く、何らかの硬組織ができていることが予感できます。

(写真1)クリックで拡大します 移植20週で取り出した再生組織の肉眼的観察

(写真2)クリックで拡大します 移植前の細胞の担体

しかし、肉眼的にはどんな組織が再生しているのかわかりませんので、組織切片を作ります。その過程を少しお話します。 まずは、組織が変質しないように固定という作業をします。固定は、抗原性の維持と形態の保持を目的としています。次に脱灰という操作です。石灰化度が低い組織には不要ですが、骨や歯の組織のように、石灰化度が高いと薄切することができませんので、EDTA溶液で2−4週間脱灰しなければいけません。かなりの期間待ちます。 脱灰が終わると包埋です。均一な厚さの薄切片を得るために、この試料をパラフィンにて包埋します。このように、試料を取り出した後、ひとつの組織を観察するだけでも、多くの行程を経なければ結果はわかりません。 包埋した試料が固まったら、切片を作る過程に入ります。通常は、面出しして予備観察してから薄切です。一般の染色で5μm前後が標準的な厚さです。 薄切するとやっと染色です。染色とは組織の成り立ちを観察する目的で行われ、ヘマトキシリンとエオジンによる重染色は単純ですが、情報量の最も多い染色法です。 ヘマトキシリンは、核を選択的に染め、染めた直後は赤紫色に見えますが、水洗いすると青紫色に変わっていきます。エオジン液は他の組織成分をいろいろな濃さの紅色に染まります。ヘマトキシリンーエオジン染色では、骨や象牙質は淡紅色に、エナメル質は濃い赤紫色に染まります。歯の組織は特徴がありますので、この染色だけで多くのことが観察できます。高倍にすると、エナメル芽細胞、象牙芽細胞、象牙細管やエナメル小柱までも観察することができます。

(写真3)クリックで拡大します 移植20週のヘマトキシリンーエオジン染色写真

 20週後に取り出した組織をヘマトキシリンーエオジンで染色して観察しました(写真3)。詳細な結果の解説はは次回お話します。

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