第10回 成功への階段

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歯科衛生士コラム 第10回「成功への階段」 田樽 ハイジ(仮名) 衛生士

 普段は、3件の開業医でフリーランスとして診療に携わっている私だが、いつの頃か本の執筆やセミナーの仕事などが増え、今や診療外の仕事はライフスタイルの一部になっている。

 対外的な仕事が増えるにつれ、若い歯科衛生士から「どうやったら田樽さんみたいになれるのですか?」とか「歯科衛生士として成功するにはどうすればいいのですか?」という類の質問を受けることが多くなった。

 今現在、私が成功しているかどうかどうかは別として、若かりし頃の私も、書籍に登場するようなカリスマ歯科衛生士を見ては「この人みたいになるにはどうすればいいのだろう?」と考えていた。普段、ろくに勉強もしない上、日常の診療さえままならないのに、表舞台にたって注目されることに憧れを抱いていたのだ。今、その頃の私に会えるのなら「あれこれ言う前に、まずは勉強しなさい」と言いたい。

 実を言うと私は、生来の勉強嫌いである。子どもの頃から、科学の実験や図画工作の作品作りは得意だったが、暗記や計算の分野はどうも好きになれなかったし、暗記ものが多い歯科衛生士学校では、言ってみればほとんどの科目が苦手分野だった。退屈な授業では落書きに専念し、試験勉強は一夜漬け・・そんな私が国家試験に合格できたのは奇跡的なことだったのかもしれない。

 歯科衛生士になった今も、指導用の媒体作りや臨床に即したことは得意分野であるが、統計や論文になると頭を抱えてしまい、学会発表の秋が近づき勉強を強いられると、軽ウツになるほど、正真正銘の勉強嫌いである。

 贅沢な話しではあるが、今だかつて学会発表や本の執筆などの仕事で、自ら進んで立候補したことは一度もない。幸か不幸か有名な歯科医院に就職したことで、タイミングよくいろいろな仕事が転がり込んできたのだ。それらをコツコツとこなしてきたに過ぎないが、かと言って、テキトーにやってきたわけでもない。

 発表や本の執筆は、完璧を要求されるため、完成に至るまでには相当の勉強と準備が必要だ。私はその期待に答えるために、それなりの努力をしてきた。課題を与えられると、診療で疲れきった身体にムチ打って、暗くなった院内で文献を片手に残業し、それを持ち帰り、深夜までパソコンにむかう。そんな仕事漬けの毎日を何シーズンも送ってきた。

 人は、私の仕事を見て華やかだというが、表面に見える華やかさとは裏腹に、実際はそのほとんどが地道な作業の繰り返しである。その積み重ねの延長上に華やかな舞台があるのだ。

 どの職種であっても、チャンスをものにするためには、キャラクターや人脈、運やタイミングなどの要素が左右するのも事実だが、最終的には本人の努力なくして成功は勝ち取れないと思っている。 「こんな風になりたい」というビジョンがあるのなら、まずはその目標に向かって、勉強することである。いつかその努力が報われる時がくるはずだ。

 秋も深まり、勉強をせざるを得ない季節が到来した。  偉そうなことを言ってはみたが、人間の本質というのは、そう簡単に変わるものではなく、年を重ねても勉強はやはり好きにはなれない。それどころか、年を重ねるたびに益々おっくうになってきた。しかし、私の思い描くビジョンを実現させるために、息切れをしながらも成功への階段を一歩一歩昇っていくつもりだ。

 私の立っている階段の先に成功があるかどうかは予測不可能だが、ひとつひとつの仕事が自分を高めるチャンスだと信じ、老体にムチを打ってゆっくり昇っていくしかない。なぜなら、それが私に与えられた使命だと思うからだ。

歯科衛生士 田樽 ハイジ

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