【カンボジア発】世界は今、どこへ向かうのか?著しい経済発展の陰で、歯科医療現場の道は未だ険しい

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グローバル化が進むことによって、歯科医療の情報格差はもはや過去のものとなった。世界は、今後、どこに向かうのか?各国の最前線レポートをお送りする。 ポル・ポト政権の大虐殺により、一時28名にまで歯科医師数が激減したカンボジア。経済復興は目覚ましいが、医療現場の課題は山積している。

今も残る深い爪痕 医療・教育現場の再建へ

高層ビルの建設ラッシュ、道路には日本以上に高級車が走行する。ここはカンボジアの首都プノンペン。急速に経済発展するカンボジアは、一方で街から少し離れれば、私が医療支援活動を始めた19年前とまったく変わらない貧困が続いている。

カンボジアは東南アジアに位置する人口約1,600万人、日本のほぼ半分の面積の王国だ。1970年から始まった内戦による国土の疲弊、そして1975年からのポル・ポト派による独裁政治、クメール・ルージュ。知識層である医師、教師らの大半は虐殺された。約30年間の内戦で、私が初めて訪れたときは、世界最貧困国、医療レベル最低国だった。

現在では経済発展は著しいものの、一度崩壊した医療、教育現場はまだまだ遅れている。確かに、街の中心部では免許を持った医師がかなり増えた。しかし、病院は今でも患者さんや家族で溢れかえっている。お金がないために治療を受けられない人が多いのも変わらない。 医療保険制度がないカンボジアでは、CT撮影も自費だ。加えて、1カ月の給与ほどする高額な撮影費では、ほとんどの患者さんは撮影を拒否してしまう。画質の悪い単純X線写真と超音波検査のみの診断で、術前の診断が困難なことも多々あった。ほとんど経験と勘に頼る術前診断、手術を余儀なくされる。やはり医療現場の貧しさは相変わらずだ。

ポル・ポト政権の大虐殺により800名ほどいた歯科医師は、カンボジア全土で28名に激減した。このように崩壊した歯科医療も現在では、歯科大学も国立1校、私立3校(軍大学除く)、歯科医師数約700名にまで回復している。カンボジアの歯科大学は7年制で、歯科医師国家試験も3年前から開始された。附属クリニック(大学附属病院はない)での患者診察実習は5年生から。しかし、大学教育のカリキュラムはまだまだ確立されていないのが実態だ。カンボジアのような医療後進国では、大部分の歯学生は一般歯科医を目指すため、医科と同様、専門医は非常に少ない。

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岩田 雅裕
  • フリーランス口腔外科医
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