第4回 半導体レーザーの臨床応用

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(写真を拡大する) [図1]820nm、半導体レーザー

  現在、レーザー機器は全体的に小型化する傾向にある。もちろん、チェアサイドで使うことからスペースをとらずに小さいほうが使いやすい。また、移動の際も楽といえよう。その点で優位性を発揮するレーザーと言えるのが、小型の代表「半導体レーザー」である。今回はこの半導体レーザーについて述べたい。

 半導体レーザーは、1962年にNathanらによって開発された。初期のものは短波系であったが、後にシリカ系ファイバーの開発により、長波系のGaIn ASP / In P系のものが開発され、幅広く応用されるようになった。特に光ファイバー通信に用いられていることはその代表格と言えよう。

 さらに近年では小型化されただけでなく、ファイバー自体が導光できるように改良され、多関節式により照射部位に導く必要がなくなったため、応用範囲が広く口腔内にファイバーを挿入しやすいのが特長である。開発当初は出力も充分でない傾向があったが、現在では高出力で効率の良い高性能のレーザー機器が販売されるようになり、さまざまな症例に適応できるようになった。

 半導体レーザーの基本構造は、Pn接合のダイオードからなっており、レーザーダイオード(LD)と呼ばれる接合部に電流を流すことでレーザー光を発振させている。また、素子はGaAlAsとInGaAlAsの2種、波長も810nmと980nmと2種有り、波長980nmでは水を注水しながら照射できるので、耐熱作用、侵襲作用の軽減という意味からも最近注目されている。

 実際の治療(領域)は、硬組織にも使えないわけではないが、基本的には軟組織に威力を発揮する。とくに顎関節症・ホワイトニングに対して用いられることが多いが、低出力領域を利用して、末梢神経麻痺の賦活を図る際にも用いられている。以下にその概要について述べる。

(写真を拡大する) [図2]漂白用のチップを取り付ける

(写真を拡大する) [図3]マスキングを行なう  

(写真を拡大する) [図4]半導体レーザーを照射する。このチップは3〜4歯をカバーするので便利。

(写真を拡大する) [図5]術前  

(写真を拡大する) [図6]術後。3回の来院で漂白がされた。

 半導体レーザーは、第1回で取り上げたNd:YAGレーザーと似ている点も多いが、組織に対する浸透性がNd:YAGレーザーよりもいくらか深いため、止血効果があることから軟組織の切開に用いると良い。

(写真を拡大する) [図7]下顎右側67ペリインプランタイティス

(写真を拡大する) [図8]980nmの半導体レーザー照射

(写真を拡大する) [図9]排膿が促される 

(写真を拡大する) [図10]潜像後ドラッグデリバリー

 また、Nd:YAGレーザーと異なり金属に吸収されないという特長から、インプラントや補綴物などの軟組織周囲の金属に使っても変形を起こさずに比較的安全に使用できる。

(写真を拡大する) [図11]歯肉腫脹部位に820nmの半導体レーザー照射(麻酔下)

(写真を拡大する) [図12]照射直後

(写真を拡大する) [図13]2週目(歯肉の改善が著しい)  

(写真を拡大する) [表1]象牙質知覚過敏症への低出力半導体レーザーの照射の影響(出力により効果が違う)

  顎関節症などにおける疼痛緩和にも非常に有効であることは前述したが、鎮痛にレーザーを使うという方法の研究は半導体レーザーから始まっていることからも、鎮痛効果は非常に高いといえる。これらは無麻酔でもよいが、麻酔下で使用したほうがと早く治癒が望める。さらに浸透性が高いことから根管内、しいては象牙細管内にエネルギーが入りやすいため、根管治療時の殺菌にもよく用いられる。

(写真を拡大する) [図14]歯肉にメラニン色素沈着が認められる

(写真を拡大する) [図15]半導体レーザー照射直後(無麻酔にて照射)

(写真を拡大する) [図16]3回の照射でメラニン色素は除去された  

 またホワイトニングについても、小型化されている分、効率が良い。メラニン色素沈着除去に対しても応用可能であるが、最近の使用傾向としては少なくなってきていると聞く。

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