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2013/10/24

第2回「次世代のための輝かしい日本の歯科界2」チタンの生物学的エイジングの発見

第1回コラムで、日本歯科界における成長戦略の必要性を論じた。前回のコラムから1ヶ月、日本の歯科医師の知人から聞く話の多くは、歯科界、歯科医師の窮状をやるせなく語るものがほとんどだった。「歯科医師の診療報酬は96年をピークに下がりつづけ、2004年では20年前と同等になった」「歯科医師の5人に1人はいわゆるワーキングプアに該当」(医療経済実態調査)「歯科医院、1日に1件廃業」(東京歯科保険医協会)などである。2006年の時点で、日本での歯科医院の数が6万7000箇所。これはコンビニの店舗数4万件を圧倒し、また内科を標榜する病院の数6万3000件をも上回る。「薄利多売」でしかやっていけないという声も多いらしい。これが医療を形容する言葉だろうか。こうした状況の打開のために、86年から行われている歯科医師削減も1つの有効策かもしれない。98年にはさらに10%の歯科医師の供給削減が提言されたが、大学経営が成立しなくなることを理由に、歯学部の定員削減は二の足を踏んでいるのが現状である。

今年上半期、インプラント医療では重要な発見があった。チタンの生物学的エイジング(老化)である。歯科、整形外科で用いられるインプラントは、チタンまたはチタン合金でできているが、それらの表面が持つ生物学的能力は、時間とともに減少するというものである。つまり、図1に示すように、チタンは製造後1ヶ月経過すると、その表面が骨と結合する能力は約半分に減少し、その後も減少を続ける 。一連の研究成果は、生体材料一般に関する重要な発見として、歯科やインプラントの専門科学雑誌だけでなく、複数の著名な科学誌にも掲載された。これまでチタンの骨結合能力は、表面の形状、化学組成、そして物理特性によって評価されてきたが、新たな要素として「時間」が加わったのである(図2)。時間の経過による生物学的能力の変化は、チタンだけでなく、生体材料全体においても初の発見となった。

図1

図1(クリックで拡大表示)

図2

図2(クリックで拡大表示)

この発見は、こうした科学的インパクトに加えて、特に臨床面で3つの大きな問題を露呈した。 1) インプラントは患者に使用される時点で、生物学的老化の途中または完了した状態にあり、最高の状態で用いられていないと考えられる。 2) ドクターにとって、インプラント製品の製造年月日を知ることは極めて困難であるため、チタン表面がどの程度老化しているかがわからない。 3)そのためたとえ同じブランドであっても、製品によって骨との結合能力に差が生じる可能性がある。

これらは、デンタルインプラント、整形外科インプラントに共通する問題である。 老化の原理については今後のコラムで述べるつもりだが、現時点では有効な予防策がない。またインプラント製品の製造、流通、販売過程の現状を考えると、生物学的老化が起こる前に製品をドクターに届けることはほぼ不可能に近い。また今後、状況が改善したとしても、第1回で述べたように、日本のインプラント市場における日本メーカーのシェアは極めて低く、海外ブランド製品を製造後1ヶ月以内に入手できる可能性はほぼ皆無である。

チタンの生物学的エイジングの発見は、一見マイナスの発見でしかないように思われる。しかしこれは日本の歯科業界に限らず、チタンを扱う世界中のすべての医療が直面する問題だ。この不都合な事実を受け入れ、分析、理解し、いち早く対策法を開発、導入、確立すれば、ピンチは一転してチャンスとなる。 インプラント医療の後進国である日本が、一転して先進国になる可能性も十分ある。 起死回生の転換点となりうるという認識を持つことが、重要なのである。

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