第3回 歯科衛生士の食育・・・口腔機能はハード面2

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歯科衛生士コラム 第3回 歯科衛生士の食育・・・口腔機能はハード面2 宮坂乙美  歯科衛生士

診療室に子どもちゃんが来院した時に、歯科衛生士は (1) いつの時点から、 (2) どこを診るべきでしょうか? あなたなら、どう答えますか?

私も、口腔機能を勉強する前は、カルテを持って診療室の扉を開け、無意識に「○○ちゃ〜ん」と呼びかけ、無意識にエプロンをつけ、子どもの後ろや斜め横から「変わった事はな〜い?」と問いかけ、おもむろに口腔内を診ていたように思います。

今の私は、 (1) いつの時点から、→待合室にいる時から (2) どこを診るべきでしょうか?→座っている時の姿勢、唇の状態、舌の状態 と答えます。 なぜでしょう?

それは姿勢が悪かったり、お口がしゃべっているわけでもないのに、ポカ〜ンと開いていたり、舌が何かの拍子にチロチロ突出している場合は、指導より精密な診査や治療が必要になってくるからです。

診療台に座ると、子どもも緊張するので多少お行儀よくなります。が!待合室では割とリラックスして、日常の様子を垣間見る事ができます。だから私も観察するときには、子どもにわからないように、さながら市原悦子の「家政婦は見た!」のごとく診ています。私はこれを、「院内ストーカー」と呼んでいます。(笑)

この待合室での「院内ストーカー」観察のフィルターに引っかかった子どもの養育者には、お家での様子を聞くと共に、歯列も確認します。開口癖のある子は、上顎前突である事が、割と多いからです。

前回、食事中の姿勢のお話しをしましたが、ふだんの姿勢も口腔機能に影響を与えています。背筋が伸びていないと骨盤が下がり、それに合わせて胸骨も下がります。そのバランスをとろうとして、頭部は前方に出て、さらに反るようなかたちになります。そうなると、口を閉じる事も、さらにし辛くなるので、「ポカ〜ン」と開いたままになります。開口癖のはじまりです。

開口癖のある子どもの中には、摂食嚥下時にも口腔機能の異常が認められる事が多いです。

1)

1)の男の子は小学校1年生です。摂食開始時の写真です。母親から、1年生にもなるのに流涎があるとの訴えでした。待合室では、猫背で開口癖、舌の突出が認められました。

2)

2)の男の子は中学1年生の子です。動画の一部を写真撮影しました。咀嚼中の写真です。母親が、上顎前突を心配しての来院です。待合室の様子は、猫背で開口癖が認められました。

3)

3)の女の子は小学校4年生です。 嚥下の瞬間の写真です。 母親が、やはり上顎前突を気にしておられ来院しました。 この子も、待合室では姿勢が悪く、開口癖が認められました。               

私は口腔機能に不全な状態が見られる子の場合は、治療開始時に食べ物を持参していただいて、摂食嚥下時の動画を撮影するようにしています。 では、このコラムを読んでくださっているDHの皆さまに質問です!

  Q.

この1)・2)・3)3人の患児の咀嚼時、嚥下時におかしいなと思う事は何ですか? いかがですか? 何かおかしいな…と感じるには、正常な状態を把握していなければ、異常は発見できません。

答えをお話しする前に正常な摂食・咀嚼・嚥下を考えてみましょう。 <摂食>口唇が食べ物・コップ等を認識するセンサーになっている <咀嚼>前歯で咬断→小臼歯部で大まかに食べ物をわける→大臼歯部で粉砕(口唇は閉鎖) <嚥下>舌尖は上顎1・1口蓋乳頭部やや後方のスポットにある                  口唇は軽く閉鎖                  舌 中央部は口蓋に吸いつけられ舌根部が押し上げられる                  臼歯は咬合                  口輪筋・オトガイ筋の収縮は認められない                  顔の揺れ等も認められない これらの事を踏まえてもう一度、先ほどの3人の写真を見て回答を考えてみましょう。

  A.

1)の場合は、摂食時に口唇より先に舌がコップを迎えに行っていますね。舌の動きに不全があることがわかります。 2)の場合は咀嚼中に口唇を閉じないでいるので、食べ物が丸見えですね。実際の撮影時は、“くちゃくちゃ”音も聞こえました。普段から口唇閉鎖力がない、口唇の機能不全があることがわかります。 3)の場合は口唇にギュッと力を入れ下唇を巻き込みながら嚥下する瞬間です。口輪筋の不必要な緊張があると言う事です。 動画で見るべきものを、写真で見ていただいたので、ちょっとわかりづらかったでしょうか…。このように、実際に臨床の場で子どもに飲食をしてもらうと、口腔機能の把握の第一歩になり、食育への第一歩にもなります。 次回は、咀嚼についてもう少しお話ししたいと思います。お楽しみに…。

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