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2013/10/24

第22回 コラムを再び開始します。

長い間ご無沙汰しておりました。第21回のコラムを執筆してから,約2年も経過してしまいました。何事も一度,止まってしまうとなかなか戻るきっかけが見つからずに,始められないものですね。幼いころ,習い事を途中で行かなくなると,そのままやめてしまっていました。習字,そろばん,,,大人になって大学院に入り,国際学会の発表の前に,英会話教室に通ったのですが,学会が終わると,行かなくなりました。皆さんも同じような経験はおありになりますでしょうか?復活できない理由を勝手に自分で都合よく考えてしまいます。
この2年の間に,大きなことが起きました。昨年のアイスランドの噴火,そして,3.11東北の大震災,最近では,台風の被害。関東に住んでいる先生方で,幼いお子さんをお持ちの方は,いろいろなことを考えていらっしゃるのではないでしょうか。私もこの2年の間に家族が増えまして,二人のまだ幼い娘がいます。放射能の汚染については,風評被害は良くないですが,事実が知りたいと思っています。基準値を超えていないからと言って,本当に安全なのでしょうか。私達は自分で判断して,考えていかざるを得ません。
そして,新聞やテレビの報道において時々気になることがあります。私が分かる範囲ではありますが,過剰な報道が見られることがあります。このコラムでは,私の視点から最新の情報の,その事実をお伝えできればと思っています。これは,私がコラムを再開したいと思ったきっかけの一つになっています。

私は歯学部の解剖学教室という基礎の講座に属し,教育と研究が主な仕事です。したがって,このコラムでは私の研究が中心となっていましたが,これからは,ホットな話題も取り上げて,再生医療の現状をお伝えできればと思っています。2年間のブランクがありますので,少し昔の話題も出てくることもありますがご容赦ください。

学会会場からの風景
写真1.
学会会場からの風景

本年4月にニューヨークに行ってきました。ニューヨークにあるコロンビア大学の主催で,第一回の歯科・頭頸部幹細胞学会(First International Conference on Dental&Craniofacial Stem Cells)にて発表(ポスター)の機会を得たからです。
この学会で私が一番感じたことは,日本だけでは無くて,米国,欧州各国の歯科医師は,再生医療や幹細胞に大きな興味を持っており,真剣に幹細胞を使った新しい技術開発を考えていると思いました。会議中の議論も白熱していました。その中で,特に気にとめたことは,間葉系幹細胞が免疫抑制効果を持つという新しい報告です。

建築中のワールドトレードセンター
写真2.
建築中のワールドトレードセンター
2011年4月末現在

今までは,間葉系幹細胞は骨芽細胞や軟骨芽細胞や脂肪細胞などに分化する能力を持ち,骨や軟骨再生のための細胞源として考えられていました。つまり,組織の中に欠損が生じた際に,その部位に,この間葉系幹細胞を移植すると,この移植した細胞が組織を作り,欠損した部位を修復するという働きが主でした。その間葉系幹細胞に,もう一つの新しい機能として,制御性T細胞やTh17細胞の増殖を抑制する働きも持っているということです。
制御性T細胞は胸腺で産生され,末梢において,自己反応性T細胞を抑制することで,免疫自己寛容を維持する役目を持っています。つまり,この制御性T細胞が体内から無くなると,自己免疫疾患が発症することが考えられます。また,I型糖尿病患者や関節リウマチ患者では,制御性T細胞の抑制能力が低下していることが報告されています。
一方,TH17細胞は免疫システムの中心的役割を果たすT細胞の1種と考えられ,インターロイキン17を産生することが知られています。細菌や真菌に対する感染防御の役目をしていますが,自己免疫疾患である慢性関節リウマチやクローン病などにも深く関わっていることが分かっています。したがって,Th17細胞を人為的に制御できれば自己免疫疾患の治療に効果的であるとも考えられています。

将来,間葉系幹細胞は,これらの自己免疫疾患や感染・炎症などの治療に用いられることになるかもしれません。これは歯科にとってとても大きなことだと思っています。なぜなら,歯に由来する間葉系幹細胞も見つかっているからです。永久歯の歯髄,乳歯の歯髄,歯根膜や歯小嚢組織にも間葉系幹細胞が存在していることが明らかになっています。我々の研究室でもこれらの歯に由来する組織から分離した間葉系幹細胞の特性を解析しています。歯に由来する間葉系幹細胞は骨髄から発見された間葉系幹細胞と似たような特性を持っています。つまり,我々が専門に扱う組織・器官である歯が,間葉系幹細胞の貯蔵庫になろうとしています。従来,歯は咀嚼や審美にとって重要でしたが,将来は病気の治療に使えることになるかもしれないのです。

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