column - Article
コラム - 記事
歯科医師の強みを活かしてキャリアチェンジ! 歯科専門弁護士・小畑 真先生が語るチャレンジストーリー

はじめに
Dentwave編集部:小畑先生のキャリアを含め、簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか?
小畑先生:弁護士法人小畑法律事務所代表弁護士の小畑真です。1998年に北海道大学歯学部を卒業後、札幌の日之出歯科真駒内診療所に勤務しました。
その後、北大の歯科麻酔科で全身管理の研修を行い、2003年からは社会人大学院、歯科麻酔科で研究に従事。2007年に北大の法科大学院へ進学し、2010年に司法試験合格、2012年に弁護士登録しました。
現在は札幌・東京・横浜に法律事務所を開設し、日本唯一、歯科に特化した弁護士として歯科医師向けの法律サービスを提供しています。
Dentwave編集部:ありがとうございます。現在は法律事務所でお仕事に従事されているかと思いますが、主な業務内容についてお伺いできますでしょうか?
小畑先生:主に歯科医師の先生方からの法律相談に対応しています。電話やメール、Zoom、対面での相談のほか、代理人としての対応、医療裁判、講演、執筆活動、学生教育も行っています。歯科業界に特化した法務支援が主な業務です。
基本的には、歯科業界に特化した形で色々な活動をさせていただいております。
歯科医師としてのキャリアについて
Dentwave編集部:歯科医師としてのキャリアをスタートされた時、当時の目標やビジョンはどんなものだったのでしょうか?
小畑先生:そうですね。卒業後の進路として大学に残るか、勤務医になるかの選択肢がありましたが、歯科医師免許を取ったのだから、臨床をしっかりと行いたいと考えました。
そして、1998年当時も、日本は高齢化社会が進行しており、今後は全身を診ることができる歯科医師が求められてくると考えました。そのため、一般診療だけではなく、全身管理の力を身につけたいと考えました。
Dentwave編集部:北海道大学で歯学部を卒業後は、どのような診療所で経験を積まれましたか?
小畑先生:勤務した日之出歯科真駒内診療所は、ベースは一般診療を行っているのですが、全国的にも珍しい入院施設のある歯科診療所でした。訪問診療はとても重要ですが、訪問で行うことができることは限られていますし、安心安全に歯科治療を提供することが難しい場面もあります。こちらの診療所は、そのような患者さんに入院していただき、集中的に歯科治療を行い、退院後は訪問でフォローするという仕組みで診療を行っていました。また、診療を行いながら、大学に研修に行き、研究を行う環境も整っていたので、大変充実した時間になりました。

キャリアチェンジのきっかけ
Dentwave編集部:歯科医師のキャリアを歩んでいる中で、法学の道へ進むことを決意したきっかけは何だったのでしょうか?
小畑先生:2000年頃、北海道にある市立札幌病院で北大の口腔外科の歯科医師が救命救急センターで研修をしていたことが「医師法違反」として問題視され、刑事事件に発展しました。
これは、歯科医師が医科の知識を学ぶための研修でありながら、法制度との乖離によって違法と判断されたケースです。
この事件をきっかけに、歯科業界と法制度をつなぐ役割が必要だと感じ、弁護士の道を志しました。当時は、歯科医師で弁護士を目指す人はほぼおらず、自分がその役割を担おうと決意しました。
Dentwave編集部:それは大きな転機ですね。法科大学院に進学を決めた際の周囲の反応はいかがでしたか?
小畑先生:意外にも肯定的な意見が多かったです。ただし、診療所でも重要なポジションを担っていましたので、すぐに辞めるわけにはいかなかったのもありますし、自分も中途半端なことはしたくなかったので、法科大学院入学後2年間は休学し、その間も診療・研究・学会発表・論文執筆・引き継ぎ業務などを続けました。その後、非常勤として診療を継続しながらロースクールに通いました。
弁護士としてのキャリアと歯科医師との関連性
Dentwave編集部:診療と学びの両立は大変だったと思いますが、実際に歯科医師としての経験が弁護士としてどのように役立っていますか?
小畑先生:歯科医師としての基本的なスタンスは、患者さんの悩みをしっかりと聞き、問題解決に向けて適切なアプローチを行うことです。このスタンスは弁護士としての業務にも通じており、クライアントの相談に対しても同様に適切な助言と解決策を提供しています。特に、歯科業界に特化して活動しているため、専門用語や現場の実情を熟知していて、共通の言語で話ができるのは、お互いにとってストレスが少なく、歯科医師のクライアントとスムーズにコミュニケーションを取ることができています。

歯科医師のキャリアに悩む読者へのアドバイス
Dentwave編集部:歯科医師としてキャリアの選択肢に悩む方々へ、キャリアの可能性を広げるために大切なことは何でしょうか?
小畑先生:キャリアを広げる上で最も大切なのは、まず目の前の仕事に全力を尽くすことです。それが基礎となり、新しい可能性を見つける土台となります。また、歯科業界は狭いですから、異業種の考え方や経験に触れて視野を広げることも重要です。日本では失敗を恐れる風潮がありますが、挑戦そのものが成功の一歩です。リスクを恐れずに、新しいことに挑戦してほしいと思います。
今後の展望とビジョン
Dentwave編集部:今後どのような活動に注力していきたいと考えていますか?
小畑先生:私が目指すのは、歯科業界全体の向上と法務の予防意識の向上です。歯科業界と国をつなぐ役割を果たし、業界の底上げに貢献したいと考えています。また、法律問題を未然に防ぐという観点から、予防を前提とした法務支援を広めていきたいです。さらに、大学での講義を通じて、次世代の歯科医師たちに法的知識の大切さを伝えていくことも続けていくつもりです。

最後に
Dentwave編集部:これからの歯科医療業界における変化や、歯科医師としてどのようにキャリアを築いていくべきかについて、読者に向けたメッセージをお願いします。
小畑先生:まずは、歯科医師としてのベースをしっかりと築くことだと思います。どんな道に進むにしても、基盤となるのは臨床経験です。臨床を進めていく中で、色々な思いが湧いてくると思います。人生の選択や転換の中で求められるのは、自分の道を切り開く勇気と視野の広さです。多様な視点を持ち、様々な価値観に触れることで、新しい可能性を見つけ出してもらえたらいいかなと思います。
編集部より
小畑先生のキャリアチェンジのストーリーは、歯科医師としての経験を活かして新しい道を切り開く貴重な例です。新しい道を選ぶ際には、不安や疑問がつきものですが、小畑先生が語ったように「全力を尽くし、挑戦を恐れないこと」が重要です。
これからキャリアを築く方々にとっての大きな励ましとなるでしょう。自分の可能性を広げるために、ぜひ新たな一歩を踏み出してみてください。
Related Article
関連記事
-
-
歯科衛生士に今、求められる“専門性”とは?|日本歯科衛生士会 吉田直美会長が語るキャリア戦略と制度改革
-
-
目指せワンランクアップ!保険でできる前歯4級窩洞修復の極意(菅原 佳広先生)
-
-
全国で活躍する臨床歯科麻酔科医が集まるスタディーグループ「CDAC」を徹底取材
-
-
【第118回 歯科医師国家試験合格率】
-
-
【臨床力を高める!根管治療の基礎から応用までの完全ガイドvol.4】根管治療成功の基盤を築く!髄室の拡大から根管長測定までの重要ポイント
-
-
【2025/2/23時点】国公立大学歯学部の出願状況
-
-
歯科衛生士としてできる小児と保護者のメンタルケアについて
-
-
小児歯科における低年齢児の診療アプローチ:泣かせないための工夫とは?