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歯科衛生士としてできる小児と保護者のメンタルケアについて

著:nishiyama /

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1.小児患者の不安を理解する

1-1.歯科治療への恐怖心

多くの小児は歯科治療に対して恐怖心を抱いています。これは、痛みに対する恐れや未知の環境に対する不安からくるものです。歯科衛生士は、子どもの視点に立ち、何が怖いのかを理解することが重要です。

1-2.「怖い」ものがなんなのかを詳しく聞き取る

小児が怖いと思っているものは様々です。

・音

・使い方がよくわからないもの(器具など)

・歯科医療従事者

・白衣

・空間

怖いものを1つ知ることができれば「じゃあこれは怖くない!大丈夫だよね」と別のものを得意にすることができます。

例えば「超音波スケーラーは怖くても、コントラは使える」など特定のものを使うことが難しくても、ある特定のものを使うことができれば、

「コントラは使えたから、きっと超音波スケーラーも大丈夫!少しずつ練習してみよう」

と何か得意なことを見つけてあげて、成功体験を増やしてあげることが大切です。

2.コミュニケーションの重要性

小児患者とのコミュニケーションは、治療の成功において不可欠です。歯科衛生士は、小児が安心して話せる環境を提供し、彼らの気持ちを聞くことで信頼関係を築きます。

例えば、小児の好きなゲームやアニメなど、好きなものを聞き出して楽しい話を交えながら、少しずつ治療器具が触れるよう信頼関係を築いていきましょう。

3.環境を整える

3-1.子どもが安心できる待合室の設計

待合室は、子どもがリラックスできるようにするために非常に重要です。色彩豊かで親しみやすい内装や、子ども向けの絵本やおもちゃを用意することで、子どもの不安を軽減します。

3-2.歯科治療室の雰囲気作り

診療室もまた、子どもが安心できるように工夫します。明るい色調の装飾や、歯科器具を目立たせない配置に加え、子ども向けの音楽を流すことで、緊張を和らげます。

しかし、子どもの性格によっては個室空間を好む子もいます。

もし個室がない歯科医院の場合は、アポの時間を調整したり、なるべく一目につかないチェアに通すなど工夫をしましょう。

4.コミュニケーションの工夫

4-1.優しい言葉遣いと説明

歯科医療従事者は、子どもに対して優しくわかりやすい言葉遣いで接するようにしましょう。

治療内容や手順を子どもが理解しやすい言葉で説明し、安心感を与えることが大切です。

4-2.視覚的な説明手法

歯科治療の流れや器具の使用方法を、絵や模型を使って視覚的に説明することは非常に大切です。人は何をされているか分からない状況に恐怖を覚えます。

視覚的に見せることが子どもの理解を助け、恐怖心を軽減します。

5.保護者の協力:家庭でも歯科医院での出来事を忘れないようにしてもらう

保護者の方には、家庭で歯科医院についてポジティブな話をしてもらうようにお伝えします。

「歯医者さんで歯を綺麗にしてもらってよかったね」

「これで美味しいご飯が食べられるね」など子どもが歯科治療を受けることのメリットを伝えることで、日々来院前から心の準備をさせます。

特に子どもは、保護者が喜ぶことは子どもも嬉しいのです。

保護者の方が歯科医院について楽しく話していると、子どもも自然と歯科医院を好きになります。

6.歯科衛生士が行うべきこと

6-1.子どもを自分のファンにする

まず第一に、子どもにファンになってもらいましょう。

「あの先生に会いたい」「あの先生に歯磨きをしてもらいたい」という気持ちにさせて、歯科医院のイメージをポジティブなものに変えます。

ファンにするためには、子どもの趣味を理解したり、子どもの声のトーンやテンションに合わせて会話をしたりして、会話の際の呼吸を心地よいものになるよう心がけましょう。

6-2.褒めて伸ばす

子どもが頑張れた日には、たくさん褒めて伸ばしましょう。

「ここに来たら褒めてもらえる」と子どもに思ってもらうことが大切です。

6-3.保護者へのメンタルケア

保護者の方には、今日この日に歯科医院に来院していただいたことへの感謝の気持ちを伝えましょう。

子どもの通院は、保護者の協力なしでは成り立ちません。

忙しい日々の中に、歯科医院の来院を選んでいただいたことへの感謝を伝えることが、普段頑張っている保護者へのメンタルケアとなります。

おわりに

歯科衛生士は、小児患者とその保護者に対して効果的なメンタルケアを提供することで、歯科治療の成功を支援する重要な役割を果たします。

子どもの恐怖心を理解し、保護者の不安を軽減することで、より良い治療環境を築くことができます。歯科衛生士は、コミュニケーション能力や心理学的知識を活用し、患者様とその家族に安心感を与える存在であり続けることが求められます。

Introduction

著者紹介

nishiyama

歯科大学歯科衛生士学科卒業後、小児患者や障害者の歯科診療体制や、歯科恐怖症患者について学ぶため歯科大学付属の専攻科へ進学し口腔保健学学士を取得。その後は小児歯科専門歯科医院にて勤務。歯科衛生士ライターは「歯科に苦手意識を持っている人が媒体を通して理解し、歯科を身近に感じることで歯医者に行ってみよう」という気持ちになることを後押ししたいという思いから学生時代に始めた。