介護保険部会:基本方針「在宅医療・介護の連携」に“歯科衛生士”等 追加明記

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6月21日、社会保障審議会介護保険部会がベルサール飯田橋ファーストで開催された。第7期(平成30年度~32年度)を目指しての基本指針、第6期(平成27度~29年度)を踏まえての議論を進め、“介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本指針(案)”についての確認が行われた。医科・介護の専門家ほか関係者から将来を見据えた意見・議論が続いた中、厚労省がまとめた案について遠藤久夫・座長の差配で委員全員から意見を聞き、確認をした。基本指針でも歯科に関係する項目があるが、文言として記されることは極めて少なく、従来の案と違う箇所もあった。 基本方針の「在宅医療の充実及び在宅医療・介護連携を図るための体制の整備」において、「今後、医療ニーズ及び介護ニーズを併せ持つ慢性疾患又は認知症等の高齢者の増加が見込まれる」として、「地域における在宅医療及び在宅介護の提供に必要な当該提供に携わる者、その他の関係者の連携を推進するための体制整備が重要」と指摘。そこで「医師、歯科医師、薬剤師、看護職員又はリハビリテーションの提供にあたる理学療法士、作業療法士、若しくは言語聴覚士、管理栄養士、歯科衛生士等の医療関係職種と社会福祉士、介護福祉士の連携が重要」と記され、看護職員、管理栄養士、歯科衛生士、社会福祉士は初めてその職種が明記された。 従来であれば“関係職種”“等”という言葉で表現されていたが、今回、明確に明記されたことでその意味合いが強くなったと理解されてくる。なお、“歯科医師”は、「地域包括ケアシステム構築のための支援に関する事項」の中で、「認知症対応の向上が更に必要となる。このために病院従事者、歯科医師、薬剤師、看護職員に対する認知症対応力向上のための研修の実施」と明記されている。 今までの基本指針では、“歯科”文言が出てくるのは資料としての「市町村が地域支援事業を行うにあたり、都道府県からの情報提供や医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会等関係団体、医療機関等の関係者から地域リハビリテーションの枠組等を活用した人的支援等の自立支援・介護予防の推進に必要な協力を得やすくするための制度的な手当てを行うことが適当である」だけであり、歯科的見解はなく、議論に歯科介入は不必要という認識を与えていた。 この介護保険部会には、以前から指摘しているように委員に日歯推薦の歯科医師がいない。こうした中で、介護保険に関しての議論が行われていることに疑問があり、委員に日歯推薦委員の任命を視野に水面下で動いているが、まだ具体的な成果は得ていない。当初は“歯科が介護に関与することは基本的にはない”という認識でスタートしたことは事実。時代が進むにつれて臨床からの報告に歯科的介入・介在が有効な成果を得ている等の報告が続いていることから、厚労省の判断、あるいは委員の提起から今まで明記されていなかった“歯科衛生士”などが明記されたと思われる。やはり歯科医師の委員が不在の部会・検討会等では、その議論の中で歯科の視点からの主張・提案・意見が出てこない可能性が高いのは当然で、心配・懸念は尽きないず、日歯の更なる活動に期待せざるを得ない。今回の議論の末の基本方針に、“歯科衛生士”が“管理栄養士”と同様に専門職名が明記されたことは、歯科的介入・介在は必要という認識になったと理解してよさそうだ。 様々な意見が出されたが、医療・介護関係者に関係すると思われるものを含めて一部を紹介する。「各地域において、医師会と行政がうまく連携するよう国から働きかけてほしい」「医療機能分化・連携の具体的なイメージを市町村が持てるよう、国・都道府県がデータを提供する等して支援すべき」があったが、総じて多かったのが「介護保険サービスは市区地町村が重要になってくるが、残念ながら地域のレベルについては相違が明らかにある。この点を踏まえ、都道府県はしっかり支援していくことを明確にしてほしい」「地区行政の間には問題意識の温度差があることを理解しておくべきである。介護保険のキーワードは“地域・地区”。都市部の人には地方の現状にまだまだ理解が足りない」と言うものであった。 【社会保障審議会介護保険部会構成員】部会長=遠藤久夫・学習院大学経済学部教授、部会長代理=岩村正彦・東京大学大学院法学政治学研究科教授、石本淳也・公益社団法人日本介護福祉士会会長、伊藤彰久・日本労働組合総連合会生活福祉局長、井上隆・日本経済団体連合会常務理事、石田路子・高齢社会をよくする女性の会理事、大西秀人・全国市長会介護保険対策特別委員会委員長(高松市長)、岡良廣・日本商工会議所社会保障専門委員会委員、久保芳信・UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長、黒岩祐治・全国知事会社会保障常任委員会委員(神奈川県知事)、小林剛・全国健康保険協会理事長、齋藤訓子・日本看護協会常任理事、斉藤秀樹・全国老人クラブ連合会常務理事、佐野雅宏・健康保険組合連合会副会長、鈴木邦彦・日本医師会常任理事、鈴木隆雄・桜美林大学老学研究科教授、鷲見よしみ・日本介護支援専門員協会会長(歯科医師)、武久洋三・日本慢性期医療協会会長、土居丈朗・慶大経済学部教授、栃本一三郎・上智大学総合人間科学部教授、馬袋秀男・民間介護事業推進委員会代表委員、花俣ふみ代・公益社団法人認知症の人と家族の会常任理事、東憲太郎・公益社団法人全国老人保健施設協会会長、藤原忠彦・全国町村会会長(長野県川上村長)、桝田和平、全国老人福祉施設協議会介護保険事業等経営委員会委員長。
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