植田日大歯学部教授「8020だけではダメ」 著書で”唾液の効用”を強調

カテゴリー
タグ
記事提供

© Dentwave.com

植田耕一郎・日本大学歯学部教授(摂食機能療法講座)が、書籍「長生きは"唾液"で決まる ストレッチで全身が健康になる」を、講談社+α新書(定価800円=税別)から刊行(7月22日付)した。著者は、日大歯学部、東京リハビリテーション病院(東京都墨田区)、新潟大学歯学部加齢者歯科学講座を経て現在に至っているが、障害者・高齢者歯科の専門家であり、豊富な臨床経験からの本書である。特に、唾液の重要性と口(クチ)ストレッチの効用を訴えているが、「噛み応えのあるものを食べましょう」「食後にきちんと歯を磨きましょう」と表現は使わないと明言するなど、従来の歯科医師が主張する内容とは違う面が特徴的である。 結論から言えば、「口のストレッチで唾液を出すことが重要」で、「固いものを食べているか、いないか」「どんな歯磨きをしているか」ということは大きく騒ぎ立てるような問題ではありません」と記している。 具体的内容については、「唾液が増えると虫歯にならない」「唾液が増えれば、糖尿病や動脈硬化ともさよなら」という小見出しで本文は続いている。日本歯科医師会、厚生労働省が平成元年にスローガン「8020運動」を掲げ、国民的運動をスタートしたが、このスローガンを掲げることは否定ないものの、これだけで事足りるわけではないと著者は主張している。"唾液の自浄作用"がキーポイントなどは、まさに現場の障害者歯科から得た結論ともいえそうだ。 さらには、広く医療の捉え方にも言及し、第一の医学「治療医学」、第二の医学「予防医学」、そして第三の医学として「リハビリテーション医学」が注目されていることを取り上げ、医学的意義や社会的な意味合いを説明している。第三の医学が、第一の医学と最も異なるのは、治療至上主義からの医学的アプローチだけでは、不十分だと指摘している。 "摂食機能"という視点から口腔歯科を臨床・研究してきた専門家からの改めての歯科界あるいは社会への啓発書の一面があるが、著者が問題視している内容は、"古くて新しい問題"もあり、興味深い内容になっている。 日本歯科医師会も、「生活を支える歯科医療」とする新しい理念を掲げ、国民に対しての啓発・事業活動を展開している。少子高齢化社会の到来とる。唾液の重要性は今までも、それぞれの専門家から学会等で指摘され、決して最先端の歯科医療ではないが、クローズアップされてきているのは事実。自身考案された、唾液滲出のための手軽な口ストレッチを紹介しているので参考にできる。 最後は、好きな作家・夏目漱石の作品からの唯一無二の存在であり続ける"自己本位"の生き方を紹介しながら、「高齢の患者さんからその人の生きざまを聞いたとき、死は人生の終点でなく、"頂点"であることを気づかされます」「"口"という何の変哲もないからだの一部を切り口に、"生きる"見つめていこうとしました」と著者の人生哲学を示している。著書を通して著者の人柄も滲み出ており、確かに今までとは違う歯科関係書かもしれない。
記事提供

© Dentwave.com

この記事を見ている人がよく見ている記事

新着ピックアップ