第6回 歯科用レーザーの発展とその臨床応用の広がり

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 回を重ねる毎に各種歯科用レーザー機器のお話をしてきましたが、今回は歯科用レーザーの発展とその臨床応用の広がりについて考えてみましょう。   まず、1975年頃から1985年の時期に、歯科用レーザーを基礎的な側面から研究してみようという試みがありました。そして、1985年頃から1995年頃がまさに臨床に導入された時期であり、現在に至っては各種の歯科用レーザー機器が普及してきた時期といえます。   現在、臨床の歯科医師の20%以上が歯科用レーザーを持っていると言われています。正確な数字は明らかではありませんが、40,000台以上の歯科用レーザー機器が臨床で使われていると聞きます。今まで述べてきたように、歯科用レーザーにはCO2、半導体、Nd:YAG、Er:YAGなどのさまざまな波長特性があり、それぞれの波長のレーザーに違ったアドバンテージがあります。そのようなことから、各種波長特性の歯科用レーザー機器を所有し、症例によって使い分けている先生が増えてきています。すなわち、これからはどの症例にどの波長のレーザーが適しているのかを見極め、臨床応用する時代になっていくでしょう。

[図1] 親友のローゼンバーグとWCLIにて。

[図2]WCLIにて表彰される。

 臨床の現場からは、「全然効かない」、「とても効く」と相反する声をよく聞きます。これは、前述のような適応症を見極めてきちんと臨床応用していない結果の現われだと思います。レーザー治療の潮流に乗り遅れないためには、まず臨床応用のどこに違いがあるのかをクリアし、基本的な臨床を心がけることです。歯科用レーザー機器は決して万能なものではなく、上手く臨床応用することではじめてその効果が適切に現れるものなのです。歯科用レーザーを用いても、歯科治療の流れは決して変わるものではないということを念頭におきましょう。例えば、歯周治療の場合、ブラッシング指導で始まる一連の流れは変わることはないということです。ブラッシング指導をせずにレーザーを使用しても、治療の効果はあまり現れません。

[図3]ジョウバノビッチとスタッフ

 残念ながら、レーザー治療は臨床先行型で発展してきました。基礎的な研究結果、データの蓄積よりも、臨床応用が先行してきたわけです。この弊害が、上記のような間違った臨床応用法を助長することになったのは否めません。近年のEBM(Evidence-Based Medicine)の風潮からも逸脱してきたともいえるでしょう。そのようなこともあって、今、基礎的研究が急がれています。レーザー治療をいわゆる“根拠のある治療”にしようというわけです。医科領域と違い、歯科におけるレーザー治療は保険治療で評価されていません。国民皆保険で歯科のレーザー治療が評価されるためには、EBMが必要なのです。そのためには、臨床の現場からの声、データも必要になってきます。EBMが確立されれば、おのずと各波長特性のレーザーはこういった症例が適応症になるといったメルクマールもできるでしょう。これが歯科におけるレーザー治療のあるべき姿と考えます。

 幸い今のところ、歯科用レーザー治療においては医療過誤の問題はあまり起きていません。レーザーは思ったほどリスクがあるものではないようです。それは、MI(Minimal Intervention)の概念が叫ばれるようになって、保存領域でレーザーを使えるようになったことに起因しています。歯質を必要以上に削らないといったMIに則った保存領域へのレーザーの応用は、高出力を必要としません。それでも、適応法を間違うと医療過誤に発展してしまうことも考えられますので、基本的な応用法を厳守したいものです。

 レーザーは光であり、光そのものがわからないことが多いことは事実でありますし、多くの解明をしなくてはいけない事項がこの領域にはとても多いと思います。このようなことからも、今後さらなる臨床応用、基礎研究が行われ、またその効果が実証され、再現性のある治療ができるようにしなければならないでしょう。これまで6回にわたって各種の歯科用レーザー機器についてお話をして参りましたが、これからレーザーを臨床に導入しようとお考えの先生方のよきバイブルとなれば幸いです。

[図4〜8]  2004 Advanced Course at Tsuda Dental Office

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