第2回 歯科衛生士の食育・・・口腔機能はハード面

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歯科衛生士コラム 第2回 歯科衛生士の食育・・・口腔機能はハード面 宮坂乙美  歯科衛生士

前回、歯科衛生士がする必要のある食育活動のひとつは、「口腔機能をハード面と捉える」であるとお話ししました。では具体的に、どんな事を臨床・公衆衛生の場で指導すればよいのでしょう?

まず、口腔機能が正常にはたらく状態を作ってやるには、どうすればよいのかを考えてみましょう。 それには“食環境”がきちんとしている、という事が必要です。食環境を整えるキーワードは三つ。 一つ目は生活リズム 二つ目は食事中の習慣 三つ目は姿勢

一つ目のキーワードである「生活リズム」。そもそも“食べる”という行為は、視覚・臭覚・味覚(時には触覚も)を通じての働きかけが食欲を起こさせ、唾液や胃液の分泌も高めて準備を整えます。それが今、養育者の就労時間が長かったり、遅い時間までの娯楽やテレビの視聴に、子どもを付き合わせているという話をよく耳にします。

↓ 要するに、子どもを大人の生活習慣に巻き込んでいるのです。 ↓ こうなると、必然的に遅い時間の覚醒、遅い時間の就寝、となります。 ↓ とりあえず、睡眠時間は確保できていても 本来、人間が持ち合わせている体内時計と現実の時間のズレが大きくなります。 ↓ 体内時計にズレが出てくるという事は、時差ボケのような状態になります。 ↓

時差ボケの子どもに、食事だけ規則正しく与えようとしても食欲はわきません。ということは、積極的な食行動もおきません。当然、口腔機能が正常にはたらくのを期待するのも、難しい事と思われます。

ですから、私は来院した患児の養育者に、起床・就寝時間また夕食の時間などを尋ねて、改める必要のある場合には、生活リズムを整える事から指導をしています。

二つ目のキーワードは「食事中の習慣」。これは一つ目の「生活リズム」ともリンクしていますが、“食べる”事を貪欲にさせてあげる環境作りが大人の役目だと思うのです。中村歯科で以前、「食事中にお子さんを見ていて気になること」、「食事の時にテレビの視聴をしているか」、「食事はだれと摂っているか」というアンケート調査を行った事があります。

具体的な数字はここでは控えますが・・・「食事中に気になることがある子ども」は、口腔機能的な問題と生活習慣の問題がある、という結果が出ました。(口腔機能的な問題に関しては後の回でまたお話しします。)

食事中の生活習慣の問題として、今、テレビを視聴しながらの食事をしている家庭が多いと言われています。中村歯科のアンケートでも、「見る」という家庭の方が「見ない」という家庭を上回りました。また、子どもだけで食事を摂る「子食」=「孤食」が多い事も、問題になっています。では、「テレビを見ながらの食事」や「孤食」は何がいけないのでしょう?

テレビを見ながら食事をすると“食べる”という事に集中できない ↓ 口に運んでいる物に意識がいかない 食べるのに時間がかかる しっかり咬まない 姿勢が悪くなる 家族間のコミュニケーションが希薄になる ↓ 口腔機能が育たなくなる

口腔機能が悪く、MFTが必要と思われる患児には、生活問診表の記入を養育者にしてもらっていますが

Q.「食事中にテレビがついていますか?」   はい・いいえ

という質問にに対して、“はい”に○をつけている家庭には、その当日からやめるよう促し、親子での食事で子どもの口腔機能にも、関心を持ってもらうようにしています。

では最後のキーワード、「姿勢」について。背筋をピシッと伸ばして食べることが、お行儀も良いですし体にも良いのは当然ですね。昔、日本では高さの低いお膳で食事を摂り、座る姿勢は正座でした。着物で帯を締めていたため、背筋をピンっ!と伸ばす事もし易かったのかも知れません。今は洋風の生活になり、高いテーブルに椅子という食事スタイルになって、ベビーチェアに座らなくなった年齢の子どもは、大人用の椅子に座り足をブラブラさせています。この、足がきちんと床についていないで食事をする、ということが問題なのです。

足がきちんとついていないと・・・。 ↓ 骨盤が不安定になり ↓ 背骨・頭も不安定 ↓   ↓ 悪い姿勢で食べる=犬食い   咬合力にも影響

この姿勢に関しても、問診表で尋ねています。

Q.食事の時に足のうらはきちんと床についていますか?  はい・いいえ

“はい”に○をつけた養育者には、足を乗せる台を用意するよう指導しています。写真は5年前の我が家の娘たちですが、まだ足がつかないころでしたので、牛乳パックで作った足台とハローページで補っています。

この他にもホームセンターで売っている木製の花台や、100円均一などでも売っているお風呂の椅子など、安価で子どもが成長しても、すぐに買い替えられるものを例に出して指導すると、すぐに取り入れてもらいやすいですよね。

では、次はいよいよ口腔機能そのものに関してを食育に取り入れるには?それはまたつづきのお話で・・・。

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