第1回 デンタルアテンダント???

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 ホテルマン、ウエイトレス、エステティシャン、デパート店員、スーパーのレジ係に至るまで、一歩外に出ると様々なサービス業の人たちと遭遇する。彼らの対応次第で、同じ時間を気持ちよく過ごすこともできるし、逆にイライラさせられることもある。私は、日頃から自分が受けたサービスの経験を生かし、仕事にフィードバックするように努めているのだが、果たして自分は患者さんからどのように評価されているだろうか。

 私は、歯科医院での常勤を経て、現在フリーランスとして勤務している自由気ままな30代後半の独身歯科衛生士である。昔ほど贅沢はしていないが、お給料をこつこつと貯め、時間をやりくりしては、「自分へのご褒美」として年に1、2度海外旅行にでかけている。

 それなりに旅慣れた私は、飛行機の座席は可能な限り「非常口席」をリクエストする。いわゆる「キャビンアテンダント(CA)とのお見合い席」だ。

 世の中にサービス業に属する業種は星の数ほどあるが、CAはそのトップクラスに位置すると言っても過言ではないだろう。彼女たちのサービスは女性でも好感が待てるのだから、いつの時代でも男性にモテる職業であるのもうなずける。「非常口席」は、そんなサービスのプロの仕事を間近で観察することができるのだ。

 到着後の旅の行動を考えると、すぐにでもブランケットに包まりたいところだが、「非常口席」を確保できた時はグラスワインを片手に、CAのウォッチングをすることにしている。

 生まれ持った顔立ちの良し悪しは別として、どのCAも清潔感のあるヘアメイクに、ユニフォームを上品に着こなしている。機内食サービスのエプロン姿でさえかっこよく見えてしまうのはなぜだろう。彼女たちは自分を素敵に見せる術を知っているのだ。好感の持てる容姿もさることながら、表情、話し方、声のトーン、何気ない手のしぐさまでも実に美しい。その洗練された接客や、優雅な身のこなしは、目の保養になる。その上、乗客に対する気配りができていれば言うことはない。

 数年前、友人と年末にハワイに向かう機内でのことである。多忙だった友人は体調を崩していたにも関わらず、旅行に出かけたのだが、無理がたたって機内で発熱したのだ。近くにいたチーフクラスの年配CAに事情を話すと、到着時まで高熱が続くと入国を拒否されることもあるのだとか。 彼女は空席を作り友人を横にしてくれたり、冷たいおしぼりを何度も交換してくれた。機内の消灯後、CAが休憩するであろう時間帯にも、何度も足を運びミネラルウォーターをサーブし、やさしく声を掛けてくれたのだ。おかげで友人の熱は下がり、ことなきを得たのだが、親身になり、細やかな気配りをしてくれたそのCAのことは今でも忘れられない。

 人は、求めている以上のサービスを受けた時、感動し、心に残るものである。特別なアクシデントがなくても「あの店員さんは親切にしてくれた」とか「ホテルのバトラーが特別なはからいをしてくれた」など、サービスを満足できたかどうかは対応してくれたアテンダント=接客係の対応にかかっているのだと思う。

 歯科医療もサービスと言われる昨今、患者さんへのサービスの向上は避けて通れない課題だ。歯科衛生士として技術や知識を高めることは重要だが、患者さんが求めているのはそれだけだろうか?サービスの種類もさまざまであり、歯科衛生士の仕事にCAのサービスをそのまま当てはめて良いわけではないが、清潔感のあるヘアメイクや身だしなみは患者さんから見ても好感の持てるだろうし、女性らしい立ち居振舞いは患者さんやその場の雰囲気も明るくするだろう。何より患者さんが何を求めているのかを受け止め、ひとりひとりのニーズにあった気配りは患者さんを安心させ、満足させる。

患者さんが私たちの医療サービスを満足してくださったとき、私たちは「患者さんに心に残る歯科衛生士」になれるのかもしれない。

 どんなに医療技術が進歩しても「不安を取り除いてくれる」「訴えをよく聞いてくれる」「いつも笑顔で迎えてくれる」そんな医療サービスが提供できる「デンタルアテンダント」のような存在は必要とされるのではないか。

歯科衛生士 田樽 ハイジ

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