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Less is more─ 予防のプロ集団と薬局が本気で開発した歯磨剤 『L・I・M Toothpaste』誕生秘話
- 著:Dentwave /
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Less is more─ 予防のプロ集団と薬局が本気で開発した歯磨剤 『L・I・M Toothpaste』誕生秘話
歯科と薬局。一見、交わる機会の少ない2つの業態が、“予防”という共通の想いを軸に手を取り合い、ひとつの製品を生み出しました。
本記事でご紹介する『L・I・M Toothpaste』は、歯科医師であり、PHIJ(Perio Health Institute Japan)の主宰を務める築山鉄平先生と、大賀薬局(福岡県)の大賀崇浩社長が、「本当に患者のためになる歯磨剤をつくろう」と、2年間にわたって取り組んだ末に誕生したものです。
現場視点と生活者視点が融合したこの歯磨剤には、どんな想いが込められているのか。
開発の背景やこだわり、そして今後の歯科と薬局の未来関係性の在り方について、お二人にじっくりお話を伺いました。
歯科と薬局、まだ交わることが少ない2つの業態がコラボした理由
Dentwave編集部:
まずは、お二人の出会いや、この歯磨剤開発に至るまでの経緯から教えていただけますか?
築山先生:
どっちが先だったか…でも最初は、大賀薬局さんの歯磨剤に私が興味を持ったのがきっかけだったと思います。たしか、よかったら使ってみてくださいって紹介された製品があって、それがモリンガとか、なたね油とか、ちょっとオーガニック寄りの歯磨剤でした。でも最近そういう製品はたくさんあるんですけど、科学的に有効性があると言われている成分がちゃんと入っている製品って意外と少ないんですよね。現場の専門家が本気で関わって作った歯磨剤って、あまり見かけないなと感じていました。
大賀社長:
そのときの会話の中で、「先生のところでも、PB(プライベートブランド)の歯磨剤ってありますよね?」みたいな話になったんです。そしたら築山先生が、「実は、そういうのをずっと作りたかったんだよね」って。
そこからじゃあ一緒にやりましょうかって流れになって、ちょうど僕の義理の姉も歯科医師で、偶然築山先生のクリニックでの勤務経験もあって、一気に話が進みました。自然とご縁がつながった感じです。
ないなら、つくろう──PHIJが歯磨剤開発に乗り出したワケ
Dentwave編集部:
PHIJとして、歯磨剤を自分たちで作ろうと考えたきっかけは何だったのでしょうか?
築山先生:
PHIJの中で、以前から理想の歯磨剤って何だろうという話はしていたんです。市販品ではどうしても満足できない部分があって、ないなら自分たちで作ろうと。どうせやるなら、これまで誰もやってないようなレベルの製品を本気で開発したいと思って、大賀薬局さんに「科学的根拠のある歯磨剤を一緒に作れませんか?」と相談しました。そしたら、すごく前向きにやりましょうと言ってくださって。
▲築山先生
Dentwave編集部:
大賀薬局としては、今回の歯磨剤の開発に踏み出した理由は何だったのでしょうか?
大賀社長:
私は、正直、結構ご縁とか流れで生きている人間なんですよ。
その時その時で、この人と何かやりたい応援したいと思った人と一緒に動いてきたって感じで。今回もその一つなんですよね。
薬局の経営はしていますけど、僕自身は薬剤師ではないですし、正直、歯科のことも詳しかったわけじゃない。でもつい最近も自分の歯の治療で歯科医院に行っていて思ったんですけど、やっぱり口腔内の状態が健康全体にめちゃくちゃ影響しているんですよね。
これは動物も同じで、歯の状態が悪いと1年平均健康寿命が縮むって言われていて。犬猫で1年なら、人間なら10年縮むことになるんじゃないか?と。
周りの歯科医療従事者に話を聞いたり体感したりしているうちに、これは絶対もっと予防に力を入れるべきだと思うようになったんです。
薬を減らす薬局という私たちの目指す姿・テーマとも一致していることも大きいです。私たちが目指している薬に頼らない状態をつくることはまさに予防だなと。
▲大賀社長
『Less is more』──必要最小限の成分で最大の効果を目指す
Dentwave編集部:
今回の歯磨剤“『Less is more』”という名前には、かなり強い意味が込められていそうですね。
築山先生:
まさにそうです。歯磨剤って差別化しようとすると、いろいろな成分を足していく傾向があるんです。知覚過敏、ホワイトニング、発泡性…でもそうやっていくと、人工成分だらけになって、本当に必要なものが見えなくなってしまう。
私たちとしては、あくまで臨床の現場で患者さんと向き合っている中で感じた課題をもとに、余計なものをそぎ落としたうえで、残った”本質”をどう高めるかというアプローチで考えました。もちろん、すでに良い製品もたくさんあります。ただ私たちの立場から見て、「必要最小限の成分で十分な効果があるものを作りたい」と思ったんです。
Dentwave編集部:
たしかに日本の市販品だと、「15種類の有効成分配合」等といった数で勝負する製品が多い印象です。
築山先生:
まさにそれです。でも、15種類入っているから効きそうに見えるだけで、それが本当に必要かというとまた別の話。目薬や風邪薬も同じですよね。何種類も成分が入っている=よく効きそうって思ってしまう。でもそれは本質じゃない。私たちは、必要な成分を、必要な量だけ入れるという思想で考えました。
大賀社長:
結局、成分を増やした方が販促の観点で売りやすいんですよね。私たちも店舗の中で、いかに生活者の方々に商品を選んでもらうか、という点は日々考えているので理解できます。
ただ今回は、私たち薬局の店舗では売れなくてもいいと思っています。あくまでも歯科医療従事者の皆さまが歯科医院の現場でしっかりと価値を伝えてくださる方が、この製品にとっては意味があると思ったんです。うちの店舗(約100店舗)に少しでも置ければ、そこが一般の人がこの製品を知る接点になる。
なので、相乗効果でいきましょう、という形でまとまりました。
築山先生:
今回の製品は歯科専売品なので、パッケージだけで勝負する市販品とは違って、歯科医院で説明して販売することが前提なんです。
だからこそ、「これは成分が少ないけど、本当にいいんですよ」っていうことを、歯科衛生士がしっかり説明できることが大切だと考えています。
▲左から大賀社長、築山先生
Dentwave編集部:
開発にあたり、特にこだわったポイントは何でしょうか?
築山先生:
こだわったのは、刺激を減らす、味を極力薄くするという点です。ただ、ここは実際に議論も分かれました。
無味に近い試作品を作ったときに、現場の衛生士さんからもう少し爽快感がほしいという声もあって。
また、発泡が強すぎるとすぐ吐き出したくなってしまうので、極力長く歯を磨いてもらうために発泡を抑え、フレーバーにもこだわりました。
今もスタッフの声を聴きながら、アップデートが必要な点は適宜対応していきたいと考えています。
試作は数知れず──「これではペーストにならない」からの挑戦
Dentwave編集部:
こだわった分、開発も大変だったのではないでしょうか?
築山先生:
はい、成分を削ることで、これじゃペースト状にならない、安定しないなどの問題が山のように出てきました。でもそれでも成分は増やしたくないという想いがあって。何度も何度もやり取りしながら、製品として成立するギリギリを探して、今回の歯磨剤を実現しました。
Dentwave編集部:
今回の歯磨剤はう蝕予防というコンセプトがあると思うんですけど、特にお勧めされたい患者像等はありますが?
築山先生:
う蝕を予防したくない人はいないと思うので、正直誰にでも使ってほしいんですよね(笑)
本当にマイルドで使いやすいフレーバーになっているので、強いて挙げるなら、う蝕リスクの高い患者さんや、味や刺激に敏感な方あたりでしょうか。
Dentwave編集部:
スタッフの方々が自信を持って患者さんにおすすめできることも大きいですよね。
築山先生:
そうなんです。歯科衛生士が「これ、いいですよ」と自信を持って説明できることが何より大きいです。たとえば定期健診で「歯肉の状態が良くなっていますね」、「出血が減っていますね」と伝える中で、「この歯磨剤を使っているからかも」と結果とツールがつながると、自然に継続にもつながる。患者さんと一緒に予防を続けるためのツールとして使えるんです。
▲薬用 L・I・M Toothpaste
歯科と薬局のこれから――これは共同開発ではなく、連携の起点
Dentwave編集部:
今、この『Less is more』 が業界に必要だと考えられている理由を教えてください。
築山先生:
私がスウェーデンのTePeの工場を見学したときに衝撃を受けたんです。再生可能素材の歯ブラシ、屋上にはソーラーと畑、そしてとてもマイルドな、『Less is more』の原点になるようなジェル状の歯磨剤があって。これだと思ったんですよ。日本にはまだないと思って、一番身近な歯磨剤ならチャレンジできると思って取り入れました。
自分たちで、患者のために、誇りを持ってすすめられる製品を作ろう。その一心で、2年間やってきました。それが今回の『Less is more』につながっています。
Dentwave編集部:
歯科×薬局の連携について、どのようにお考えですか?
大賀社長:
薬局って、医科とはいろいろ連携があるんですけど、歯科とはほとんど接点がないんですよ。
でも冷静に考えたら、健康寿命を伸ばすという目標は、歯科と薬局でめちゃくちゃ近いんですよね。
肝臓が元気でも、歯がなかったら食べられない。それって健康じゃないじゃないですか。だから僕は、歯科と薬局がもっと連携して、身体全体の健康を支えるチームになれたらいいと思っています。
患者さんの中には、薬局には来るけど歯医者には行ってない人もたくさんいます。
逆に、薬局に来られた方に口腔の健康の重要性を伝える。これって、すごく社会的意義のあることだと思うんです。
歯科医師と薬剤師が一緒に勉強したり、製品を作ったりすることって、まだあまりないですけど、これからの医療のあり方を考えると、そこにはとても可能性があると思っています。今回のこの製品が、そのはじめの一歩になったら嬉しいですね。
編集後記
今回取材させていただいた築山先生と大賀社長のお二方。
実はDentwave責任者の井端にとって、築山先生は現職Dentwaveで、大賀社長は過去に都市銀行へ勤務していた時にお世話になっている、どちらも大切なお客様です。
長年お世話になってきたお客様同士が出会い、想いを重ね、ひとつのプロダクトを共につくり上げられた今回の企画は、とても感慨深いものでした。
そしてDentwaveが掲げる「頼れる仲間を、もっと近くに」というコンセプトの新たな形が、業界の垣根を越えて、ここにあったように思います。
今まで交わることの少なかった歯科と薬局という2つの業態が、予防という共通のゴールに向かって手を取り合う。専門性を越えた連携が、これからの歯科医療の可能性をさらに広げてくれると信じています。
今後も、業界の垣根を越えて「頼れる仲間」をつなげる存在でありたい。
私たちDentwaveにとって、そんな想いが改めて強くなった企画となりました。
▲左から大賀社長、井端、築山先生
【Perio Health Institute Japan (PHIJ)について】
PHIJは科学的根拠に基づいた生涯歯科教育及び歯学研究のトレーニングを提供することにより、日本、ヒューストン、オマハにおいて優れた歯科教育プログラムを提供する機関となることをその任務としており、歯科教育・技術の向上、活躍できる場の創造、予防医療の普及を目指しています。
【大賀薬局について】
1902年に創業し、福岡県を中心に調剤薬局、ドラッグストア、化粧品専門店118店舗を展開。『薬を増やすではなく、減らす薬局』を目指しています。また、地域の皆様にとって有益であり、安心して健やかに過ごすことが出来るための場所として存在し続けることを理念としています。人と動物と環境のよりよい共生を目指す「ワンヘルス」を推進し、2024年には動物の調剤をスタートさせ、人と動物の健康を守る企業を目指しています。
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