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笑気吸入鎮静法で知っておくべきこと 患者説明のポイントと流れ

笑気吸入鎮静法で知っておくべきこと 患者説明のポイントと流れ

前回は、笑気吸入鎮静法の特徴と使用できないケースを解説させていただきました。
今回は<患者説明のポイントと流れ>について解説いたします。

笑気吸入鎮静法で知っておくべき患者説明のポイント

笑気吸入鎮静法を使用することに抵抗を感じる患者も少なくはありません。安心して使用してもらうために、下記のような内容を伝えるとよいでしょう。

● 鼻から吸入するだけで効果が得られる
● 体が温かくなったように感じ、リラックスできる
● お酒に酔ったような気分になる(お酒が苦手な患者には注意が必要)
● 非常に安全性の高い方法

笑気吸入鎮静法の流れ

実際に笑気吸入鎮静法を行う際の流れは下記の通りです。
1. 術前モニタリング
まずは当日の体調に問題がないか問診します。その後、患者の些細な体調変化も見逃さないように、血圧、脈拍数、血中酸素飽和度(SpO2)などを測定する生体情報モニターを装着しモニタリングを行います。

2. 専用マスクの装着
笑気を吸入するための専用の鼻マスクを装着します。鼻マスクは鼻をすべて覆いますが、上顎前歯部の治療時は妨げとなるため専用の鼻カニューレを使用すると良いでしょう。

笑気吸入鎮静法で知っておくべきこと 患者説明のポイントと流れ
笑気吸入鎮静法で知っておくべきこと 患者説明のポイントと流れ

3. 酸素の吸入
まずは100%濃度の酸素を流し、楽に鼻で呼吸ができているかを確認します。

4. 笑気濃度の調整
患者の状態をよく観察しながら、笑気の濃度を少しずつ上げていきます。目安となる適正濃度は20~30%程度ですが、患者によって適した濃度が異なるため、麻酔の効き具合を確認しながら調整しましょう。
笑気吸入鎮静法は「至適鎮静濃度」で、麻酔が効き過ぎないように適度なバランスを保つ必要があります。したがって、生体情報モニターでバイタルの確認を行いながら、患者の表情・瞬きの状態・焦点・呼吸の動き・呼びかけに対する反応などにも気を配りましょう。
5. 歯科治療の施術
笑気の効き具合を確認しながら、歯科治療を行います。全身麻酔とは異なり意識を失うことはありませんが、ウトウトするようなリラックスした状態になるため、誤飲・誤嚥の予防としてバキュームで口腔内をこまめに吸引することを心がけましょう。

6. 酸素の吸入
歯科治療後が終了したら速やかに笑気の流出を止め、100%濃度の酸素を5分程度吸入させます。これにより体内の笑気の排出がスムーズに行えます。

7. 術後の状態確認
足元のふらつきや気持ちの悪さなどがないかを確認します。気分が優れないようであれば、待合室で少し休んでもらい、回復してから帰宅していただきます。

笑気吸入鎮静法の費用

笑気を取り扱う歯科医院は多くはないため、費用を心配する患者がいますが、笑気吸入鎮静法は健康保険が適応される治療法です。

笑気の濃度と吸入時間によって変化しますが、健康保険の負担割合が3割の患者の場合、約1時間の治療であれば1000〜1500円程度で受けることが可能です。

最後に

どのような形態の歯科医院であっても、受診する患者に安全な医療を提供することが求められるため、笑気吸入鎮静法を応用することは極めて有効です。笑気吸入鎮静法の使用環境を整え、安全・安心・快適な治療を提供できるようにしましょう。

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プロフィール
執筆 高山 由衣

日本大学松戸歯学部附属歯科衛生専門学校卒業。歯科衛生士免許取得後、一般歯科、予防歯科、訪問歯科を主軸に勤務。現在、臨床業務を行いながら、医院の仕組みづくりやスタッフ育成、チームマネジメントに携わる。2021年7月歯科衛生士のオンラインサロン「99.99〜フォーナイン〜」を立ち上げる。
Instagram @yui_takayama/

校正・編集者 浜崎実穂

東京医科歯科大学卒業後、都内歯科大学病院に勤務。退職後はフリーランスの「歯科衛生士ライター」として活動し、ライターの指導や教育、ディレクションも行う。自身で制作・運営を行なっていた歯科メディアは販売を達成。大学の卒業研究では日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科衛生研究所賞)を受賞。現在はDentalMonitoringJapanに勤務し、2児の母でもある。
Instagram:@toothteethtokyo

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