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笑気吸入鎮静法で知っておくべきこと 【笑気吸入鎮静法の特徴と使用できないケースを解説】

笑気吸入鎮静法で知っておくべきこと 【笑気吸入鎮静法の特徴と使用できないケースを解説】

歯科治療において、歯科恐怖症患者や小児患者は、不安や恐怖をストレスとして感じています。それらを軽減し、なおかつ治療を安全に行うことが必要です。その方法の1つとして、今回は「笑気吸入鎮静法」の実践的な使い方を解説します。

笑気吸入鎮静法とは

笑気吸入鎮静法とは、歯科治療に対して不安やストレスを大きく感じてしまう患者に、リラックスして治療を受けてもらうための鎮静法です。笑気と医療用酸素を混ぜた麻酔ガスを鼻から吸引するだけで鎮静状態が得られます。ガスは終了後30分以内に肺などから体外に排泄されるため、副作用が非常に少ない麻酔薬で、小児から成人まで幅広く使用が可能です。

笑気吸入鎮静法で知っておくべきこと 【笑気吸入鎮静法の特徴と使用できないケースを解説】

笑気は鎮静作用に加え、鎮痛作用を持っています。つまり笑気吸入鎮静法を用いれば、リラックスするとともに痛みを感じにくくなるという効果も得られます。笑気を吸入させながら局所麻酔を行うと、「痛みを取るための麻酔が痛い」というジレンマも軽減することが可能です。

歯科治療により気分が悪くなったり、血圧が上昇したりといったことは、痛みや不安感、恐怖心が原因となり引き起こされます。笑気吸入鎮静法はこれらのストレスを和らげるとともに、高濃度(70%以上)の酸素を一緒に吸入することで治療の安全性もさらに高めることができます。

笑気吸入鎮静法の特徴

✅弱い鎮静・睡眠作用と鎮痛作用
笑気は正式には亜酸化窒素(N2O)といい、吸入麻酔薬の一種で、もっとも使用されることが多い麻酔薬です。麻酔作用とは、鎮静・睡眠作用と鎮痛作用を合わせたものを呼びますが、笑気はこれらが弱いことも特徴です。

✅効果の発現と消失が速やか
吸入させると速やかに効果が現れ、吸入を中止すれば直ちに排泄されるという性質を持っています。笑気吸入中止後は、数分で帰宅可能となるのはこのためです。

✅呼吸器や循環器に影響を与えにくい
呼吸器や循環器への影響がほとんど見られないため、肺や心臓に障害を持っている患者にも安全に使用することができます。

✅肝臓に負担をかけない
多くの薬剤は代謝に際して肝臓で分解され、その結果生じた分解産物の薬理作用についても注意が必要になります。しかし笑気は体内でほとんど分解されないため、肝臓に負担をかけません。

笑気吸入鎮静法が使用できないケース

下記の場合には笑気吸入鎮静法が適用できないため、事前の問診で確認する必要があります。

●鼻が詰まっている(鼻閉)
●副鼻腔炎(蓄膿症)
●妊娠初期
●2ヵ月以内に眼科手術を受けている
●過換気症候群
●中耳炎の治療中

次回は、笑気吸入鎮静法で知っておくべきこと【患者説明のポイントと流れ】を解説いたします。

プロフィール
執筆 高山 由衣

日本大学松戸歯学部附属歯科衛生専門学校卒業。歯科衛生士免許取得後、一般歯科、予防歯科、訪問歯科を主軸に勤務。現在、臨床業務を行いながら、医院の仕組みづくりやスタッフ育成、チームマネジメントに携わる。2021年7月歯科衛生士のオンラインサロン「99.99〜フォーナイン〜」を立ち上げる。
Instagram @yui_takayama/

校正・編集者 浜崎実穂

東京医科歯科大学卒業後、都内歯科大学病院に勤務。退職後はフリーランスの「歯科衛生士ライター」として活動し、ライターの指導や教育、ディレクションも行う。自身で制作・運営を行なっていた歯科メディアは販売を達成。大学の卒業研究では日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科衛生研究所賞)を受賞。現在はDentalMonitoringJapanに勤務し、2児の母でもある。
Instagram:@toothteethtokyo

笑気吸入鎮静法で知っておくべきこと 【笑気吸入鎮静法の特徴と使用できないケースを解説】