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「歯科医院の会計が、高速道路のETCのように通過するだけで終わる」。
そう聞いたとき、一瞬耳を疑った先生もいるのではないだろうか。 治療が終わり、ユニットから立ち上がる。そこから会計のために受付で待つ必要はない。もちろん、「○○さん、お会計です」と呼ばれることもなく、患者さんはそのまま出口へと向かい、帰宅後にスマートフォンで決済が完了する──。
そんな夢のような仕組みが、埼玉県北本市にある「ハートピア歯科・矯正歯科 北本診療所」ですでに日常の光景となっている。
そんな同院が導入したのは、医療機関向けオンライン決済サービス「CurePort(キュアポート)」。 深刻化する「人材不足」という歯科業界共通の課題に対し、大掛かりな精算機ではなく、患者自身のスマートフォンを活用するという“逆転の発想”で挑んだ事例だ。
その背景にあったのは、「スタッフを疲弊させたくない」という切実な思いと、単なる効率化を超えた「次世代の歯科医院像」への挑戦だった。 同院の理事長を務める洲﨑雄介先生、院長の上田耕平先生、そして現場のオペレーションを支える加藤瞳氏に、導入の経緯から現場で起きた劇的な変化、そして見据える未来についてじっくりと話を伺った。

人手不足の現場が変わる「会計待ちゼロ」の衝撃 ── 疲弊するスタッフを救った “会計のETC化”とは

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「人手不足の波は止められない」。危機感から始まった改革

「正直に申し上げますと、当院も歯科業界全体が直面する人手不足という課題を避けて通ることはできません。だからこそ、今から土台作りが必要だと考えました。インタビューの冒頭、洲﨑先生は未来を見据えた力強い言葉でそう語った。
これは同院に限った話ではない。少子高齢化に伴う労働人口の減少、資格保有者の離職率、そして採用難。歯科業界を取り巻く雇用環境は、年々厳しさを増している。 限られた人数のスタッフで、診療アシスト、消毒・滅菌、予約管理、そして患者対応と、多岐にわたる業務を回さなければならないのが今の歯科医院の現実だ。

その中で、特に業務負荷が集中し、ボトルネックとなりやすいのが「会計業務」である。

「スタッフが本来注力すべきは、患者さんの口内環境を整える医療行為や、安心して治療を受けていただくためのコミュニケーションです。しかし現実は、治療が終わった患者さんの会計処理に追われ、電話対応に時間を取られ、心理的にも身体的にも疲弊していく……。余裕がなくなれば、当然、患者さんへの対応も機械的になりかねません」(洲﨑先生)

スタッフの負担増は、離職リスクに直結する。かといって人を増やそうにも採用は難しい。そして、会計待ちの行列は患者満足度を下げる。まさに「負のスパイラル」だ。

「この悪循環を断ち切るためには、業務の在り方を根底から変える必要がありました。スタッフが安心して長く働ける環境を守りながら、診療効率も上げる。そのためのソリューションを必死に探していました」(洲﨑先生)

そこで出会ったのが、ハードウェアに頼らないオンライン決済「CurePort」だった。

なぜ「自動精算機」ではなかったのか? ── コストとリスクの壁を越える

歯科医院における会計の効率化といえば、近年普及が進む「自動精算機」や「自動釣銭機」を思い浮かべる先生も多いだろう。実際、洲﨑先生も当初はその導入を検討したという。しかし、最終的に選んだのはハードウェアではなく、クラウドサービスだった。

「自動精算機などのハードウェア導入には、数百万円単位の初期投資が必要です。さらに、月々のランニングコストやメンテナンス費用もかさみます。機械である以上、故障のリスクもゼロではありませんし、設置スペースの問題もあります」(洲﨑先生)

対して、CurePortのアプローチは全く異なる。 院内に新たな機械を置くのではなく、患者さんが普段使っている「スマートフォン」を決済端末として利用するのだ。

「患者さんは自分のスマホで手続きを行い、医院側はブラウザ上の管理画面で確認するだけ。これなら大きな初期費用もかからず、コスト管理も容易です。故障して会計が止まるというハードウェア特有のリスクもありません」(洲﨑先生)

そして何より、洲﨑先生の心を動かしたのは、「会計場所の概念」を変えられる点だった。

「自動精算機を導入しても、結局は『院内で会計をする』という行為自体は変わりません。しかし、CurePortなら、患者さんは帰宅後に自宅で決済ができる。つまり、院内での滞在時間を物理的に消滅させることができるのです。目指したのは、車のETCのように、診療を受けたらノンストップで帰れる仕組み。このビジョンを実現するには、大掛かりな機械ではなく、誰もが持っているスマホを活用するのが最適解でした」

現場の不安を「自信」に変えた、段階的な導入プロセス

経営陣が理想的なシステムを見つけても、実際に使うのは現場のスタッフだ。新しいITツールの導入には、現場の抵抗感や混乱がつきものだ。 「最初は正直、不安のほうが大きかったです」と、現場スタッフの加藤氏は当時の心境を振り返る。

「私たちスタッフの中には、デジタルの操作に不慣れな者もいます。『操作を間違えて患者さんに迷惑をかけたらどうしよう』『私に使いこなせるだろうか』という声も上がっていました」(加藤氏)

そこで同院がとったのは、トップダウンで一斉に導入を強いるのではなく、現場に寄り添った“段階的”な導入手法だった。

まず、ITリテラシーの高い中核スタッフ数名がシステムを完全にマスターする。そのスタッフが、他のスタッフへマンツーマンに近い形で教えていく。教育体制をピラミッド型にすることで、理解度のバラつきを防いだのだ。

また、患者さんへの案内も慎重に行われた。 「全ての患者さんに一律で案内するのではなく、スマホの操作に慣れている方や、新しいものへの抵抗が少ない方から順にお声がけをしました。変化に適応しづらいご高齢の方などには無理強いせず、従来の会計方法も残す。あえてブレーキをかけながら、安全かつ確実に利用者を増やしていく戦略をとりました」(加藤氏)

この「急がば回れ」の戦略は功を奏した。
「実際に使ってみると、登録やチェックインの操作は非常にシンプルでした。『なんだ、これなら私でもできる』とスタッフが自信を持ち始めてからは、普及のスピードが一気に上がりました」(加藤氏)

「会計待ちゼロ」がもたらした、静かなる革命

導入からしばらく経ち、同院の風景は一変した。 以前であれば、診療のピークタイムには受付の前に数人の患者さんが並び、スタッフは電卓を叩きながら釣銭を数え、同時に電話対応に追われる──そんな光景が当たり前だった。

しかし現在、CurePortを利用する患者さんは、治療が終わると軽く会釈をしてそのまま帰っていく。

「会計業務が物理的に減ったことで、受付の流れが驚くほどスムーズになりました。以前のように、会計待ちの患者さんと、これから診療に入る患者さんが入り乱れることがありません。結果として、これから診療を受ける方の待ち時間短縮にも繋がっています」(加藤氏)

効果は数字や効率だけではない。スタッフの「心の余裕」という、目に見えない資産も生み出した。

「忙しい時間帯特有の『ピリピリ感』が減りました。業務の強弱が平準化され、不要な焦りがなくなったことで、スタッフの笑顔が明らかに増えたんです。患者さんと世間話をする余裕も生まれ、院内全体の雰囲気が柔らかくなりました。これは、どんな高性能な機械を入れるよりも価値のある変化だと感じています」(加藤氏)

患者さんからも、「待たなくていいのが本当に楽」「現金を触らなくていいので衛生的」と好評だという。特にコロナ禍を経て、非接触へのニーズが高まったことも追い風となった。

“人”にしかできない業務のために、受付の無人化を目指す

「会計待ちゼロ」を実現したハートピア歯科・矯正歯科 北本診療所。しかし、上田先生は「これはゴールではなく、スタート」だと語る。見据えているのは、さらにその先にある「次世代の歯科医院」の姿だ。

「最終的には、受付業務の完全な無人化を目指しています。といっても、人を減らしたいわけではありません。逆です。システムで代替できる事務作業はすべてDX(デジタルトランスフォーメーション)化し、スタッフには『人にしかできない業務』に専念してもらいたいのです」(洲崎先生)

AIやデジタル技術が進化しても、患者さんの不安に寄り添う言葉や、温かい笑顔、細やかな気配りは人間にしかできない。 事務作業から解放されたスタッフが、カウンセリングや患者ケアにより多くの時間を使う。それこそが、同院が目指す「質の高い医療」の本質だ。

「歯科業界の人手不足は、今後も続くでしょう。しかし、それを嘆いていても始まりません。ITの力を借りて業務を効率化し、そこで生まれた余白を、患者さんへの還元とスタッフの働きやすさに充てる。CurePortの導入は、そのための大きな一歩でした」(洲崎先生)

最後に、同じ課題を抱える全国の歯科医院へ向けて、洲崎先生と上田先生はこうメッセージを送った。

「利便性が高まれば、新たな視点や可能性が見えてきます。今は想像もつかないような革新的な未来を、患者さんと共に作っていける。DXへの取り組みは、単なるコスト削減ではなく、医院の未来を拓く投資です。ぜひ恐れずに、新しい一歩を踏み出してほしいですね」

まとめ

今回の取材を通じて強く感じたのは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉の真の意味だ。 ともすれば、「デジタル化=冷たい、機械的」というイメージを持たれがちだ。しかし、ハートピア歯科・矯正歯科 北本診療所で起きていたのは、デジタル化によって「人間らしさ」が取り戻されるという現象だった。

「会計」という、ある意味で事務的かつ心理的負担の大きい業務をクラウドへ逃がすことで、院内には「余白」が生まれた。その余白が、スタッフの笑顔となり、患者さんへの丁寧な対応へと還元されている。

取材中、加藤氏が語った「スタッフの笑顔が増えた」という言葉が印象的だった。どんなに優れた医療技術があっても、提供するスタッフが疲弊していては、最高の医療とは言えない。スタッフを守ることは、巡り巡って患者さんを守ることに繋がるのだ。

「会計のETC化」は、単に財布を出さなくて済むという利便性の話ではない。それは、歯科医療現場における「時間」と「心」の使い方を変える、静かなる革命なのかもしれない。

人手不足に悩む多くの医院にとって、同院の取り組みは、「機械に頼るのではなく、仕組みを変える」という新たな選択肢を示してくれるはずだ。私たちも引き続き、こうした現場の課題に寄り添うソリューションの発信を続けていきたい。

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