第112回歯科医師国家試験の総評と今後の展望

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結語

第111回歯科医師国家試験では、従前より必要とされてきた「皆が正解できる問題を確実に正解する能力」、「同じ意味の事柄を他の言葉に変換する能力」「より踏み込んだ内容を押さえること」が要求されていた。
今回の第112回歯科医師国家試験では、その傾向がより強まっており、「考えさせる歯科医師国家試験」へのシフトは今後より進行すると推測される。
歯科医師国家試験の難関化という流れに対応すべく、各大学においても現行の歯科医師国家試験に対応したカリキュラムの作成や歯科医師国家試験に合格できる学生のみを選抜していくために低学年から留年者数が増加しているのはここ数年の流れであるが、今回の試験を受けてこの流れがさらに加速し、留年者数のさらなる増加の可能性が考えられる。 学生にも低学年の時点より将来のCBT(computer based testing)や国家試験を見据えた学習習慣の確立が求められることはもちろんであるが、大学側においても、引き続き歯科医師国家試験に対応できるカリキュラムの構築、学習に不安のある学生のフォロー、予備校などとの提携など、一人でも多く出口を突破できる学生を増やせるような対策が必須であることは言うまでもない。
第112回歯科医師国家試験は難問と平易な問題の差が激しく、また比較的平易な問題でもその難易度が底上げされている印象を受ける試験であった。しかしながら、平易な問題を正答できなかった学生から合格の可能性が低下していくことには変わりはなく、比較的細かい内容の出題が目立ったこともあり低学年からの積み重ねがより一層重要視される試験であったように思える。 今後の歯科医師国家試験は平易な問題を確実に落とさないということ、低学年からの積み重ねがより重要となることは論を待たないが、難しい内容での足切りではなく、基本に即した内容での難度上昇が重要であろう。
 考える問題の多数の出題は歯学部入学時の偏差値など、大学入学時以前の学習までもが影響し、大学教育での努力が反映されるかいささか疑問が残る。
今後は考えさせる歯科医師国家試験となる傾向は加速していくと思われる。しかしながら、学生の聞いたことのない内容の出題より想起できる問題が重要であると考える。 計算問題や臨床手技の手順を問う問題は大学によって授業内容にばらつきが出ることも想定されるため、より基本に即した出題が望まれるだろう。

東京デンタルスクール 岡田優一郎
執筆協力 岩脇清一



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