【会員限定公開記事】「ハードモード義歯臨床論」1Dセミナー イベントレポート

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【会員限定公開記事】「ハードモード義歯臨床論」1Dセミナー イベントレポート

▲オンラインセミナーの様子(講師:鮎川 保則 先生)

義歯難症例対応力の向上へ!

2022年10月27日(木)、1D (ワンディー) で歯科医師向けオンラインセミナー「ハードモード義歯臨床論」が開催された。

セミナー講師は九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座 インプラント・義歯補綴学分野、クラウンブリッジ補綴学分野教授の「鮎川 保則」先生(執筆者自身も研究に従事していた一時期に非常にお世話になった先生である)。

「難症例の義歯作製は苦手であまり手を出したくない」という悩みを持つ歯科医師は決して少なくない。フラビーガムの印象採得、顎堤が高度に吸収した症例の義歯外形線の設定など、言葉を聞くだけで頭が痛い。加えて、訪問診療になると、短い時間と限られた機器で義歯治療を行う必要がある。

鮎川先生は、フラビーガムや顎堤が著しく吸収して義歯の適合が難しくなる症例の対応方法や、歯肉頬移行部が分からないなどの難しいシチュエーションにおける義歯治療のポイントなどを、一つ一つ丁寧に解説されていた。

本記事執筆者である自身も月に数回ではあるが、義歯治療に携わっている。フラビーガムの症例に遭遇したことは幸いなことに無いが、本セミナーを受講して学んだ内容が自身の今後の義歯臨床にきっと活かせるものであると確信している。

▲「ハードモード義歯臨床論」スライド(フラビーガム症例個人トレー作製方法)

「ハードモード義歯臨床論」目次
  • 上顎総義歯がすぐ外れるときどうする?
  • フラビーガムがある場合の印象採得のポイントは?
  • 高度に顎堤が吸収した症例で吸着を得るには?
  • 顎位が不安定な症例への対応方法は?
  • 限られた時間・器材で義歯治療を行うには?
「義歯が基本的に苦手」「義歯の難症例にも対応できるようになりたい」「義歯臨床を行う上でのコツを知りたい」歯科医師に特に勧めたいセミナー内容である。
セミナーの内容を全ては紹介できないため、本セミナーで紹介された「難症例の概形印象のポイント」にフォーカスして紹介したい。読者の日々の義歯臨床の参考になれば、幸いである。

▲最終的にしっかりと適合した全部床義歯を採得する上で印象は非常に重要!

概形印象のポイント
概形印象は解剖学的ランドマークを知り、義歯を設計していく上で重要なstepである。鮎川先生は概形印象を上手に採得するためのポイントを3つ紹介していた。

①既製トレーの選択
トレーの大きさが大事で、上顎は解剖学的ランドマークを全て含むように大きめなトレーを使い、下顎は小さめが良いが顎舌骨筋線を舌に邪魔されないように印象採得するために舌側は長めのトレー(アキュトレーなど)を使うことを鮎川先生は推奨していた。

②患者さんの練習
トレーを試適して患者さんの特徴を知ることも大切である。トレーが入ると口唇圧が強い患者さんもいれば、嘔吐反射の強い患者さんもいる。口唇圧が強ければ閉口気味で採得するように心がけ、嘔吐反射の強い患者さんであれば、キシロカインスプレーを使うのも良いが、座位や前傾姿勢をとることなども考慮しておくと良い。

③シリンジの使用
鮎川先生は印象採得する上でシリンジ(50mL、テルモ等)の使用は必須であると強調されていた。トレー用のアルジネートは硬めだが、シリンジ用のアルジネートは冷水で軟らかめに練和すると良い。

下顎は頬棚からオトガイ部や舌下部に、上顎は歯肉頬移行部や口蓋雛璧に注入する。シリンジを使うメリットとして、トレーには印象材を少量で盛ることができ口唇も汚さずキレイに印象が採得できる、フラビーガムを印象材で起こすことができるなどがある。

▲下顎全部床義歯装着時のオトガイ部の痺れの対応にコピーデンチャーは有用

「ハードモード義歯臨床論」を受講して

セミナーの内容自体は経験の浅い先生が受講しても理解しやすい内容であり、普段義歯臨床に携わる歯科医師の先生方にとっても参考になるセミナー内容であった。

自身は普段一般歯科治療を行なっていても、土地柄か義歯治療に触れる機会が少ない。ただ、本セミナーで紹介された対処法をしっかりと頭に入れて、フラビーガムや顎堤の吸収が著しく認められるような難症例患者に遭遇した場合、セミナーで学んだことを活かして対応する所存である。特に、概形印象時にシリンジを使うポイントなどは明日からの臨床で実施していきたい。

本記事を通じて、1D主催の「ハードモード義歯臨床論」を視聴してみたい方は、2023年4月24日までは見逃し配信があるため、気になる方はプレミアム会員に登録して受講することをお勧めする。

本記事で紹介した内容以外に、ゴシックアーチやコピーデンチャーの有用性などに加え、咬合床の作り方や咬合採得のポイントなどにも触れられている。歯肉頬移行部に上手く義歯の床縁を設定するために意外なものが使われていることも知ることができ、大学教授として学生にはあまり言えない内容などもセミナーの中で述べられており、非常に充実した内容だったというのが本セミナーを受けた感想だ。


1Dセミナー「ハードモード義歯臨床論」

▲1Dプレミアム登録で上記セミナーが見放題!

「ハードモード義歯臨床論」を今回主催した1D(ワンディー)では歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士向けの情報を発信しており、歯科臨床を中心としたテーマのセミナーがオンラインで定期開催されている。

1Dプレミアム会員(月額9,800円)になると、オンラインセミナーが見放題となっている。プレミアム会員にならずにセミナー受講すると12,800円の受講料がかかるため、他に気になるセミナーもあるのであればプレミアム会員に登録した方が良いかもしれない。


月額9,800円でセミナー見放題「1Dプレミアム」

本記事で紹介した内容が読者の日常義歯臨床の一助になれば、嬉しい限りである。


編集後記

岡山のアールエフさんにレントゲン装置のお話を聞きに行きました。アールエフさんといえば、東京駅前の大きな看板に描かれているキャラクターが目を惹きますが、口腔内カメラやレントゲン装置が展示されています。
お菓子や飲み物などのおもてなしも素晴らしく、酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターが500円と非常に安く販売されていたのが印象的でした。


岡山の名物に「レモンラーメン」というものがあるのですが、アールエフ岡山店の営業担当の方がおすすめしてくれたラーメン屋さんへ行きました(すぐ近くにあります)。とんこつラーメンとレモンは意外に合うと個人的には思いましたが、結構好みが分かれそうです^^;

アールエフ岡山店の近くにあるラーメン屋さんなので、もしお立ち寄りになられる場合、ぜひお立ち寄りください!

アールエフ岡山店
https://rfsystemlab.com/

ラーメン太郎
https://g.co/kgs/zAU47T


古川 雄亮(ふるかわ ゆうすけ)
日本矯正歯科学会 所属

東北大学歯学部卒業後、九州大学大学院歯学府博士課程歯科矯正学分野および博士課程リーディングプログラム九州大学決断科学大学院プログラム修了。歯科医師(歯学博士)。バングラデシュやカンボジアにおいて国際歯科研究に従事。イエテボリー大学歯学部 "Oscillation course" 修了。2018年より、ボリビアのコチャバンバで外来・訪問歯科診療に携わり、7月から株式会社メディカルネットに所属。主に、DentwaveやDentalTribuneなどのポータルサイトにおける記事製作に携わり、2019年7月よりメディカルネットの顧問。離島歯科医療に従事後、本島で歯科臨床に従事している。

記事提供

© Dentwave.com

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