アライナー失敗学 講師:「常盤 肇」先生

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アライナー失敗学 イベントレポート
アライナー失敗学
2021年10月25日(月)、1D(ワンディー)主催のセミナー「アライナー失敗学」が開催された。講師は日本矯正歯科学会指導医である「常盤 肇」先生で、現在は新宿区で常盤矯正歯科医院を開業されており、ワイヤー矯正のみならず、マウスピース型矯正装置を用いた矯正歯科治療も行っている。

多くの歯科医院でインビザラインやクリアコレクトを筆頭としたアライナーによる矯正治療が患者に提供されるようになっているが、「アライナーは簡単にできそうだからクリニックに導入しよう」と安易に手を出して患者とトラブルに発展するケースが増えている。

アタッチメントを取り付ける位置が一つ異なるだけでも予想外の歯の動きを招くこともあれば、IPRのやり方を間違えると患者が知覚過敏を訴える原因につながることもある。アライナーに関する知識や経験を十分有していても起こり得るトラブルであるため、失敗した時にしっかりとリカバリーできるのが肝要であることを常盤先生は述べていた。


▲セミナーの様子(「常盤 肇」先生(左))

アライナー失敗学 概要(20:00-22:00)
  • アライナー矯正の特性
  • 失敗する原因は?
  • 失敗しない症例選択
  • アタッチメントの付け方
  • IPRのコツ
  • 患者説明(コンプライアンス)
  • 実際の失敗症例
  • 患者対応とリカバリー方法
  • 質疑応答(講義後に30分)
「アライナー矯正を始めようと思っている」「アライナーで失敗しないスキルを習得したい」「失敗した時のリカバリー方法を学習したい」という方に本記事に目を通すことをお勧めしたい。

「アライナー失敗学」で話された全ての内容を紹介することができないため、特に自身が関心を抱いたIPR (Interproximal reduction) の考え方にフォーカスし紹介したい。


IPRの意義
矯正歯科治療で行われるIPR(ディスキング・ストリッピング)の目的として以下が挙げられる。
  • 上下の歯のバランスの改善
  • ブラックトライアングルの縮小
  • 歯を並べるためのスペース形成

エナメル質の厚みを考慮し、0.2mmから0.5mmの量をIPRにより削除し、髪の毛数本分の隙間を歯間部に形成していく。矯正の既往(IPRの既往)も考慮して削除量を設定することが重要なのは言うまでもない。

IPRの一般的な手順は以下の通りである。

  • IPR専用の器具で必要な量の削除
  • IPRゲージで削除量の確認
  • ストリップスによる研磨
  • フッ素製剤の塗布


特に、叢生の強い箇所でIPRを行う際は十分気をつけないといけない。不用意にIPRを行うと、歯にステップができるなど過剰切削の原因となり得る。

仮に、提示されたセットアップにおいて、叢生が強いなどでIPRを行うタイミングに無理があれば、ドクターの判断により時期をずらすなどの対応が必要である。

セットアップはあくまで歯がキレイに並べられた製作物であり、セットアップの可否を最終的に判断するのは歯科医師である。提示されたセットアップの通りに行えば全く問題ないと考えるのは非常に危険なことである。

常盤先生はIPRを行う際に気をつけるべきポイントを紹介した。

  • IPRを行う上で必要な技術の習得
  • IPRに必要な機器の準備(オートストリップス、IPRゲージetc.)
  • 歯の解剖学的形態の理解

歯の形態に配慮し、IPR専用の機器を用いて適切な量を削除することが肝要である。

▲医師は患者の利益になる治療を提供しなくてはならない

「アライナー失敗学」受講後の感想
セミナーに参加した自身の感想だが、アライナーで失敗しないためのポイントが凝縮されている内容であったように思う。セミナーのテーマ自体があまり取り扱われない内容であったため、既にアライナー矯正を行っている自身にとっても非常に有益な内容であった。

特に考えさせられたのが、アライナー矯正がうまくいかなかった時のリカバリーのところである。質疑応答では、参加者からマウスピース矯正により生じた臼歯部離開へのリカバリーに関連した質問が多くなされていた。マウスピースは厚みがあるため、TCHなどの食いしばりによる臼歯圧下には気をつけなくてはならない。

矯正歯科臨床に長く携わっている常盤先生でもアライナー矯正後のリカバリーを行うことがあるため、特に、これからアライナー矯正を始めるにあたり失敗したくない歯科医師の方には本セミナーの受講を改めてお勧めしたい。
本記事をご覧になり、「アライナー失敗学」のセミナーを視聴してみたいとお考えの方は、下記のリンクからセミナーの概要をチェックされることをお勧めする。本セミナーの動画を視聴することも可能である (2022年4月25日(月)まで配信される予定)。

1Dセミナー「アライナー失敗学」
今回、「世界一わかりやすい嚥下機能検査」のセミナーを開催した1D(ワンディー)では歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士向けの情報発信を行なっており、臨床やライフスタイル、経営など様々なテーマをしたニュースや、著名なドクターから学べるオンラインセミナーなどが逐次開催されている。

自身も1Dの会員であり、会員同士の交流やLINEを活用した転職斡旋など、他にも様々なサービスを利用することができる(無料で会員登録可能)。

1D(ワンディー)HP
本記事の内容がこれから嚥下機能検査を始めようと考えている方や既に診療で実践している方の参考になれば、非常に嬉しい限りである。
古川 雄亮(ふるかわ ゆうすけ)
日本矯正歯科学会 所属

東北大学歯学部卒業後、九州大学大学院歯学府博士課程歯科矯正学分野および博士課程リーディングプログラム九州大学決断科学大学院プログラム修了。歯科医師(歯学博士)。バングラデシュやカンボジアにおいて国際歯科研究に従事。イエテボリー大学歯学部 "Oscillation course" 修了。2018年より、ボリビアのコチャバンバで外来・訪問歯科診療に携わり、7月から株式会社メディカルネットに所属。主に、DentwaveやDentalTribuneなどのポータルサイトにおける記事製作に携わり、2019年7月よりメディカルネットの顧問。離島歯科医療に従事後、本島で歯科臨床に従事している。

記事提供

© Dentwave.com

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