2018年第36回日本顎咬合学会学術大会『真・顎咬合学 輝け 日本の歯科臨床』に参加して

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6月9日(土)10日(日)の両日に東京国際フォーラムにて日本顎咬合学会第36回学術大会が開催されました。当日は、日本全国より歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士が参集し、大変盛会でした。今年のテーマは、『真・顎咬合学 輝け 日本の臨床!!』を主題に大変活発な議論が交わされました。今回の学術大会で私が気になった2つ講演会を報告したいと思います。
まず、海外から招聘されたAvishai Sadan先生の『Practical Solutions for Complex Rehabilitations Using Adhesive Dentistry』のご講演です。先生のご報告は、低侵襲で機能的、審美的な治療を報告されました。患者さんの要求と希望をかなえながら、様々な材料と設計を駆使した症例を供覧されました。
とくに目を見張った症例は、エナメル質形成不全症の患者さんに対するオールセラミックによる治療でした。支台歯形成をすることなく、エナメル形成不全の歯牙に接着し咬合と審美を回復させる手技は圧巻であった。先生の講演では、接着するにあたり、ラバーダムを使用した防湿と口腔内でのサンドブラスト処理による完璧な接着前の術前処置の重要性を教唆されました。20年前であれば、エナメル質形成不全症といった症例では、象牙質への接着という大きな問題のために、低侵襲な治療は不可能でしたが、昨今のボンディングという歯科医療の進歩により可能となりました。とくにデジタルデンティストリーの進歩により診査診断までほぼ印象採得、模型製作まで行われ最終の作業模型のみを間接法にて補綴物製作される過程も細かに説明され、大変勉強になりました。また、未成年の症例では、セラミックを使用せずにポリマー系の材料を選択することにより、歯牙の萌出を待ちながら治療を行うという低侵襲な治療も新しい歯科治療の選択として参考になりました。
講演の要点
・支台歯、補綴物の接着界面を確実に形成する。
・年齢に応じた最適なマテリアルを選択する。
・セラミック、コンポジットレジンによる治療の優位性と限界を認識する。
会場は、最新の接着を持いた複合的な修復治療の勉強をしようとする歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士で会場は満席であった。
今回、もう一つ注目した講演は2017年に薬事認可され、2018年2月に発売された炭酸アパタイト骨補填材に対する講演でした。東京医科歯科大学の立川敬子先生による新しい骨補填材に対する講演は、薬事承認にいたる過程からインプラントに応用した多くの症例を供覧されました。今回発表され炭酸アパタイト製人工骨の『サイトランス グラニュール』は日本で初めて発売されたインプラント埋入を前提とした骨補填材です。人工の骨補填材としては、ハイドロキシアパタイトが代表的なものでした。しかし、ハイドロキシアパタイトは生体親和性という点では、極めて低く長期に体内に残存することは、術後感染の原因になるリスクがありました。今回、発表された『サイトンランス グラニュール』は、『骨は、コラーゲンといった有機物や骨アパタイトから成り立っていること』に注目して開発された骨補填材です。今回のご講演でも炭酸アパタイトを主成分とする『サイトランス グラニュール』は、限りなく自家骨に近い生体反応を示し、これからのインプラントへの応用、歯周病への応用、悪性腫瘍や外科的な骨欠損への応用が考えられ、メイド イン ジャパンで開発、発売された本材料は今回の学術大会の『輝け 日本の歯科臨床!!』にふさわしいご講演だったと思います。
サイトランス グラニュールの製品写真 SサイズとMサイズが用意されている。

  • サイトランス グラニュールの走査電子顕微鏡像 (Sサイズ bar=1mm) (株)ジーシー提供


  • ラット頭蓋骨欠損に移植した炭酸アパタイト
    石川邦夫、Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan 19, 390-395(2012)
講演の要点
・炭酸アパタイト顆粒の製造に成功し、歯科領域の人工骨として薬事承認を得た。
・インプラント埋入を前提とした初めて認可された骨補填材である。
・自家骨にほぼ近いリモデリングとともに吸収され、骨に置換される生体親和性材料である。

プロフィール

内田 昌德(うちだ よしのり)
医療法人鶴翔会 内田歯科医院
長崎大学大学院歯学研究科(口腔生理学専攻)卒業
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