熱血!仮歯塾 8分で完成させるためのコツとポイント超解説

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▲1Dオンラインセミナー
「熱血!仮歯塾 」イベントレポート
8分で仮歯を完成させるためのコツとポイント
2022年01月28日(金)、1D (ワンディー) 主催のオンラインセミナー「熱血!仮歯塾」が開催された。講師は明海大学歯学部機能保存回復学講座オーラル・リハビリテーション学分野教授の「松田 哲」先生。
突然だが、本記事を読んでいる皆さんは仮歯を何分で作製することができるだろうか?一言に仮歯と言っても、デュラシールでカバーするだけであったり、即重レジン(ユニファースト)を用いアルジネート法や団子法で作製するなど、様々だろう。装着するまでの時間もそれなりにかかる。
特に、テンポラリークラウン(TeC)の作製を日常臨床で頻繁に行う読者は多いのではないか。ルーティンで行うことが多いが、手間や時間がかかり、かつ難しいと感じる歯科医師や歯科衛生士も実際は多い。
講師の松田先生は「プロビジョナルレストレーションには精度、TeCには早さと手軽さが求められる。形成や印象を考慮すると作製する時間は限られる」と述べていた。
本セミナーでは、手早く簡単にTeCを作製するコツやポイントなどを松田先生が熱血指導する内容になっている。松田先生曰く、コツやポイントをおさえれば、TeCを8分程度で作製し装着することもできるそうだ。


▲「熱血!仮歯塾」オンラインセミナーの様子(「松田 哲」先生)

「熱血!仮歯塾」 概要(20:00-22:00)

  • プロビジョナルレストレーションとTeCの違い
  • 仮歯作製に用いる材料および種類
  • クラウンとブリッジの各々の特徴
  • 動画で学ぶ仮歯製作の流れ
  • 仮歯の咬合調整のポイント
  • 仮歯を手早く完成するためのコツ

▲TeCは短期間使用が前提

「手早く簡単にTeCを作れる方法が知りたい」「TeC製作時のポイントや調整のコツを学びたい」「診療を効率化するスキルを身につけたい」など、普段臨床で仮歯を製作する機会の多い歯科医師や歯科衛生士にぜひ読んでいただきたい。
セミナーを実際に受講した個人的感想だが、特に仮歯の咬合調整のポイントが動画を用いて詳しく解説されており、非常に分かりやすかった。本記事でも咬合調整の内容に触れているので、ぜひご覧いただければ、嬉しい限りである。
「熱血!仮歯塾」の全容を本記事で紹介することは難しいため、本セミナーで紹介された「パラフィンワックスを用いたTeCの作製方法」を紹介する。


▲「ティッシュ・レジン・団子法」によるTeC作製動画の一場面

パラフィンワックス法

文字通り、パラフィンワックスをコアとしてTeCを作製する方法だが、手順を紹介しよう。
①パラフィンワックスの軟化
お湯で温めて赤からピンク色に変わるくらいで取り出し、2重に折りたたむ。
②ワックスコアの採得
口腔内に入れ、咬合面と歯頸部を圧接し、3wayシリンジでコアを冷却する。
③対象歯の補綴物除去と概形成
割れなくて外れないTeCを作製するためには支台歯の形態が重要となる(FMCの場合、クリアランスが1.2mmから1.5mmを確保するなど)。
④支台歯への分離材の塗布
綿球で隣在歯にも塗布する(松田先生曰く、隣在歯のアンダーカットに分離材を入れておくとレジン硬化後に外しやすい)。

▲パラフィンワックスコアの作製手順

⑤口腔内に圧接
ワックスコアにユニファーストの液を塗布し、筆積みで盛っていく(ブリッジの形態の場合、すぐに硬まって欲しいポンティック部分から盛る)。口腔内に持っていき、咬合面と歯頸部を圧接。コアの隙間から出た余剰レジンはピンセットなどで除去。完全に硬化する前にコアを上下させて外しやすいようにする。
⑥ウォッシュ
マージンが不明瞭な箇所に即重レジンを筆積みで追加し再度口腔内に圧接する(松田先生曰く、ウォッシュに要する時間を省きたい場合、支台歯のマージン部に筆積みで即重レジンを盛っておくのがお勧めとのこと)。
⑦トリミング
硬化後、マージンが明瞭であることを確認。マージンを見ながらカーバイドバーで形成する(ジルコニアのバーが切れ味が長持ちするのでお勧めとして紹介)。
⑧咬合調整
残存歯のみの咬合状態を変えずに、TeCを入れて咬頭嵌合位→前方・側方運動(指で押さえる)の順で咬合調整していく(レジン硬化前に支台歯へ戻し、咬頭嵌合および側方運動を患者にさせることで、TeCに対合歯(咬頭)の動いた後が圧痕として残り、裂溝など咬合面形態の参考になり、TeC作製がより早くなる)。
⑨研磨
ペーパーコーンにワセリンを塗布してTeCを研磨し、アルコールで清拭する。
⑩装着
TeCの使用期間に応じて仮着セメントを選択。

「熱血!仮歯塾」ではTeCの使用期間に応じた仮着セメントの選び方についても紹介されており、非常に面白かった。その他、「ティッシュ・レジン・団子法」の手順、ブリッジTeCの作製手順、咬合紙選択のポイントなども併せて解説されていたので、講義内容が気になる読者がいれば「熱血!仮歯塾」の受講を推奨する。



▲アプリ(Procreate)で実際にスケッチした右上6番咬合面

「熱血!仮歯塾」受講後の感想

今回セミナーを受講して特に考えさせられたのが、TeCの形態だ。素早く綺麗な形にTeCを作製することは良いことだが、短期間の使用に留まるので歯の解剖学的構造を完璧に再現しなくても良いのではないか。マージンを合わせ、隣在歯とのコンタクトの強さを調整し、適切な咬合調整がなされていれば、歯の形をプロビのようにキレイに仕上げなくても問題ないように思う。

学生時代に歯のスケッチや歯型彫刻の実習を受けていたが、綺麗な仮歯を早く作れないことに悩んで、iPadのアプリを活用してスケッチ(上画像)を行っていた時期がある。その甲斐あってか、お陰で上司に褒められる仮歯を短い時間で作製できるようになった。ただ、プロビではなくTeCを作製するのであれば、形にこだわるのはあまり良いことではないように感じている。自身は日常臨床でTeCを作製する機会は少ないが、TeCの形態にこだわるよりもTeCをいかに短い時間で作製できるかがポイントになると考察する。

本記事をご覧になり、1D主催の「熱血!仮歯塾」のセミナーを視聴してみたいとお考えの方は、下記のリンクからセミナーの概要をチェックされることをお勧めする。本セミナーの動画を視聴することも可能である (視聴期限:2022年7月25日まで)。

古川 雄亮(ふるかわ ゆうすけ)
日本矯正歯科学会 所属

東北大学歯学部卒業後、九州大学大学院歯学府博士課程歯科矯正学分野および博士課程リーディングプログラム九州大学決断科学大学院プログラム修了。歯科医師(歯学博士)。バングラデシュやカンボジアにおいて国際歯科研究に従事。イエテボリー大学歯学部 "Oscillation course" 修了。2018年より、ボリビアのコチャバンバで外来・訪問歯科診療に携わり、7月から株式会社メディカルネットに所属。主に、DentwaveやDentalTribuneなどのポータルサイトにおける記事製作に携わり、2019年7月よりメディカルネットの顧問。離島歯科医療に従事後、 本島で歯科臨床に従事する傍ら、記事の監修・執筆、歯科医師国家試験模擬試験の編集業務、企業コンサルタント、マウスピースの製品管理、オンライン診療などを個人事業主として行っている。

記事提供

© Dentwave.com

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