第63回春季日本歯周病学会オンライン学術大会 イベントレポート

第63回春季日本歯周病学会オンライン学術大会


2020/07/13~7/31 第63回春季日本歯周病学会オンライン学術大会
7/13(月)、第63回春季日本歯周病学会オンライン学術大会に参加した。5月下旬に福島県での開催予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期され、今回はオンラインでの開催となった。私自身、様々な学会に参加したことはあるが、オンラインでの学会参加は今回が初めてである。
第63回春季日本歯周病学会オンライン学術大会の大会長は高橋 慶壮 先生(奥羽大学歯学部歯科保存学分野 教授)であった。
第63回春季日本歯周病学会オンライン学術大会のテーマは「歯周病学のプロフェッショナリズムー歯周治療の実践知と科学知の融合を目指してー」。個体差が大きく多因子性疾患でもある歯周病の治療において、論文やガイドラインなどの科学的根拠に臨床経験を上手く融合する必要があるという想いが大会テーマに反映されている。
第63回春季日本歯周病学会オンライン学術大会 アウトライン
・特別講演 (Ex. Precision Medicine for Periodontitis and Peri-implantitis)
・教育講演 (Ex. 「人生100年時代」の医療・介護)
・シンポジウム(Ex. 歯科衛生士が知るべき口臭への対応)
・認定医・専門医教育講演 (Ex. 歯周治療におけるレーザーの応用)
・市民公開講座 (Ex. 歯周病と糖尿病の関係)
・ランチョンセミナー (Ex. 次世代型レーザーによる、新しい歯周治療の可能性)
・歯科衛生士特別講演(歯周組織に侵入するPorphyromonas gingivalis どうしたらいい?)
・国際セッション
・一般演題口演
・歯科衛生士口演(Ex. 歯周基本治療におけるマイクロスコープの応用)
・ポスター発表

第63回春季日本歯周病学会学術大会はオンラインのみの開催となったが、これまでのように、特別講演から市民公開講座まで内容は多岐に渡っていた。昨年の日本歯周病学会学術大会に参加していたが、今年のオンライン学術大会も講演内容は決して劣っていないように思う。
動画はオンデマンド形式の為、学会参加者は好きな時に好きな場所で自由に視聴することが可能である。また、ポスター発表についてもWeb上で閲覧することができる。
今回、様々な講演をオンデマンド形式で数日に渡り視聴することができたので、市民公開講座を含めて聴講することにした。大会長である高橋慶壮先生による市民公開講座(歯周病と糖尿病の関係 〜歯周医学の貢献〜)では、「28本の歯に5mmの歯周ポケットが存在すると手のひらの面積とほぼ同じである」など、歯周病が全身に大きな影響をもたらすことを一般生活者でもイメージしやすい表現が多くなされていた。
市民公開講座の中では肥満による歯周病への悪影響についても解説されており、歯科臨床における患者説明の参考になった。歯科衛生士も含め歯科医師にも非常に勉強になる内容より、ぜひ市民公開講座を視聴していただきたい。
加えて、天野敦雄先生(大阪大学)による歯科衛生士特別講演(スイーツセミナー)も視聴した。18歳以前まではPG菌に感染しておらず、歯周病進行患者の90%にPG菌の感染が認められるという話は初耳だった。PG菌が細胞やプラークなどに侵入し、口腔内細菌フローラを大きく乱すことで、難治性の歯周病を発症させるなど、興味深い話も多かった。スイーツセミナーは特に歯科衛生士の方に視聴をお勧めしたい。歯周病治療は歯周ポケットからの出血を無くすことが主な目的であることを十分理解できることだろう。
以下、今回聴講した講演の中で個人的に最も興味を抱いた「特別講演Ⅱ COVID-パンデミックから歯周病治療と研究の将来を考える」の内容を一部紹介する。
本記事が読者の参考になれば幸いである。

第63回春季日本歯周病学会オンライン学術大会

▲河合敬久先生のオンライン講座で使用されたタイトルスライド


特別講演ⅡCOVID-パンデミックから歯周病治療と研究の将来を考える
講演者は河井敬久先生 (Department of Periodontology, Nova Southeastern University College of Dental Medicine, USA)で、2017年からアメリカのフロリダ州で研究に従事している。
講演の冒頭でアメリカにおける新型コロナウイルス感染状況の説明があり、歯科での新型コロナウイルス対策の現状も紹介された。その後、日本では海外と比較して、新型コロナウイルス感染後に重症化していない理由について、過去の研究報告などをベースに解説した。
河井先生は講演の中で「新型コロナウイルスに関して歯科研究者が表舞台に立たないのは残念だ」と述べていた。確かに、歯科関係者が新型コロナウイルスの関連ニュースで登場しているのを見たことはない。歯科医療従事者が新型コロナウイルスの感染リスクが高い職種として紹介されているが、我々が新型コロナウイルスに対して何ができるのかは世間で議論されていない。
新型コロナウイルスは口腔内でどのような挙動を示し、口腔組織・細菌にどのような影響を与えるのだろうか?また、歯周病と新型コロナウイルスに何か相互関係はあるのだろうか?こんな疑問がふと思い浮かんだ。
つい先日、歯周病罹患によって新型コロナウイルス感染症が重症化する可能性があるというニュースが配信された。歯周病患者の場合、新型コロナウイルス感染による免疫暴走(サイトカインストーム)が起こりやすいためとの見解があるようだ。
・歯の疾患原因で コロナ重症化のおそれ(2020/07/08)

*免疫暴走(サイトカインストーム):
外来抗原に対抗するため、免疫細胞により作られるサイトカインが過剰に放出されることにより、自身の細胞も攻撃してしまうこと。新型コロナウイルス感染の場合、高齢者や基礎疾患患者でサイトカインストームが起こりやすいことが報告されている。


あくまで個人的な意見ではあるが、新型コロナウイルスの感染や重症化の予防に口腔内衛生が重要であるなどの研究結果が今後報告されていくことで、日本国民の口腔内への関心が高まり歯科への受診が増えるきっかけになることを期待したいものである。
2020年7月現在、PCR検査の増加に伴い、新型コロナウイルス感染者数が東京で100人を超える日が多くなった。歯科治療を行う立場として、患者やスタッフの安全のために感染対策を徹底しながら診療しなくてはならないことを河井先生の講演を通じて改めて感じた。
第63回春季日本歯周病学会オンライン学術大会

▲市民公開講座 歯周病と糖尿病の関係 〜歯周医学の貢献〜


初めてのオンライン学術大会参加を終えて
今年の第63回春季日本歯周病学会オンライン学術大会は、新型コロナウイルス流行の影響を大きく受け、オンラインでの開催となった。学会にオンラインで参加すること自体、今回が初めてだったが、自宅で好きな時間に興味のある講演を視聴できる点は非常に良かった。また、分かり難かった所を繰り返し視聴することができたのもオンラインのメリットである。今回の学会参加を通じて、今後の歯周病治療において特にレーザーの活用が進んでいくことを予感した。
様々な学会において、春季日本歯周病学会学術大会のようにオンラインでの開催が増えていくに違いない。オンラインでの開催であれば、遠方のために来場できない方々にとっても参加することができるため、メリットも大きい。交通費や宿泊費といった経費削減にもつながる。同じ時間帯に行われる講演もオンデマンド視聴なら両方聴講することも可能だ。
オンラインのデメリットを挙げるとすれば、登壇者やポスター発表者に対し講演内容に関して直接質問することができない点だろうか。オンデマンド視聴の場合、講演視聴のみのため、どうしても受動的になってしまう。受講後に分からないことや聞きたいことなどを登壇者やポスター発表者に質問でき、後で回答を得られるようなシステムが必要なのかもしれない。
また、オンライン講座では、著作権などの関係で講演動画の録画やスクリーンショットによる撮影は禁止されている。処罰の対象にもなり得るため、オンライン講座受講の際は参加規約をきちんと守ることを推奨する。
30,000人を超えるDentwave会員にもオンラインでの学会参加をぜひ体験してもらいたい。
古川 雄亮(ふるかわ ゆうすけ)
  • 日本矯正歯科学会 所属

東北大学歯学部卒業後、九州大学大学院歯学府博士課程歯科矯正学分野および博士課程リーディングプログラム九州大学決断科学大学院プログラム修了。歯科医師(歯学博士)。バングラデシュやカンボジアにおいて国際歯科研究に従事。イエテボリー大学歯学部 "Oscillation course" 修了。2018年より、ボリビアのコチャバンバで外来・訪問歯科診療に携わり、7月から株式会社メディカルネットに所属。主に、DentwaveやDentalTribuneなどのポータルサイトにおける記事製作に携わり、2019年7月よりメディカルネットの顧問。離島歯科医療に従事後、本島で歯科臨床に従事している。

記事提供

© Dentwave.com

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