Part2【後編】 5G ネットワーク を活⽤した次世代の⻭科治療:XR(AR・VR)技術と歯科用マイクロスコープ下での根管治療アプローチ

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今回紹介する症例は、上顎左側第二大臼歯の再根管治療に際し(図1, A)、CBCTによる診断にもかかわらず、歯根と根管システムの形態の把握が困難で、根管口の同定と穿孔のリスクの評価が困難であった。CBCTの体軸断面は、歯根中央レベルの画像で、四葉のクローバーのような形態に見える(図1, B)。歯根が癒合していることから、非定型的な根管形態であることが推測できる。

 歯科用マイクロスコープで髄床底を観察すると(図2, A)、根管口の位置が推定できる(図2, B)。MB2が発現する部位も特定できるが、その存在は分からない (図2, C)。CBCT画像から当該歯の歯根形態を把握し、頭の中で3次元的な映像として理解するのは容易ではない。

 XR技術を用いて、当該歯をバーチャル3Dモデルとして再構築すると(図3, A〜D)、根癒合と非定型的な歯根形態、根面の深い陥凹、根尖孔の位置とその大きさを容易に直感的に把握できる。

 当該歯の髄床底をバーチャル3Dモデルで観察すると(図4)、根管口から根尖方向に走行する根管の形態が非常によく観察できる。歯科用マイクロスコープ下の観察では同定できなかったMB2の存在と、その位置と開口部の方向、MB1とMB2の吻合までよく理解できる。根管口から根尖孔までの根管の走行は、いろいろな角度から自在に観察できる(図5)。根管の湾曲方向と強さ、根管吻合の位置、根管形態が走行に伴い変化する様子がよく理解できる。また、根尖孔の位置と大きさも把握できる。

 歯科用マイクロスコープで髄床底を観察する前に、バーチャル3Dモデルで髄床底にある根管口から根尖方向に走行する根管形態を把握可能だ。そのため、髄床底の観察に対しては、飛躍的に効果を高められる(図6)。

 バーチャル3Dモデルを活用すれば歯科用マイクロスコープで観察する画像が、どのような意味を持つのかを理解するトレーニングで非常に役に立つ。従来は、多くの症例を通じてこの臨床的知識を学ぶため時間を費やしていたからだ。
 歯科用マイクロスコープで観察する髄床底の下に広がる根管形態のイメージが事前に把握できていれば、根管を見つけることも、根管口をどれくらいどの方向に拡大すべきかを容易に達成することができる(図6, B)。もう根管を探すために、時間をかけてあちこち削る・、パーフォーレーションを起こすこともなくなるだろう。

Reference:
1) The detection of periapical pathoses in root filled teeth using single and parallax periapical radiographs versus cone beam computed tomography – a clinical study A. Davies, F. Mannocci, P. Mitchell, M. Andiappan & S. Patel. International Endodontic Journal, 48, 582–592, 2015.

図1:図.左側上顎第二大臼歯の口腔内写真とパノラマエックス線画像
図2:左側上顎第二大臼歯の髄床底の写真
図3:XRを用いたバーチャル3Dモデルで観察する左側上顎第二大臼歯の歯根形態
図4:XRを用いたバーチャル3Dモデルで観察する左側上顎第二大臼歯の髄床底
図5:XRを用いたバーチャル3Dモデルで観察する左側上顎第二大臼歯の根管形態: MB1, MB2, DB, Pの根管形態が観察できる。
図6:歯科用マイクロスコープで髄床底画像とバーチャル3Dモデルで髄床底にある根管口から根尖方向に走行する根管形態
岡﨑先生プロフィール
株式会社Dental Prediction
CAO 岡﨑 勝至 先生
歯科医師・医学博士・米国歯内療法専門医

ニューヨーク大学歯学部准教授として Postgraduate program(歯内療法科大学院)で多くのコースディレクターを歴任し、様々な臨床研修プログラムを運営。​
2022年、東京歯科大学准教授を拝命し着任。​
愛知学院大学歯学部で歯学修士授与、歯科医師免許取得。​
愛知医科大学にて解剖生理学の医学博士号授与。​
ミネソタ大学発生外科学教室で客員研究員として勤務。​
ニューヨーク大学歯学部 Postgraduate program 修了、米国歯内療法専門医資格取得。​
現在、ニューヨーク大学と東京歯科大学の臨床教育に従事し国際的な活動と共に、株式会社デンタルプレディクションの最高学術責任者を務め、歯科分野におけるデジタルツインをリード。

記事提供

© Dentwave.com

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