5G ネットワークを活用した次世代の歯科治療 Part1

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Digital Twinsデジタルツイン

没入型バーチャルリアリティは、空間を理解するための強力なビジュアライゼーションツールとして、その利用が進んでいる。XR(クロスリアリティー)は、VR(Virtual Reality)、AR(Augmented Reality)、そして、MR(Mixed Reality)などの視覚技術の総称だ。ヘッドマウンティングデバイス (HMD)を装着して仮想空間内に入り、参加者がアバターとして互いに認識できる。歯科領域の活用では、CBCTデータから再現したバーチャル3Dモデルを共有し、円滑なコミュニケーションを図ることができる。

XR技術は、ビジュアライゼーションツールのひとつ。現実世界の一部を仮想世界で再現し、そこで現実世界では不可能な観察やシミュレーションを可能にする。この概念がデジタルツインだ。最新の無線携帯電話技術である第5世代(5G)ネットワークと連携したデジタルツインの構築は、その優れた通信技術の信頼性から、医療システムの効率化や医療教育水準の向上だけでなく、遠隔地での医療教育や診察が可能となり、地方の医療レベルを向上できる可能性を提供する。

医療メタバースの取り組み

歯科界では、最先端技術XRの活用は始まったばかり。私は大学教育者、米国歯科専門医として、このXRを活用した歯科デジタルツイン普及に取り組んでいる。すでにいくつかの海外の大学と没入型バーチャルリアリティを活用した研究を進めており、歯科医師を目指す学生と専門医を目指す歯科医師が、どのような認識を持ったかを調査した。結果は全体として、参加者はバーチャルカンファレンスを活用したHMD-VR環境での教育効果を肯定的に評価した。

医療メタバースの取り組みは、海外では、日本とシンガポール、サウジアラビア、カンボジア、ニューヨーク(米国)と国際遠隔医療連携を実現した。日本とシンガポール間の遠隔医療教育支援は、世界初となる5Gによるメタバース活用であった。(https://news.yahoo.co.jp/byline/minamiryuta/20220329-00288567)国内では、3大都市を結ぶ遠隔医療教育の実証実験をおこなった。歯科知識・技術の共有・習得を目的とした実証実験その有効性を検証した。(https://corp.mobile.rakuten.co.jp/blog/2022/0629_01/)

XR(クロスリアリティー)
臨床教育の現場では、人体解剖学は、すべての医学分野の基礎となる重要な医学の主要科目だ。
しっかりとした解剖学の知識がないまま手術をすると、死亡率や罹患率の上昇につながる。没入型VR活用によるビジュアライゼーションは、空間認識を飛躍的に高め、3次元的解剖構造の理解を助けるという点で顕著な効果を発揮する。VR空間で、構造の分離や重ね合わせ、画像の360°回転などを操作できる。XR技術を用いた解剖学教育は、学習効率と学生の総合力を高めることができ、学生の臨床的思考能力の育成を支援し、医学の基礎知識を習得させるだけでなく、自主的な学習を促進する。
臨床の現場では、歯科医療の多くの治療で、確固たる術前症例検証シミレーションが確立されていない。安心安全な治療を提供する観点から、術前症例検証シミレーションが望ましいアプローチだが、実現されていない。この実現を妨げる技術的課題を克服出来なかったからだ。この仮想空間を用いたデジタルツインの実現は、この課題に向けた大きなソリューションとして注目されている。実際の活用方法は、患者のCBCT情報、口腔内画像情報を統合して、仮想空間メタバースに3次元映像を再構築。つまり、あなたは治療予定の患者映像情報を、術前に仮想空間に再現できる。あなた自身が仮想空間に入り、現実空間では不可能なその解剖学的観察とリアルタイム治療シミレーションを実施。これにより、詳細な術前検証が可能になり、治療当日、あなたは安心安全で正確な治療を提供できる。
次回は、実際の臨床で活用した症例を紹介する。
岡﨑先生プロフィール
株式会社Dental Prediction
CAO 岡﨑 勝至 先生
歯科医師・医学博士・米国歯内療法専門医

ニューヨーク大学歯学部准教授として Postgraduate program(歯内療法科大学院)で多くのコースディレクターを歴任し、様々な臨床研修プログラムを運営。​
2022年、東京歯科大学准教授を拝命し着任。​
愛知学院大学歯学部で歯学修士授与、歯科医師免許取得。​
愛知医科大学にて解剖生理学の医学博士号授与。​
ミネソタ大学発生外科学教室で客員研究員として勤務。​
ニューヨーク大学歯学部 Postgraduate program 修了、米国歯内療法専門医資格取得。​
現在、ニューヨーク大学と東京歯科大学の臨床教育に従事し国際的な活動と共に、株式会社デンタルプレディクションの最高学術責任者を務め、歯科分野におけるデジタルツインをリード。

記事提供

© Dentwave.com

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