第7回 事業承継や家族の絆も脅かす相続問題

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こんにちは。税理士の三沢です。今回は前回に引き続き『財産の帰属』の問題になりますが、生命保険等の帰属の問題や不当利得返還請求権、未成年者への贈与について、お話したいと思います。   Ⅰ 生命保険等の帰属 (1)基本的な考え方 生命保険金は民法では保険金を受け取る権利は、保険契約により発生するもののため、原則としては受取人の固有財産となり、相続財産には含まれません。故に遺産分割の対象にもなりません。 しかし、相続税法では『相続財産とみなす』との立場をとっており、相続税の計算では一定の非課税枠が用意されてはおりますが、相続財産として課税の対象となっております。 ※非課税枠 500万円×法定相続人の数 また、生命保険金等の財産の帰属は、その保険料を誰が負担したのかによって課税される税目が異なります。税目が異なるということは、同じ金額の生命保険金を受け取ったとしても、支払う税金の金額が異なるということです。 ※生命保険の契約形態と税目の関係
被保険者 契約者 (保険料負担者) 保険金の受取人 適用される税目
問わない 所得税
甲以外 贈与税
相続税
  (2)契約者変更があった場合 生命保険契約において契約者変更があった場合、生命保険契約に関する権利の贈与があったものとして、当該権利の価額に相当する金額について『新たな契約者』に対する贈与税の課税がおこなわれるか?という問題があります。 この、答えは『NO』になります。契約者変更があった場合に、なぜ贈与税が発生しないかは、長くなりますので割愛させていただきますが、我々はよく『出口課税』と呼んでおり、契約者が死亡しない限り、課税関係や生じません。 (3)未成年者の契約 相続税対策として、未成年者の孫を保険契約者及び保険受取人とする生命保険契約を祖父等が締結し、その支払保険料を祖父等が未成年の孫に現金贈与し、その現金を保険金の支払いに充てる事例が見受けられます。名義預金対策にもなりますが、気を付けなければならないポイントがあります。前回の名義預金のお話と重複しますが、贈与の事実を客観的に証明できれば、課税庁はこれを認めております。 ※贈与の事実の証明
  1. 毎年の贈与契約書の作成(法定代理人の記載が必要)
  2. 贈与税の申告及び納付(必ず本人が納付)
  3. 所得税の確定申告書等における生命保険料控除の状況等
  Ⅱ 不当利得返還請求権 不当利得返還請求権とは、民法で定められており、正当な理由がなく、他人の損失によって財産的利益を得た者に対し、その利得の返還請求をできる権利をいいます。 この不当利得返還請求権の消滅時効は10年となっております。 例えば、親が正常な判断能力を無くしてしまっている状況で、成年後見人である子が親のお金を使い込んでしまった場合は、これに該当する場合があります。 この不当利得返還請求権が相続財産にあたるとする地裁の判決もあります。 相続財産云々より、親のお金を使い込んだ事が、他の相続人が知ることになった場合、親族の関係は最悪の結果を招くことも想像するに難しく無いですね。相続を機に、不当利得が表沙汰になることも、多々あることです。   Ⅲ 未成年者への贈与 民法上、未成年者が法律行為を行う場合は、法定代理人である親権者の同意を得なければならないとされております。しかし、贈与の場合は、単純に利益を受けるだけの行為であるため、受贈者が意思能力を備えていれば、未成年者でも法定代理人の同意は必要ではありません。この『意思能力を備えていれば』、がポイントとなります。逆に意思能力が無い、例えば贈与という行為の意味の理解ができない幼児等の場合は、親権者である両親の両方が共同で、子の代理として贈与契約書に署名押印を行うようにしてください。 今回は、よく質問を受けたり、相続対策としてご提案をさせていただいている中から3つを選んで、記載をさせていただきました。 次回以降も、よろしくお願いいたします。
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