第6回 事業承継や家族の絆も脅かす相続問題

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こんにちは。税理士の三沢です。今回は相続税の税務調査で最も重点がおかれるポイントをお話します。それは財産の帰属をめぐる問題です。 『財産の帰属』の問題とは、名義財産の問題といっても過言ではありません。 Ⅰ.名義財産とは 名義財産とは、形式的には配偶者や子・孫などの名前で預金や有価証券を有しているが、実質的にはその者以外の真の所有者がいる場合、つまり、親族の名義を借りているに過ぎないものを名義財産といい、相続税の調査ではこの名義財産は名義人(配偶者や子・孫)の財産ではなく、亡くなった方(被相続人)の遺産となるものを言います。 Ⅱ.相続税調査の重点ポイント名義財産! 国税庁が公表している『平成24事務年度(H24.7~H25.6)の相続税の調査の状況』によると、申告漏れ財産のうち50%超が預貯金と有価証券となっています。 この申告漏れの財産の過半数を占める預貯金等に名義財産がかなり含まれていると思われます。 Ⅲ.名義財産(預金)とされる事例 では、名義財産として認定されてしまう事例を幾つか挙げたいと思います。 (1) へそくり この話をすると、専業主婦の方からは批判されることが多々ありますが、税務署ではこのような取り扱をするものと割り切って読んでください。 妻Aは被相続人(夫)の給与から生活費として費消して残った金額(いわゆるへそくり)を蓄え、被相続人(夫)の了解のもと、預貯金を妻名義で蓄えていた。妻Aは生活費の残りの金額は被相続人(夫)が生前より、余ったお金は、妻Aの裁量に任せると言われていたため、余ったお金が被相続人(夫)より贈与により貰ったものであるから、被相続人(夫)の相続財産ではないと主張します。 しかし、税務当局は、そのへそくりの源泉(誰が稼いだお金が元となっているか)や支配(妻Aが好きに使えなかった)をしていたのは被相続人(夫)だと認定し、当該財産は相続財産だと認定しました。 この場合のポイントは妻名義に多額の預金が貯まった理由が問題となります。そして、妻が専業主婦だったため、自ら、財産を形成できなかったこと、へそくりは、妻が被相続人(夫)からある程度、運用等は任されていたが、実際の支配(使う権限)は被相続人(夫)が有していたこと、過去に妻自身が自らのの親族からの相続等により、財産をもらった事実がなかったこと、贈与は諾成契約のため、なかなか口頭のみでは認められないという事実が挙げられます。 (2) 孫への毎年100万円の贈与 このパターンも本当によくあります。ご本人は贈与をしたつもりでも、税務上は贈与とは認めず、名義預金とされるケースです。 民法の考え方では、贈与による財産の移転時期は『贈与契約が成立した時点』です。贈与は諾成契約のため、お互いの意思が一致していなければ贈与とは認められません。 諾成契約とは、当事者双方の意思表示が合致することにより成立する契約をいい、目的物の引き渡し等を要しないのです。 つまり、贈与とは、当事者の一方が自己の財産を相手方に与える意思表示をし、相手がこれを受諾することによって成立する契約をいいます。 しかし、税法では、考え方が少し異なります。 税法では、贈与は書面による贈与契約の成立のみならず、経済的利益の移転、つまり贈与財産が受贈者に移転(自由に使用・収益等の権限が移転)した時点が、贈与契約の効力発生の時期となります。 つまり、贈与の契約自体が発生していなければ、贈与税の時効という話もないということです。 ではどの様にすれば、贈与が成立していると認められるかは、贈与契約の効力が発生していたかがポイントです。 ※贈与契約の効力が発生していたと推認される場合
  1. 贈与契約書を作成し贈与者及び受贈者が自署押印する
  2. 預金の場合は贈与者の預金口座から受贈者の預金口座に振り込む
  3. 贈与したお金は受贈者が自由に使用・収益・処分できるようになっている
  4. 受贈者の預金口座と贈与者の預金口座の印鑑は別のものにし、通帳も受贈者が管理する
  5. 贈与金額を110万円超にし、税務申告を受贈者がおこない、納税も受贈者の金銭でおこなう。
などなどです。
孫に毎年、贈与をおこない、相続対策は大丈夫と思っておられる方は要注意です。 実は、贈与をした『つもり』になっている場合があるかもしれません。 せっかくの、対策が無意味になってしまう場合が多々あります。是非、事前にご相談していただければ幸いです。 ⇒ 税理士法人K&K Japan 長くなってしまいましたので、続きは、次回に持ち越しさせて頂きます。 次回は、受贈者が未成年の場合の注意点、生命保険等の帰属の問題、他の相続人が、生前に親の財産を使いこんでしまった場合(不当利得返還請求権)など、質問が特に多い事案をお話したいと思います。
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