睡眠時無呼吸症候群・医科⻭科連携の勘所

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睡眠時無呼吸症候群・医科⻭科連携の勘所

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)とは?
 睡眠中に無呼吸と低呼吸(いびき)を繰り返す疾患。日本では2003年に起きた新幹線の居眠り運転事故が契機となり、一般的に知られるようになった。
 SASは単純に呼吸が止まるということだけではなく脳梗塞、心筋梗塞など心血管系の問題が起こりやすいばかりか、糖尿病、緑内障など合併症は多岐に渡っている。重症なSASを治療せず放置すると、8年後の生存率は63%まで低下するという大変ショッキングなデータもある。
 肥満が原因である場合が多いのだが、日本人の場合は骨格の問題から非肥満患者も多く300~500万人の患者が存在すると考えられている。しかしほとんどが未診断、未治療の状態である。
 SASの重症度を表す指標にAHI(Apnea Hypoxia Index)があり軽症5以上、中等度15以上、重症30以上である。重症患者はCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)療法が保険適応となる。歯科での口腔内装置の適応は軽症以上、かつ医科より適応が認められた場合である。
なぜ医科歯科連携が重要か?
 先に述べたようにSAS患者では合併症が多岐に渡っており、他の診療科との連携が必要である。舌根沈下により気道閉塞が起こる閉塞性睡眠時無呼吸症候群と、脳の問題により生じる中枢性睡眠時無呼吸症候群がある。中枢性の場合、歯科単科での対応が難しい。
睡眠医療における歯科の重要性
 睡眠時無呼吸症候群の治療のゴールデンスタンダードはCPAP療法である。これによりAHIが劇的に改善する。しかしCPAPは20~40%程度の患者がドロップアウトすると言われている。その他の治療法として、歯科での口腔内装置がある。日本人に多い非肥満性患者の場合CPAPと同等の治療効果があると言われており、歯科も重要な役割を果たすことができる。しかし口腔内装置を製作したことがある歯科医師は、全国的に地域差がある状態で、これから歯科医師の積極的な取り組みが望まれる。

医科歯科連携を円滑にすすめるための必要事項
1)患者自身の睡眠時無呼吸症候に対する理解
 患者は睡眠中のことが分からないので、自身がSASであるという自覚がないことが多い。
そこでいびき、高血圧症、日中の強い眠気や熟睡感がない、夜間頻尿、起床時の頭痛や寝汗、ベッドパートナーからの睡眠中の無呼吸の指摘などの症状がある場合に、SASである可能性が高いことを説明する。テレビなどで報道されているので、患者は疾患名や交通事故を起こす危険性が高いことについて認識している場合は多い。しかし重症のまま放置すると、高血圧症などに付随した合併症を引き起こし、致死的な転機を迎えてしまうリスクが高いことについては知られていない。そのため疾患に対する十分な説明を行い、検査や治療の必要性を理解してもらうように努めている。

2)医師―歯科医師の密なコミニュケーション
 前述してきたように疾患の特性上、歯科単科で対応することが難しく睡眠医療を行う医師との情報共有が重要である。茨城県の歯科医師会の調査によると、医科からの口腔内装置製作を歯科に依頼し、歯科から返書があった割合は19.2%、口腔内装置の装着後再評価の検査まで行い治療を完結できたものは5.9%と極めて少ない状況であった。コミニュケーションが不足するため、医師からすれば患者が歯科を受診したかどうかも分からない。また睡眠医療の治療の流れを理解していない歯科医師が多く、本来口腔内装置を装着したあと、効果判定のために必要な医科での検査依頼を行わず、きちんと治療が完結できない状態になっている。そのため医師からすると、どの歯科医師が睡眠医療に対応できる歯科医師なのか分からないので、依頼したくても出来ないといった状態も考えられる。


写真1

写真2
写真3
写真4

 上記の問題を解決するために著者は睡眠医療連携手帳を作成(写真1~4)し、患者への睡眠時無呼吸症候群の説明や、医師―歯科医師間のデータ、作業の進行具合を簡単に共有できるようにした。しかも患者が保管することにより、患者にも自身の病状を理解してもらい、治療に参加してもらうといった取り組みを行なっている。
 また睡眠医療連携会を主催し地域の医師、歯科医師に参加してもらうことで、お互いの親睦を深めたり、睡眠医療を行う歯科医師リスト作成の協力を行ってきた(写真5)。

写真5

 現在は新型コロナウイルスの影響で三密となる医療連携会は行うことができない。今後、ICTを応用して対面にかわるコミニュティ作りが課題であると考えている。

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