第75回:メタルボンドか、オールセラミッククラウンか

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JADAの2012年4月号にChristensenによる"間接修復物:変わりつつあるパラダイム"と題するコラムが掲載されている。米国ではメタルボンドからフルジルコニアへという大きな変動が起きつつあるという。米国で最大規模の歯科技工サービスを提供しているGlidewellラボの統計によると、100万点超の間接修復物を製作した2011年のおもな修復物の割合は、フルジルコニア38%、メタルボンド31%、二ケイ酸リチウムガラス15%、ジルコニアベース10%、鋳造金合金4%であるという。従来はメタルボンドが圧倒的であったが、全く様変わりしつつあり、それがタイトルの"変わりつつあるパラダイム"である。従来のセラミックは歯科医の期待はずれであったが、その後登場した新しいタイプのセラミックであるヒートプレス成形の二ケイ酸リチウムガラスやCAD/CAM成形のフルカントゥア(full contour)ジルコニア(フルジルコニア)には歯科医の期待が高まっているという。これらはいずれも基本的にべニアの前装はせず、低コスト化が可能なものである。技工所によってはフルジルコニア修復物を不況前のメタルボンドの半値ほどで提供しているという。審美性の追求、長引く不況、貴金属の異常高値、金属の生体安全性に対する懸念などの影響が上記数字に反映されているらしい。 このように、歯科でのジルコニアセラミックは新たな段階に入ろうとしているようであるが、これまでの成績について触れておきたい。ジルコニア製ブリッジの生存と不具合についてのシステマティックレビューがJ Prosthet Dentの2012年3月号に載っている。1999〜2011年の文献を検索し、その中から系統的レビューへの採択基準に適合する2006〜2010年の12文献を選び出し、それをまとめたものである。それら12文献での患者は16〜75人(合計411人)、ブリッジ装着数19〜99(開始時、合計441)と17〜91(終了時、合計387)、平均追跡期間25〜50月。その結果として、生存率(カッコ内は文献数)は74%(1)、88〜97%(6)、100%(5)であり、不具合発生は合計100件、そのうち、べニアの小さな欠け(chipping、チッピング)43件が最も多く、支台歯の根管治療22、弛みと再合着13、二次カリエス10などとなっており、フレームワーク破損は3件にとどまっている。なお、これまでの最長の追跡調査の報告としては平均10.7年のものがある(2011年のInt J Comput Dent)。患者21名に3〜5ユニットのジルコニアブリッジ26を装着したところ、10年でのブリッジ生存率67%、フレームワーク生存率92%、べニアのチッピング発生率32%であったという。 ブリッジにおけるオールセラミックとメタルボンドの生存と不具合についてまとめたシステマティックレビューがやや古いが2007年のClin Oral Impl Res Suppl 3にある。その概要を記すと次のようである。セラミックとメタルボンドの5年におけるデータはそれぞれ、生存率89と94%、フレームワーク破損6.5と1.6%、べニアのチッピング13.6と2.9%で有意差があったが、脱離、カリエス発生、歯髄失活、支台歯破折では差はなかった。セラミックでのフレーム破損はガラスセラミックとガラス浸透セラミックで多発し、ジルコニアセラミックではごくわずかであった。べニアのチッピングはジルコニアで多発、ガラスではかなり発生、ガラス浸透セラミックなしであった。臼歯部をオールセラミックにする場合には、フレームワークとしてジルコニアを使うべきであるが、メタルフレームにくらべ、べニアセラミックのチッピング発生率が高く、改善が必要としている。 2007年のレビューからメタルボンドの優位性は明らかであるが、その後のまとまった比較としては2010年のJADA 11月号に報告がある。ジルコニア5種、アルミナ2種、メタル3種のフレームワークにそれぞれのべニアセラミックを組み合わせた臼歯補綴物(ほとんどが3ユニットのブリッジ)を15か所の技工所で製作し、115名の歯科医が患者259名にジルコニアとメタルは各32〜33、アルミナは13と21の補綴物、合計293の補綴物を装着して3年追跡した結果である。フレームワークの破損は、アルミナで最も多く(11/13)、ジルコニア2(36、40月)、メタル0であり、それらの3年生存率はそれぞれ68、86、95%であった。べニアセラミックの破損として、表面の崩壊(crumbling)、チッピング、大きな破損、剥離、亀裂が認められ、クランブリングとチッピングが各191と189例と多発し、大きな破損27例、剥離と亀裂は各10例であり、全体の破損発生率はメタル28%、ジルコニア56%であった。メタルフレームでの3種のべニアおよびジルコニアフレームでのリューサイト結晶含有べニア(CZRプレス)のみが表面クランブリング、チッピング、亀裂の発生が有意に少なかった。結論的には、アルミナフレームワークの利用は適当ではなく、ジルコニアフレームはメタルフレームと同等であるが、ストレスがかかる場合にはメタルの方がよい。フレームのべニアのチッピングとクランブリングに関し、ジルコニアフレームではその発生が多いものと、メタルフレーム並みに少ないものがある。なお、これまでチッピングの問題は繰り返し指摘されてきたが、クランブリングについては言及されていない。しかし、この現象は咬合に影響を与え、対合歯の磨耗を加速させる可能性があり、チッピングより重大ではないかという指摘がなされている。 我が国での歯科用ジルコニアは、2005〜2007年に相次いで様々な商品が市販され、臨床応用されてきているが、米国のように利用が拡大されている状況にはないであろう。しかし、最近登場したフルジルコニアは今後利用が広がる可能性があると思われる。この光透過性の改良されたフルジルコニアを用いると、フレームやポーセレンべニアの必要はなく、ブロックからCAD/CAMで切削・成形、ステイン、グレーズするのみでフルクラウンやブリッジの補綴物をより低コストで製作できるとされている。このべニア不要のジルコニアでは、従来のジルコニアクラウンで頻発したチッピングを抑えられる可能性もある。しかし、これまで実験室や臨床でのデータはまだほとんど報告されておらず、今後の検証が待たれるところである。我が国では今のところ、ZENOSTAR、Cercon htが最近上市されたばかりであるが、今後周辺技術や商品がさらに進化、多様化することも考えられることから、フルジルコニアの利用は増加することが予想される。しかし、審美的あるいは強度的要求が強い場合にはメタルボンドの優位は当分続くであろうし、長年なじんできたメタルボンドとはかなり異なるものであることから、十分な知識に基づき適切に利用することが必要である。 現時点でオールセラミックブリッジを製作するとしたら、ジルコニアフレームとプレス法によりリューサイト結晶を含むべニアを利用するのがよさそうである。しかし、フルジルコニアも利点が多そうであり、今後我が国でどのような評価を受けるか、その結果に注目していたいと思う。一つ付け加えておきたいのは、このジルコニアでは、チッピングなどが生じても、ポーセレン系べニアにくらべ、コンポジットレジンでのリペアが多分容易であろうと思っていることである。 (2012年4月28日)
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