第63回:メタボリックシンドロームと歯周病

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標記のことに係わる論文が最近相次いで歯科の雑誌に発表されているので紹介する。まず、メタボリックシンドローム(メタボと略)と歯周病(Pと略)の関係を調べた論文である(Journal of Dental Research 2010年10号)。メタボは軽度の炎症状態であり、それは糖尿病および心血管病のリスク増加に関係しているのみならず、ほかの炎症性疾患でのリスクを増加させる可能性がある。そこで、メタボをPの発症因子として、ポケット深さなどと肥満、中性脂肪、HDLコレステロール、高血圧、血糖値などとの関係が調べられてきた。本報告は、喫煙したことがなく、糖尿病でない30〜64歳の2,050人についてメタボおよびその要因とPの関係をまとめたフィンランドの調査である。 本論文でのメタボの定義は、EGIR (European Group for the Study of Insulin Resistance、欧州インスリン抵抗性研究会)を用い、高インスリン血症で定義されるインスリン抵抗性を必須項目とし、さらに高血糖、高血圧、脂質代謝異常、肥満の中の2項目以上を含む場合である。Pは、歯周ポケット深さ4mm以上(中等度Pと略)および6mm以上(重度Pと略)の歯数により定義した。メタボとPの交絡要因として8項目もチェックした。メタボは、中等度Pで相対リスク1.19、重度Pで1.50という関係があり、メタボあるいはその中のいくつかの要因がPとやや関係のあることが示唆された。もう少し詳しい内容の概要は次のようである。性別、年齢、教育水準で補正すると、メタボは中等度Pおよび重度Pとそれぞれでの相対リスクが1.25と1.67で関係があった。さらに、プラークの存在、歯みがき頻度、歯科受診状況、飲酒で補正すると、重度Pのリスクは1.50とやや低下した。メタボ要因を補正すると、未補正にくらべて関係はやや低下した。メタボ要因を含めすべてを補正すると、重度Pでは肥満とインスリン抵抗性が相対リスク1.38で関係があったが、中等度Pではなかった。高血糖はPとはあまり関係がなかった。 なお、ここでは省略したが、本論文にはPだけではなく、う蝕についても検討されている。う蝕は高血糖、インスリン抵抗性と関係があるが、そのほかの要因との関係は弱いという。 これまでも肥満はPと関係しているとされてきており、上記論文もそれを追認したものとなっている。さらに、これまでの調査は被験者数や期間の点で不十分であるとして、多数の被験者で5年かけて肥満度とP発症の関係を調べた我が国からの報告がある(Journal of Dental Research 2011年2号)。被験者は、Pはなく、毎年定期検診を受けている名古屋地域の勤労者3,590人(男2,787、女803人;21〜69歳、平均45歳)。調査開始時のBMI(kg/m2)が、22以下、22〜24.9、25〜29.9、30以上の4グループに分け、5年後のPとの関係を調べた。プロービング深さ4mm以上をP、それ以下はPではないとした。 5年後のPは男37%、女28%であった。BMI22以下にくらべ、男ではBMI25〜30では1.32倍、女ではBMI25〜30で1.92倍、30以上で2.99倍有意にPに罹患しやすかった。BMI22以下とくらべたBMI22〜25、25〜30、30以上の各グループの年齢、喫煙、糖尿病歴で補正後のハザード比は、それぞれ、男で1.04、1.30、1.44、女で1.19、1.70、3.24となり、BMI依存的にPに罹患しやすい傾向となった。BMIは歯周ポケットが4mm以上になることと強く関係しており、それは男性よりも女性のほうが顕著であった。これまでにも、喫煙しない女性の肥満はPと関係が深いという報告があり、一致した結果となっているという。 次の論文も我が国からの調査報告である(Journal of Dental Research 2011年1号)。これまで、糖尿病はPのリスクを増加させ、また糖尿病患者の血糖コントロールを悪化させるとされているが、Pが糖尿病発症に関係するかはほとんど知られていない。そこで、毎年定期検診を受けている九州地域の約2万5千人の公務員の中から、2000年に歯科検診を受診している、条件を満たす30〜59歳(平均44歳)の非糖尿病者5,848人(男3,883、女1,965人)を選び、7年追跡調査した。糖尿病リスクに関係する可能性のある交絡要因として、年齢、性別、喫煙、BMI、中性脂肪、高血圧、HDLコレステロール、GTPを開始時にチェックした。Pは、ない(CPIスコア0〜2)、中等度P(CPI 3)、重度P(CPI 4)の3群に分け、空腹時血糖値125 mg/dL以上を糖尿病とした。重度Pは男9.9%、女5.4%であり、糖尿病は2〜7年のうちに287例発症したが、それは6年で14.7%、7年で84.3%であった。結果的には、歯周病と糖尿病発症リスクの関係は明確ではなかったが、その傾向は認められた。交絡要因の補正前では中等度と重度のPは糖尿病発症リスクの増加と有意に関係していた(ハザード比1.38および2.23)。喫煙と高BMIで補正すると、重度Pでも有意な関係はなくなった。また、要因全部で補正すると、重度Pでハザード比1.28となり、糖尿病発症リスクの増加傾向は見られたが、有意な関係はなかった。年齢、性別、喫煙、BMIで層化してみると、女性の場合、Pでない人にくらべ中等度・重度Pの人では有意にリスクが高まった。45歳以下の重度Pの人は、45歳以上の人よりリスクが高まる傾向にあった。多変量解析すると、年齢、高BMI、高中性脂肪、高血圧、低HDLC、高GTPは糖尿病発症リスクと関係していたが、Pとの関係は弱かった。 以上のことをまとめてみると、いずれにしても明確な関係は見出されていないとしても、肥満あるいはメタボは歯周病発症のリスク、また歯周病は糖尿病発症のリスクを高める傾向にあることはいえるであろう。歯周病は全身の健康状態、病気とかかわっていることから、歯科受診者が歯科医からそれらのことについて適切なアドバイスを受けることは非常に有益である。歯周病をとおして、歯科も医療全般に貢献でき、それは歯科の立場のさらなる強化につながるであろう。 (2011年4月27日) メタボについては、予防関連のコラムで工藤一彦先生が6回にわたり書かれている(https://www.dentwave.com/member/column/kudo/01/index.html)。ぜひそれを参照されることお勧めする。
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