第60回:支台築造をめぐって

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今回は2年前の第36回コラム「ファイバーポストについて」の続きのようなものであり、最近発表された3論文を中心に支台築造について述べる。まず、岡山大学からの論文(International Journal of Prosthodontics 2010, 23巻397-405)を紹介しよう。991人を対象に、372本の鋳造メタルコアおよび1,752本の既製のステンレスポスト併用のレジンコアを1988〜1991年に装着し(セメントはパナビアEX、メタルコアではスーパーボンドC&Bも使用)、15年追跡調査してコアの生存率を比較している。メタルコアでは6年以降急激に生存率が低下し、15年生存率はレジンコア79%に対し、メタルコア55%で有意に低く、メタルコアでは抜歯、コアの脱離が有意に多かった。失敗率は、メタルコア19.4%、レジンコア11.0%。そのおもな合併症は、それぞれのコアで、抜歯あるいは半切が14.0と7.2%、コア脱離が3.8と1.4%であり、抜歯あるいは半切の原因はそれぞれカリエスが4.8と1.2%、歯の破折が2.4と0.7%となっている。失敗のリスクが高いのは、男性、歯冠部残存象牙質の欠損、メタルコア、高齢者とされている。 次は、メタルコアおよび既製のステンレスあるいはチタンポスト併用のレジンコアをレジンセメントではなく従来型セメントで合着し、10年生存率を調べた論文である(Journal of Dentistry 2010, 38巻916-20)。85人を対象にして、1978〜1990年はリン酸亜鉛セメント、それ以降はグラスアイオノマーセメントを使用してメタルコア86本、レジンコア26本を装着している。平均10年(10±4.9年)の生存率は、メタルコア83%、レジンコア85%で有意差はない。112例中50例に合併症が認められたが、脱離23例が最も多く(そのうち19例は再合着後生存)、メタルコアはレジンコアに比べて2倍脱離しやすかった。歯根破折とカリエスはレジンコアのほうがやや多かった。根管治療失敗、ポストあるいは歯根破折、抜歯などで失敗と判定されたのは19例(17%)、そうなるまでの期間は平均8.5年であった。岡山大学のデータでの10年生存率は、メタルコア76%、レジンコア87%であり、レジンコアの生存率はほぼ同じであるが、メタルコアでは違いが出ている。 ファイバーポストを利用し接着材で合着したレジンコアの失敗についてまとめたレビューがある(Journal of Prosthodontics 2010, 19巻639–46)。2年以上追跡などの基準を満たした15論文のデータをすべてまとめると、3,046修復中の187例(6.1%)が失敗とされた。2論文を除き、いずれの場合もリン酸エッチング後にプライマー、ボンディング材を使用、レジンセメントで合着、クラウンはほとんどが焼付陶材である。ポストの材質と失敗率(%)(カッコ内は論文数)は次のようになっている。ガラス7.1(6)、カーボン5.3(6)、石英6.7(3)、ポリエチレン7.5(1)、ジルコニア0(1)。全体で最も多い失敗原因は、ポストの脱離と根尖病変でそれらはともに69例(6.1%)であり、失敗例中の37%を占めた。歯根破折はガラスでの1論文を除くと3例、ポスト破折はポリエチレンでの4例を除くと2例であり、いずれも極めて少ない。なお、ガラスポストに関しては補足が必要である。ここで取り上げた6論文中の1論文の失敗が突出して多く、これを除くと失敗率は4.8%となる。その論文では108例中32例が失敗、その内訳はポスト/コア界面の破折12、根尖病変9、二次カリエス6、ポスト脱離3、歯根破折2となっており、コア破折、二次カリエス、歯根破折はほかの5論文では認められていない。 ついでながら、失敗率の高かったもとの論文(British Dental Journal 2008, 205巻E23)が気になって調べてみると興味深いことも判明した。論文では合着材としてCalibra(Dentsply)とPanavia F2(クラレ)を用いているが、失敗に関して両者間にかなりの差が認められ、合着材を適切に選択することの重要性が示唆されている。失敗は、Calibra64例中23例(36%)でPanavia44例中9例(20%)にくらべて多い。ポスト/コア界面破折や二次カリエスではあまり差はないが、ポスト脱離、歯根破折はPanaviaでは認められないのに対し、Calibraではそれらが認められ、さらに根尖病変では前者での2%にくらべ12%と多発している。失敗率がほかの論文とくらべ高いことは著者らも認めているが、それは部分欠損歯列による不適正な咬合などおもに患者のさまざまな特殊要因にあると見ている。レビューでの15論文中二次カリエスを認めたのはこの論文の6例だけであるが、そのうち4例は重症のドライマウスが関連しているのではと考察している。これに関しては、焼付陶材クラウンの合着にカルボキシレートセメントを使用しているのは理解できないという思いが筆者にはある。 15論文をまとめた中で失敗例ゼロはジルコニアポストのみである。それは2004年の報告であるが、それによれば、52人に79本のジルコニア/レジンコアをAllBond2プライマーとパナビア21で合着したところ、14〜118月(平均58月)で失敗例は皆無であったという。また、別の2006年の報告でも22人、30本のジルコニアポスト/セラミック圧着コアをグラスアイオノマーで合着したところ、4〜44月(平均29月)で修復物の脱離、破折例はなかったという。このようにジルコニアポストでは今のところ失敗例は報告されていない。しかし、このポストでは、破壊すると補修困難、再治療時の除去困難、硬すぎて歯の破折を起こしやすいなどの問題点も指摘されている。これはファイバーポストと大きく異なる点である。(なお、Dental Materials Journal 2010, 29巻233-45にジルコニアポストに関して1995〜2009年の79論文をまとめたレビューが掲載されており、ジルコニアポストについて知るには役に立つ。) 2002年までの50年間についてポスト・コアの合併症をまとめたレビューデータがある(Journal of Prosthetic Dentistry 2003, 90巻31-41)。それには、ポストの脱離2,596例中135(5%)、歯根破折3,043例中95(3%)、カリエス1,047例中16 (2%)、歯周病283例中6 (2%)という数字が記されている(根尖病変については取り上げていない)。これと今回の15論文をまとめた数字を比較すると、従来のおもにメタルを利用した支台築造にくらべ、ファイバーポストレジンコアは、ポストの脱離は同程度であるが、歯根破折、カリエスの問題はほとんどないということができよう。 以上のことから、はじめに紹介した二つの長期追跡結果も含め考えると、支台築造はメタルからファイバーポストを利用したものに移行せざるを得ないであろう。ポストの脱離問題は依然として課題として残っており、今後の一層の研究・開発が望まれるが、当面は合着材の適切な選択が重要となろう。 (2011年1月30日)
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